Windows 7は企業にとっても“わくわく感”が得られるOS

Windows XPからアップグレードするメリットを聞く

 Windows 7のボリュームライセンスでの提供が9月1日より始まった。すでに評価を始めている企業も多いだろう。前評判が非常にいいものの、Windows XPからアップグレードするだけの価値は本当にあるのだろうか?

 今回、その疑問に答えていただいたのが、米Microsoft、Windowsコマーシャルプロダクトマーケティング担当 ゼネラルマネージャーのリチャード・レイノルズ氏と米Microsoft、Windowsサーバー&ソリューションマーケティング担当 ゼネラルマネージャーの佐分利ユージン裕氏。Windows 7とWindows Server 2008 R2を組み合わせることで得られるメリットなどを伺った。

Windowsコマーシャルプロダクトマーケティング担当 ゼネラルマネージャーのリチャード・レイノルズ氏(右)とWindowsサーバー&ソリューションマーケティング担当 ゼネラルマネージャーの佐分利ユージン裕氏(左)


―Windows 7のボリュームライセンスでの提供が始まりました。企業ユーザーにとってWindows 7を導入するメリットはどのようなものなのでしょうか?

レイノルズ氏
 まず、TCOの面でWindows 7を見てみましょう。

 今回、イギリスの企業、アメリカの自治体、オランダの企業で調査しました。イギリスとアメリカの企業・自治体はWindows XPからのアップグレードです。調査方法としては、導入前と導入後のIT関連の管理コストを比較しました。

 平均すると、年間89~160ドルの管理コスト削減につながるという結果が出ました。Windows XPを使っていた企業は18%の管理コストを削減できました。また、Windows XPを使っていた自治体の場合、管理コストのほか消費電力でも54ドル削減となっています。また、導入時間に関しても60%削減できています。

佐分利氏
 クライアントOSとサーバーOSを同時に開発したのは、Windows 2000以来のことです。Windows Server 2008 R2と組み合わせることで、Windows 7のコスト効果はさらにメリットが出ます。

 台湾の企業の例ですが、コンサルタントを多く抱えたこの企業の場合、外出先からVPNを利用して社内ネットワークにアクセスしていました。これを、Windows 7とWindows Server 2008 R2で提供しているDirectAccessを利用することで、VPN専用の回線が不要になり、その分の費用削減が可能です。

 また、10の支店を抱えているこの企業の場合、BranchCacheを利用することで、転送速度が40~50%向上しています。この影響もあり、営業の生産性が5%向上したという結果も出ています。

 管理者にとっては、リモートアクセスの管理にかける時間を30%削減できており、これらの機能は管理者にとってもメリットがあります。早期導入された企業では、すでにこういった効果を実感しています。

レイノルズ氏
 Windows 7そのものがユーザーのニーズを満たしたOSである点も、多くの企業で評価・導入が進められる理由のひとつになっています。

 Forresterが行った調査によると、IT部門の責任者は、コストコントロール、セキュリティ、エンドユーザーの生産性、を最重要課題として挙げています。これらはすべてWindows 7の開発で投資した分野とまったく同じです。

 また、モバイルでの利用が進んでいるというのもWindows 7開発で重視した点です。Forresterの調査をみると、62%は本社以外の場所で仕事をしています。そのうち、20%は社内ネットワークのアクセスに満足していません。こうした課題をWindows 7では解消しています。


―コスト効果があるといわれても、Windows XPで十分だとおもっている企業はまだまだ多いのではないでしょうか?

レイノルズ氏
 Windows 7は、エンドユーザーに対してわくわく感を与えています。これはWindows 7を利用する大きな動機になるとおもいます。


―わくわく感ですか? それはどのようなものですか?

Windowsコマーシャルプロダクトマーケティング担当 ゼネラルマネージャーのリチャード・レイノルズ氏

レイノルズ氏
 Windows XPは10年前のOSです。モバイルでの利用やセキュリティなど、当時とはまったく異なる環境で使われているのが現状です。

 Windows Vistaでは、現在の使われ方を反映しました。しかし、セキュリティモデルやグラフィックス、ネットワークスタックまで、大きくアーキテクチャを変更しました。その結果、Windows Vistaに対して、ユーザーはわくわく感が得られていなかったのです。

中川哲氏(マイクロソフト株式会社 コマーシャルWindows本部本部長)
 少し補足すると、わくわく感はコアなユーザーから広まるものです。Windows Vistaのときは、アップグレード可能なPCは7%程度でした。Windows Vistaを利用するために、新たにPCを購入しなければならなかったのです。Windows 7では50%以上のPCでアップグレードインストールできます。この違いは非常に大きく、コアなユーザーに使っていただく機会が増えたのが、Windows 7を高く評価していただいている要因につながっています。

レイノルズ氏
 このわくわく感は企業のIT部門にも大きく影響しています。実際、エンドユーザーが、お願いだからWindows 7が使えるようにしてくれとリクエストしている例もあるそうです。


―日本の企業の場合、SA(ソフトウェアアシュアランス)を契約している企業が少ないことが、Windows XPから卒業できない要因のひとつではないでしょうか?

Windowsサーバー&ソリューションマーケティング担当 ゼネラルマネージャーの佐分利ユージン裕氏

佐分利氏
 確かに、アメリカと比べるとSA契約もそうですが、EA(Enterprise Agreement:ボリュームライセンス提供形態のひとつ)を契約している企業も少ないのが現状です。アメリカでは半数以上がSAを契約していますから。

 日本の場合、部門単位での導入が多いというのも少ない原因ですね。しかし、コンプライアンスやガバナンスを考えると、企業単位でライセンス管理する段階に入っているのではないでしょうか。最近では、MDOP(Microsoft Desktop Optimization Pack)が利用できるといったベネフィットを実感していただき、SA契約も伸びてはいます。

レイノルズ氏
 SA契約に付随して提供されるMDOPも、10月にMDOP 2009 R2になります。このMDOPはMicrosoftにとって、もっとも成長している製品で、この2年間で2000万ライセンスを販売しました。

 MDOPには、アプリケーション仮想化を実現するApp-Vや、デスクトップ仮想化を実現するMED-Vなど6つのツールが含まれたものです。Windows 7のアーリーアダプタも、MDOPをパイロット導入して評価していただいています。使っていただいた企業からは、高い評価をいただいています。


―Windows 7導入を検討している企業に対して、なにかメッセージがありますか?

レイノルズ氏
 Windows 7はお客さまの声を注意深く聞いて開発したOSです。IT部門だけでなく、エンドユーザーのニーズも組み込んでいるのが大きな特長です。コスト効果も得られます。

佐分利氏
 簡単な表現ですが、これまでの製品で一番ユーザーの声を反映しているのがWindows 7です。非常にいい製品に仕上がっていますので、ぜひ導入を検討してください。


―ありがとうございました。





(福浦 一広)

2009/9/18 00:00