テレプレゼンスで語る、米Ciscoのクラウドコンピューティング戦略


 シスコシステムズ合同会社は、米サンフランシスコで開催されているユーザーカンファレンス「Cisco Live」にあわせて、アジア太平洋地域のプレス向けラウンドテープルを開催。米Cisco Systems最高技術責任者(CTO)のパドマスリー・ウォリア氏、およびソフトウェアグループ 上級副社長のダグ・デナーライン氏より、コラボレーションやクラウドに関する同社の取り組みが紹介された。なお、今回のプレスセッションは同社のテレプレゼンスシステム「Cisco TelePresence」を用いて行われた。

米Cisco Systems最高技術責任者(CTO)のパドマスリー・ウォリア氏(右)と、米Cisco Systemsソフトウェアグループ 上級副社長のダグ・デナーライン氏(左)

 ウォリア氏は、メインフレームからクライアントサーバーモデル、Webモデルというコンピューティングモデルの進化を紹介し、「現在、仮想化という新たなモデルが業界で起きている」と説明する。「仮想化は、アプリケーションとサービスから、インフラのサポートまで、非常に柔軟性がある。この仮想化により、さまざまなリソースを利用でき、オンデマンドを実現できる」とした。

 この仮想化により、クラウドコンピューティングが台頭してきたことも大きなトピックであるとウォリア氏は強調する。「われわれは、ITリソースやサービスが物理的なインフラから移行して、オンデマンドで必要な規模で利用できるのをクラウドコンピューティングと定義している。このクラウドコンピューティングには、SaaSやPaaS、IaaS(Infrastructure as a Service)、そしてそれらの下にあるITインフラで構成されている。Ciscoは従来から提供しているITインフラのほか、WebExによりSaaSとPaaSを提供している」と、IaaS以外の3つの分野で取り組んでいると紹介。

 具体的には、「Cisco WebEx Collaboration Cloud」と「Cisco Security Cloud Services」を通して、ネットワークベースのコミュニケーションとコラボレーション、セキュリティ、メディアデリバリに関するノウハウを活用することで、SaaSとPaaSに対応。また、企業やクラウドサービスプロバイダー、コアネットワークプロバイダーに対して、ワールドクラスのクラウドインフラストラクチャとサービス配信プラットフォームを提供するとしている。

 「われわれは、テクノロジープロバイダーとして、物理的であったデータセンターを仮想化するというように、企業の既存投資を活用しながら(仮想化・クラウドコンピューティングへの)移行を支援する」と、クラウドコンピューティングへの取り組みを本格化すると述べた。

 同社がSaaSとして提供しているのがWebEx。2007年の買収後、2008年にはIMやドキュメント管理、カレンダー、Web会議などの機能を備えたアプリケーションプラットフォーム「WebEx Connect」をリリースしている。デナーライン氏は、「WebEx Connectには、(2008年9月に買収した)Jabberや(2008年8月に買収した)PostPathの機能を統合することで、エクスペリエンスを改善している。また、必要な機能をシンプルな価格で提供するなど、理解しやすく・わかりやすいといった点も配慮している」と紹介。

 「われわれはクラウドコンピューティングのバリューチェーンを戦略的に見てきており、買収したテクノロジーを提供することもひとつのビジネス」(デナーライン氏)と、同社が買収した企業の製品を統合することで、新しいエクスペリエンスを実現し続けていると述べた。

 WebExをクラウドで提供するメリットについては、「Web会議をオンプレミスで実現する場合、支店間でのネットワークの最適化といったことも含めて、初期投資が非常にかかってしまう。これに対して、SaaSであれば初期投資の不安を持たなくていい。特にコラボレーションにおいてビデオは重要な要素。複数拠点からWeb会議を行う場合、クラウドモデルは非常に有効」(デナーライン氏)と、クラウドモデルの利点を強調。「柔軟性の高さもクラウドモデルのメリット。また、リソースを仮想化することによるコストメリットもある」(ウォリア氏)と、柔軟な運用に対応できる点も利点として挙げた。

 パートナーとの関係について、デナーライン氏は「チャネルパートナーは、Go-to-Marketの実現のために非常に重要な存在。WebEx Collaboration Cloudではビデオとデータのエクスペリエンスを提供しているが、グローバルでのバックアップが不可欠。そのために、APIをオープンにするなど、すぐに問題解決できるようにしている」と紹介。ビジネスプロセスを変革するためにサービスを売るためには、チャネルパートナーは重要な役割を果たすとしている。






(福浦 一広)

2009/7/1 09:00