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「日本のモバイルは世界では特殊、それでも海外進出を成功させる」シリウステクノロジーズ宮澤社長
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今回のゲストはモバイル広告業界で次から次へと新たな試みを実行してきた、シリウステクノロジーズの宮澤弦社長です。宮澤さんは弱冠26歳ながら、大学卒業と同時に起業したピュアなアントレプレナーです。モバイル広告プラットフォームの提供者として、国内だけではなく海外への展開を積極的に押し進める宮澤さんのもくろみはなにか、詳しく伺いました。
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宮澤 弦
株式会社シリウステクノロジーズ 代表取締役
東京大学卒業後、現職。学生時代より起業し、卒業直後に当社設立。当社においては、会社理念実現の為のマネジメントに全力を尽くす。執筆書籍には、SNSビジネスガイド(インプレス)、Mobile2.0(インプレス)がある。1982年生まれ。
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■ モバイル広告プラットフォーム事業にフォーカス
小川氏
2年ほど前に東大でのパネルディスカッションでご一緒して以来ですよね。まず、シリウステクノロジーズとはどういうベンチャーなのか、簡単にご説明していただけますか?
宮澤氏
シリウステクノロジーズは、一言でいうと、モバイルの広告プラットフォームを作っている会社ですね。商品は二つあります。一つ目は「AdLocal(アドローカル)」というものです。AdLocalは、従来の「検索キーワード」により配信していた広告とは違って、住所からユーザーの興味のある場所に応じたローカル広告を出せます。そしてその広告を出せる権利をオークション形式のクリック課金モデルで販売しています。食べログ、モバゲーなどのモバイル媒体を中心に提供しています。
もう一つが「AdInFlash(アドインフラッシュ)」です。AdInFlashは、モバイルフラッシュコンテンツ向けのアドネットワークサービスです。フラッシュファイル内に広告を入れ込むことでコンテンツの収益化ができます。最近モバイルではフラッシュコンテンツが増えていますけど、マネタイズする方法がないんです。そのためのアドプラットフォームです。
小川氏
なるほど。
宮澤氏
アメリカにも10月にオフィスを作りました。AdLocalもAdInFlashも、米国版のサービスをやっていくつもりです。目標としては、モバイル広告企業として世界的な企業になることです。
小川氏
AdMobが世界最大のモバイル広告市場、とうたってますが、ぜひ勝ってください(笑)。
詳細をお伺いする前に宮澤さん自身のご経歴もおしえてください。
宮澤氏
いま、26歳です。22歳で大学を出てすぐ創業しまして、モバイルは設立当初からフォーカスしていました。そのときはモバイルサイトの制作をしていましたが、とにかく事業ドメインはずっとモバイルです。
■ 日本のモバイル公式サイトは類のない秀逸なビジネスモデル
小川氏
日本でのライバル企業は?
宮澤氏
日本でのライバルですか。ベンチマークは特に設定してないんですよ。理由は同業他社がいないサービスを出しているからなんです。
小川氏
なるほど(笑)。
宮澤氏
市場をクリエイトすること、誰もやっていないことにチャレンジしたいと考えてきました。モバイルSEO事業もいち早く参入しましたし。もうアウンコンサルティングに事業譲渡してしまいましたけど、新しいことをやるのが生きがいですね。
小川氏
参入障壁はどこにあるのでしょう?
宮澤氏
いや、競合がどんどん参入してきて市場を作ってくれるんだと思います。ITの世界にまねできないものはないじゃないですか。だからスピードとタイミングが大事だと思うんですよ。これがくるんじゃない?という事業やサービスの見極めで勝負していきたいですね。
小川氏
なるほど。昔のソニーのような役目ですね。ただ、それでも大きな意味で、モバイル広告プラットフォーム、という言い方をしたら現在でも競合は存在しますよね?
宮澤氏
まあ確かに。その意味では、一番大きいのはやはりGoogleですね。AdMobも競合にはなるでしょう。ノキアが買収したEnpocketもそうだし。ただ、日本だとアフィリエイトが多くて、商品群が違ってバッティングはないですね。
AdLocalだけでいうとリクルートのドコイク?も。オプトも入ってくるでしょう。
小川氏
モバイル広告の市場はどのくらいと考えていますか?
宮澤氏
電通が出している数字だと年間で500億円くらいですね。PCの広告はその10倍はあるでしょうから、ボリュームとしてはまだまだですね。
PCと比べるとクリック率は高いんですが、それは画面に置ける文字の面積が大きいということもあるでしょうしね。PCに比べて総ページ数が小さいということもあり、まだまだ追いつけてないですね。
小川氏
公式サイトと勝手サイトではどっちが見込みありますか? 以前、モバイルファクトリーの宮嶌さんは勝手サイトでないとダメとおっしゃっていたし、エンターモーションの島田さんは勝手サイトが今後は伸びると話されていましたが。
宮澤氏
どっちが伸びる、ということはないんですけど、もうかるかどうかでいうと、公式サイトに勝るモデルはないですね。秀逸だと思います。iPhoneのApp Storeのモデルより秀逸だと思っています。毎月何もしない人からも料金をいただけるというモデルはほかにないですからね。月額で定額とれるモデルを作り上げたことはスゴいと思います。実は最近ケータイの機種変更したら、2002年のFIFAワールドカップの動画が見られるというサービスをいまだに登録していたことに気がついたほどです(笑)。
■ 海外進出を本格化
小川氏
さて、10月に米国進出したり、ベルリンでのWeb 2.0 Expoに登壇したりと、海外志向な感じがしますが、本音はどうですか?
宮澤氏
日本国内でトップをとることも大事ですが、それ以上に海外に進出したいという意識が高いですね。
小川氏
懸念点はありますか? モバイル系のベンチャーの社長は皆さんそうおっしゃるんですが、実際には日本の特殊なモバイルビジネスの延長線で出ていくことは無理だと僕は思っているのですが。
宮澤氏
おっしゃる通りで、日本のモバイル市場はあまりに独自の発展してきたのでほかの国とは違っていることは確かです、だからやりづらさはありますね。海外で日本のモバイルサービスを見せても、彼らの反応の多くは「うん、スゴいね。でもそれは日本の特殊な環境だからできることでしょ?」という感じが多いです。
ただ、その事実を十分認識した上で、それでも自分たちで生み出したサービスを、世界中のできるだけ多くの人に使ってもらいたいと思っています。
小川氏
モバイル業界の新しい動きとして、スマートフォンの台頭があります。AdMobなどはiPhone上での広告がものすごく増えているという発表をしていますよね。
宮澤氏
そうですね。でも日本の女子高生などにはスマートフォンは向かないと思いますよ。iPhoneは国内はまだまだ普及という段階ではないし、全米では1000万台売れていても、日本では30万台くらいなのかな。端末としては100万台くらいいかないと開発の優先順位を上げられないので、われわれとしてはもう少し普及を待つ感じですね。
ただ、国内では当面考えないですけど、アメリカではiPhone対応は必須だと思っています。3GからGPSがついて、ロケーション情報がとれますから、AdLocalと親和性が高いです。GoogleのAndroidもGPSの情報をとれますから期待大です。今いる場所の近くを切り取るということが、ああいうプラットフォームからできてきますよね。
小川氏
LooptなんかはGPSをうまく生かしたSNSですよね。
宮澤氏
LooptのCEOのサムは友人で、このあいだも食事を一緒にしました。
スマートフォンの普及という意味では、一般のケータイもタッチパネル化してきていますので、クリック率をあげるという点で、よい傾向ととらえています。指を使えるから広告をクリックしやすいですよね。広告をシームレスで見られるということも大きいです。ポイントは日本語の入力に適しているかどうかですけど。アメリカに行ったときに、AndroidケータイのG1を買ってきたんですよ。スタッフに渡したら、よくできてるけど、まだ使いづらいと話してましたけどね。
■ PCとモバイル業界の接近と“米国西海岸化”
小川氏
ただ米国の高校生でも平気でiPhoneを使ってFacebookでコミュニケーションとっていますから、日本でも早晩慣れてくると思います。
進化の速度の違いはありこそすれ、すべてのケータイがPCのWebを載せてくるのは間違いないですし。
宮澤氏
それは間違いないですね。モバイルとPC業界が接近してますます西海岸志向になってくる。
その意味でノキアの日本撤退はショックでしたね。僕たちとしては、とにかく海外に目を向けるという意思決定をしています。年明けに日本以外で動くAdLocalをローンチするつもりです。いまさらアメリカ進出?とやゆされることもありますが、いえいえ、いまからでしょ、と。いまさらではなくこれからがシリコンバレーなんだと思っています。
小川氏
米国オフィスはいま何人?
宮澤氏
2人です。全社で35人くらいになりました。
2年くらいは様子をみようと。それから判断するつもりです。それで芽が出なければ撤退も考えますが、いまのところ手応えは感じている状態です。
Web 2.0 Expoベルリンで40分のセッションをしまして、5段階評価で4.25と、高い評価を得たんです。Webで公開したスライドもたくさんダウンロードしていただいているし、ちゃんと日本でやっていることを伝えればいいと思いましたね、今後も発信していこうと。
小川氏
3年後、5年後の日本のモバイルはどうなっていると思います?
宮澤氏
ノキアが世界で好調なのに、日本は撤退、というのは危機感を本当に持ちましたね。このままではいけない、と本気で思いました。モバイルとPCが融合して、シリコンバレーで生まれる新しいモデルの影響をどんどん受けていく。本当にこのままではいけないでしょうね。
小川氏
同感です。PCはもうインターネット利用の主役ではなくなっているでしょうね。モバイルに完全にパワーシフトして、でも見ているWebはPCもモバイルも一緒。宮澤さんのおっしゃる西海岸的なビジネスモデルに飲み込まれているかもしれないですね。そのときに日本の底力をなんとかしてみせたいです。ぜひ、米国進出を大成功させてください。
今日はありがとうございました。
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小川 浩(おがわ ひろし) 株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。 |
2008/12/22 13:00
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