ワンビ、トラストデリートでPCメーカーとの連動強化へ
ワンビ株式会社は、盗難および紛失したPCのデータを遠隔消去する「トラストデリート」の新製品として、エンタープライズ版のバージョン2.5を5月31日に発売するほか、2010年秋をめどに、「ファイルトレーサビリティ機能(仮称)」を搭載することを明らかにした。同機能は、消去対象のファイルを、消去前に、第三者によってアクセスされたかどうかを確認し、情報を入手するための機能だ。また、グローバル展開の開始や、PCメーカーとの連動も強化していく姿勢を示した。
トラストデリートは、盗難されたPCや、紛失したPC内のデータを、インターネットを通じて遠隔消去するセキュリティソフト。2006年6月にパッケージ版を発売以来、ASPやクラウド製品などを含めて、これまでに累計20万ライセンスの実績を持つ。
一定時間内にインターネットへ接続しなかった場合に、消去対象データを閲覧できないようにする「不可視タイマー機能」の搭載により、ネットから消去指示が受け取れない状況でも、消去対象データの存在に気付かせないようにできる機能のほか、1週間といった任意に設定した一定期間内にPCがインターネットに接続されない場合、指定したデータを自動的に消去する、といったことも可能だ。
さらに消去したファイルの名前や、消去完了日時などがわかるように、詳細情報を消去確認証明書として確認することができる機能も搭載している。
そのほか、Windows 7に搭載されている「Bit Locker」で暗号化したHDDの暗号キーについても、遠隔からの消去が可能で、暗号キーを消去したPCでは、次回起動時に設定していたパスワードを入力しても、起動できなくなる。また、Windows Desktop Searchと連携して、ファイル名やファイルの中に含まれるキーワードなどの条件に一致するファイルを、インデックスから検索。「過去10日間以内に作成したファイル」というような条件で消去することが可能な、「インテリジェント消去」機能も搭載している。
ワンビ 加藤貴社長 |
「監査法人、保険会社などを中心に1社1000台規模での導入実績もある。顧客データを格納したモバイルPCを、外に持ち出して利用する企業においての導入が促進されている」(ワンビ 加藤貴社長)という。
5月31日に発売するエンタープライズ版のバージョン2.5では、インテルの「vProテクノロジー」に対応。アラームクロック機能と連動することで、盗難、紛失したPCの電源が入っていない場合でも、あらかじめ設定した時間に自動的に電源を投入。データを遠隔消去する「ウェイクアップ消去」機能を実現している。
一方、2010年秋の完成に向けて開発中の「ファイルトレーサビリティ機能(仮称)」は、遠隔消去するまでの間に、第三者がどのファイルにアクセスしたかを検知。データ消去後に利用者に通知する証跡管理機能で、「どのファイルにアクセスされたかがわかることで、その後、どんな対策を打ったらいいのかの判断材料のひとつになる」(ワンビ 板井清司取締役)という。Windows Desktop Searchの機能を活用することで、インデックスから検索し、証跡をたどる仕組みだ。
今後、総務省では、情報セキュリティガイドラインの改定にあたり、データの遠隔消去の際に、データアクセスの証跡についても掌握することを盛り込む公算が大きい。今回の新機能はこうした動きにも対応したものになる。
現在、同社では、ユーザーが所有するサーバーで利用するオンプレミス型の「トラストデリート エンタープライズ」のほか、ワンビがユーザー個別のサーバー環境を提供するパブリッククラウド型の「トラストデリート フルクラウド」、クラウドサーバーの共有利用で提供する「トラストデリート クラウド」を用意。ユーザーの利用環境にあわせた製品を選択できるようにしている。ただし、新機能はエンタープライズ版でのみ利用できる。
一方、同社では、中期戦略として、グローバル展開を強化する姿勢を示した。
海外企業とのパートナーシップを推進するほか、2009年12月に、いち早くWindows Azureへの対応を図った強みを生かして、海外における管理サーバーロケーションにも柔軟性を持たせ、海外展開の基盤とする。
ワンビ 板井清司取締役 |
加藤社長は、「日本発のセキュリティソフトとして、世界への進出を果たしたい。それに向けて、まずは日本での地盤を作ることが大切。また、セキュリティ分野においては、アンチウイルス、暗号化、ログ管理に続き、遠隔消去の重要性を広く認知させていく必要がある」と語る。また、板井取締役は、「遠隔消去の分野に参入している企業はまだ少ない。他社にない技術的な優位性を生かし、遠隔消去といえば『ワンビ』というイメージを早期に定着させたい」とする。
同社では、今後、国内外のPCメーカーへのプリインストールにも乗り出す考えで、「2011年度までに2社以上のPCメーカーに、トラストデリートをプリインストールしたい。PCメーカー向けには45日間の無料利用といった仕様も用意する。こうした取り組みを通じて、企業ユーザーを中心に遠隔消去の認知度を高めるとともに、その必要性を訴求したい」(加藤社長)としている。
2010/4/22 06:00