日立製「モジュール型データセンタ」に新技術、冷媒循環の動力を不要に

空調電力コストを最大67%削減

モジュール型データセンタの特徴

 株式会社日立製作所(以下、日立)は5月7日、「モジュール型データセンタ」に冷媒循環の電力を不要とする「冷媒自然循環システム」を追加すると発表した。併せて、モジュール内の温度や湿度などを管理する「監視制御盤」に、空調機を自動制御できる「機能拡張モデル」を追加する。いずれも、5月10日より販売を、7月9日より出荷を始める。

 モジュール型データセンタは、日立独自の空調環境最適化技術を活用したデータセンター構築ソリューション。3.6~10m×6.3mのモジュール内に、サーバーラック、ラック型空調機、ラック型分電盤を配置。周囲を仕切ることで、冷却効率を上げているのが特徴で、モジュール単位のオンデマンド拡張を実現するとともに、「省電力」「省スペース」「短納期」を実現する。


冷媒循環の動力を不要にする新技術

エンタープライズサーバ事業部の澤本英雄氏

 モジュール型データセンタの冷却方式としては、従来、空冷式のラック型空調機が用意されていた。今回は、これに冷媒と水を使った新冷却方式を追加するものとなる。具体的には、IT機器の排熱を冷媒で冷やし、熱を吸収した冷媒を水で冷やす――これを繰り返してIT機器を冷却するといった具合だ。ラック型空調機、リアドア型冷却装置、水/冷媒の熱交換器、チラーなどで構成され、日立プラントテクノロジーと共同開発した「冷媒自然循環技術」を活用するのが特徴となる。

 冷媒自然循環システムは、熱を吸収した冷媒が気化して「上昇する力」と、熱交換器で冷却された冷媒が液化して「下降する力」を利用することで、冷媒循環の動力(ポンプなど)を不要にするもの。

 外気温が10℃以下の場合は、気化した冷媒を水の代わりに外気で冷却する「フリークーリングシステム」にも対応。本来その役目を果たすチラーの稼動も不要となり、「一般的な空調に比べ、電力コストを最大67%削減する」(エンタープライズサーバ事業部の澤本英雄氏)。

 また、従来のラック型空冷機と比べ、幅を半分にした空調機と、サーバーラックの背面に取り付けるリアドア型冷却装置でさらなる省スペース化を実現。もともと場所を取らないモジュール型データセンタだが、「さらにコンパクトになり、一般的なデータセンター設備と比べて、設置面積を最大80%削減する」(同氏)という。


今回の追加要素。従来の空冷式に加え、冷媒を使った冷却方式を採用。監視制御盤では、空調機の自動制御に対応した冷媒自然循環システムの概要。設備に高低差を付けることで、冷媒を重力によって自然循環させるラック型空冷機の幅を半分にすることで、一般的なデータセンター設備と比べて床面積を最大80%削減



空調機の動作を自動制御する新技術

監視制御盤を強化。モジュール内の「見える化」から「制御・自動化」へ

 一方、監視制御盤に追加された機能拡張モデルでは、モジュール内の温度・湿度の設定値に応じて、空調機の切り替えや温度調整を自動的に行う。従来は手動で調整する必要があったため、自動化することで、設備管理者の負担を軽減できる。

 また、稼働中の空調機に障害が発生した場合に、予備の空調機へ自動切り替えることも可能。故障発生時以外にも、稼動機と予備機の定期ローテーションに対応するため、長期運用による故障リスクを最小限に抑えられる。


今後のロードマップ

今後のロードマップ

 今後の予定については、「消費電力などに意識の高い欧州から展開し、中国、その他の地域へ広げていく」(澤本氏)意向で、データセンター構築関連トータルソリューションとして事業拡大していく。併せて技術革新も進め、今回の冷媒自然循環システム以外にも空調方式のラインアップを順次拡充し、監視制御盤でもIT機器や設備と連携を図っていく。

 海外への展開に向けては、海外のパートナーシップを拡大する予定。すでにTelehouse International Corporation of EuropeやECO2DCイニシアティブとのパートナー契約を締結しているが、「海外への展開で特に重要なのがパートナーシップ」(エンタープライズサーバ事業部の山本章雄氏)との考えで、グローバル展開を加速していく方針という。

 なお、モジュール型データセンタには製品だけでなく、「空調環境コンサルティングサービス」「モジュール設計サービス」「構築サービス」「保守サービス」など、さまざまな関連サービスが用意されている。いずれも価格は個別見積もりだが、冷媒自然循環システム、分電盤/動力盤、ラック、パーティション、付帯工事、監視制御盤(標準モデル)、ならびに関連サービスを含めた場合、およそ3500万円から。

 日立では、2010年~2012年の3年間で150億円の販売をめざす。




(川島 弘之)

2010/5/7 15:27