日本IBM、ITリソースを従量課金で提供する企業向けPaaS「IBM MCCS」


IBM MCCSの提供イメージ
取締役専務執行役員 GTS事業担当の下野雅承氏

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は7月30日、コンピューティングリソースを従量課金で提供するPaaS(Platform as a Service)サービス「IBM マネージド・クラウド・コンピューティング・サービス」(以下、IBM MCCS)を発表した。仮想化技術を用いているため、柔軟なITリソースの提供を可能にしているほか、コスト面でも最適化されている点が特徴という。提供開始は10月中旬を予定する。

 IBM MCCSは、ITリソースをネットワーク経由で提供するPaaSサービス。日本IBMのデータセンター内に、x86サーバー「IBM System x」やストレージ「IBM System Storage」などで仮想化環境を構築し、その環境から提供されるITリソースを、顧客がネットワーク経由で利用できるようにする。取締役専務執行役員 GTS事業担当の下野雅承氏は、「当社のセンター内にクラウド環境を作って、あたかも専用環境のようにお使いいただけるサービス。必要な量を必要な時だけ、柔軟に使っていただくサービスだ」と紹介した。

 サービス内容には、ネットワークサービスも含まれているため、データセンターまでの通信料は不要。運用については、ゲストOS以下の監視のみを提供する「レベル1」、ゲストOS以下の監視と運用、障害一時対応を提供する「レベル2」、レベル2に加えてSEサポートまでを含めた「レベル3」の3種類のメニューを用意し、顧客が選択できるようにした。下野氏は、「ITILに準拠した運用プロセスや、当社が持つ運用効率化のツールなどを用いて、高い品質のサービスを提供。スキル別に編成された専門集団の組み合わせでお客さまの環境を維持する」と述べ、運用についても高いレベルのサービスを提供できるとアピールした。

 課金は、CPUの処理量に応じた従量制で行われ、CPU使用量の基準としては、業界標準の評価指標「SPECint_rate2006」を採用した。顧客はまず、業務に応じて基本使用量を設定。ピーク需要の発生などで必要なITリソースが増加した場合は、設定した基本使用量の2倍までは自動的にITリソースを割り振れ、その分については使ったCPU処理量に応じて課金される仕組み。顧客の希望によっては、基本使用量以上使えないように制限することも可能という。また、基本使用量は月次で設定・請求するが、月の途中でも基本使用量の増減が可能で、変更要求のあった翌日から、即座に新しい基本使用量が反映される。

 価格の例としては、部門サーバーやファイル/プリントサーバーなど、x86サーバーの一般的な利用に対応可能なSPECint_rate2006=5.0のCPU使用量、Windows、1GBメモリ、20GB HDD、レベル1の運用、といったパターンの場合、月額5万円(税別)から。同様の構成で運用をレベル2に変更すると月額6万円(同)から、レベル3にすると月額14万5000円(同)から。また月額費用1カ月分の初期費用、移行費用が別途必要になる。最小契約期間は1カ月。

 「当社のアウトソーシングというと月に数百万円以上かかるようなものが多いが、このサービスでは、部分的なアウトソーシングにも利用できるようにしようとしている。繁忙期など季節変動のある企業や、ITリソースの最適化やコスト削減を目指す企業、開発・テスト利用の多い企業、サーバー台数の多い企業などでの利用に向くだろう」(下野氏)。

 なお、日本IBMではこれまでも、インターネットなどを経由して提供するパブリッククラウド、企業社内に環境を設置するプライベートクラウド(エンタープライズクラウド)、クラウド環境を構築するためのアプライアンス製品、といった各分野において、さまざまなサービス、製品を発表してきた。今回のIBM MCCSはこのうち、パブリッククラウドのラインアップを強化する位置付けになる。




(石井 一志)

2009/7/30 13:22