「アプリケーション可視化で効果的なWAN高速化を可能に」、リバーベッド

Interop Tokyo 2009でアプリーション可視化製品やHP製スイッチとの統合製品を展示中

RSPによって、サードパーティを含めたさまざまな機能がSteelheadアプライアンス上に搭載可能になる

 WAN高速化アプライアンスを提供するリバーベッドテクノロジー株式会社は、6月10日から12日まで、幕張メッセで開催されている「Interop Tokyo 2009」において、新しいコンセプトの製品を展示している。今回は、このイベントにあわせて来日した米Riverbed Technologies(以下、Riverbed) APAC&Japan マーケティング担当シニアディレクターのポール・セラーノ氏らに、これらの新製品を含めた同社の戦略について話を聞いた。

 Riverbedの中核製品は、独自OS「RiOS」を搭載したWAN高速化アプライアンス「Steelhead」だが、近年では、単にWAN高速化機能を提供するのみならず、さらなる付加価値をユーザーへ提供しようとしている。その1つである「RiOS Service Platform(RSP)」は、Steelheadアプライアンスへ高速化以外の機能を追加するもので、「当社のアプライアンスに機能を統合することにより、支店に設置しなくてはいけないサーバーの数を減らせる」(セラーノ氏)点がユーザーのメリットになる。

 RSPはVMwareのハイパーバイザーの上で、仮想化された複数の機能を動かす仕組みを採用しており、2008年2月に国内で発表された時点では、プリンタサーバーの機能を統合。その後、2008年7月にはInfobloxのDNS/DHCPサーバー機能が搭載可能になったほか、米国では先ごろ、Check Pointのファイアウォール、WebsenseのURLフィルタリングというセキュリティ機能の統合が発表されている。さらに2009年5月には、マイクロソフトからWindows Server 2008のOEM提供を受け、アプライアンス上で最新WindowsサーバーOSを動かすことまでが可能になった。

 セラーノ氏はRSPの必要性について、「ユーザーとしてはリモートオフィスで、ありとあらゆるものを統合したいというニーズがあり、そうした中で、DNS/DHCPをはじめセキュリティ製品やWindows Serverなどの統合を実現してきた。このような製品をすべて載せることができれば、1拠点だけで数台のサーバーを減らせる」と話す。また、汎用のWindowsサーバーOSが正式にサポートされたことから、性能が許す限り、どんなWindowsアプリケーションでもこの上で動作させられるようになり、ユーザーにとっての選択の幅が拡大。さらに、RSPでは機能を動作させる順番を自由に設定できることから、WAN高速化の処理を行う前にファイアウォールの処理を実行する、といった柔軟な運用が可能になったのもメリットという。Riverbedでは今後もアライアンスを拡大し、RSPに関する取り組みを進める意向だ。

 また逆に、Stealheadの機能を自社製品に統合しようとしているベンダーもある。米HPでは、自社の「ProCurve」スイッチにRiverbedのWAN高速化モジュールを搭載できるようにしたのだ。この背景についてセラーノ氏は「当社の製品は、平均するとおおよそ7カ月で投資を回収できる高いROIを持っており、HPもこうしたニーズを日々感じている。そこで当社とHPでは協業し、お互い数百万ドルを投資してお客さまによりメリットを提供できるようにした」と述べる。

 具体的には、RiverbedのWAN高速化機能を供えたモジュールを、シャーシ型のProCurveスイッチに搭載することで、WAN高速化機能の提供を可能にする仕組み。ユーザーに対してはチャネルパートナーがインテグレートして提供することになるというが、「統合されたソリューションとして、(RiverbedとHP)両社の技術が1つのボックスで提供される。新版がリリースされても、両社がきちんとテストをしてから提供するため、ユーザーが心配することはない」(セラーノ氏)とのことで、ユーザーは単体のStealheadアプライアンスと同様に使用できる。なお国内では、「チャネルの都合により、当初は日本HPからの直接提供のみになる予定」(リバーベッド日本法人のマーケティングマネージャー、伊藤信氏)とのこと。時期としては、2009年第4四半期からの提供を予定している。

HPとの統合ソリューションの概要Interop Tokyo 2009で参考展示されている統合ソリューション

 加えてRiverbedでは、アプリケーション可視化の事業にも進出。Interop Tokyo 2009でも参考展示されている、「Riverbed Cascade」アプライアンスの提供を行っている。これは、同社が1月に買収した米Mazu Networksの技術を用いたものだが、最大の強みは「モニタリングを行う各拠点にボックスを設置するのではなく、たった1カ所に設置すれば、ネットワーク全体の状況を見られるようになる」(セラーノ氏)点。Cascadeは、自社のSteelheadアプライアンスはもちろん、sFlow、NetFlow、J-Flowなどをサポートするさまざまな機器から情報を収集できることから、拠点ごとに設置しなくとも、ネットワーク全体のアプリケーションの状況を可視化できる。

 セラーノ氏は、こうした特徴を持つCascadeの導入効果について、「不況の中では、企業はどこのネットワークを高速化するかを正確に認識する必要があるが、Cascadeを導入すれば、アプリケーションの可視化によってパフォーマンスも見えるようになるので、そうした判断が可能になるだろう。さらに競合製品と異なり、1カ所に設置すればネットワーク全体を賄えるため、数百万ドルの節約が可能だ」とアピール。さらに、「企業の中には、ただ売り上げを拡大するためだけに買収を行うところもあるが、当社ではコアビジネスにちゃんと生かせるかどうかを考えて買収を行っている。今回の買収によって、他社では実現できないソリューションを提供できるようになった」と述べた。

 Cascadeは、国内では7月から展開が開始される予定で、市場想定価格は800万円からになる見込み。伊藤氏によれば、製品を販売するのみならず、「大手SIerなどとパートナーシップを組み、(アプリケーション可視化)サービスとしての提供も検討している」とのことで、より多くのユーザーが利用できる体勢を整える計画である。

Riverbed Cascadeを利用すると、ネットワークのアプリケーション利用状況を可視化できる自社のみならず、さまざまな他社製品からも情報収集が可能Interop Tokyo 2009で参考展示されているRiverbed Cascade





(石井 一志)

2009/6/11 18:18