Oracleを支える3本柱は「コンプリート」「オープン」「インテグレート」-シン上級副社長

Oracle OpenWorld Tokyo 2009 基調講演

米Oracleのインダストリー・ビジネスユニット担当上級副社長、ソニー・シン氏

 日本オラクル株式会社は4月22日から24日まで、プライベートイベント「Oracle OpenWorld Tokyo 2009」を、東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催している。初日の基調講演では、日本法人の遠藤隆雄社長に続き、米Oracleのインダストリー・ビジネスユニット担当上級副社長、ソニー・シン氏が登壇。「企業ITの最適投資 -エンタープライズ・アプリケーションの現在と未来」と題した基調講演を行った。

 Oracleでは、「コンプリート」「オープン」「インテグレート」の3本柱を掲げて事業を行っている、と再三説明してきたが、シン氏はこの意義を詳細に説明した。まず「コンプリート」では、「公共、教育、金融、リテール、通信、製造など、すべての業界に向けた、非常に包括的なベストインクラスのソリューションを提供する。どの業界で仕事をしていたとしても、業界に特化したソリューションを当社は持っている」(シン氏)とする。もちろん、はじめから包括的なソリューションを持っていたわけではなく、Oracleはこれを獲得するために、400億ドル以上をかけて、ベストなソリューションを持っている企業を買収してきたという。また、約100億ドルをかけて社内でも開発を進めたとのことで、こうした巨額の投資によって、ベストインクラスのソリューションを各業界で入手できたというのである。

 シン氏はその例として通信業界を挙げ、2004年と2009年の通信業界向け自社ポートフォリオを示した上で、「以前はERPなどの基幹部分程度の提供だったが、今日では、買収と開発によってコンプリートなソリューションを提供できた。世界のトップ20のキャリアはすべて当社のアプリケーションを使っている」とその実績を説明する。さらに、「同じことは金融でもいえ、世界のトップ20は全社が当社製品を使用しているし、リテール、製薬、大学、ヘルスケア、政府といった分野でも状況は同じだ」とした。

2004年の通信業界向けポートフォリオ。ERPなどの基幹アプリケーション以外の、業種固有のアプリケーションはほとんど提供できていない2009年の通信業界向けポートフォリオ。買収と自社開発によって、かなりの部分をカバーできる広範なポートフォリオが実現した

 次の「オープン」では、他システムとの互換性を考慮した際に、これがとても重要になると指摘する。

オープン化を推進するため、標準化にも積極的にかかわっている
AIAにより、統合化環境を容易に実現できるという

 「コンプリートなポートフォリオがあるといっても、すでに今持っているアプリケーションがある。これをどうしたらいいのか?」という質問をよく受けるとしたシン氏は、「持っているものをすべて捨てて取り換えるということは当社も考えていない。当社製品はオープンであるため、すでに投資をしているアプリケーションとの互換性を提供できる」とアピール。「特にこれがよく現れているのはミドルウェア。SOA、ID管理、コンテンツ管理、コラボレーションなど、すべてのテクノロジーがオープンな業界標準で作られているので、ホットスワッパブルな利用が可能だ」と述べている。

 最後の「インテグレーテッド」についても、「多くのOracle製品を購入するが、その統合はわれわれ顧客ではなく、Oracleがやるべきではないのか?」という質問をよく受けるとした上で、「それはもちろんその通りで、コスト削減の肝になるので、当社が提供している」と説明する。その中核となるのは、Oracleが2007年に発表したAIA(アプリケーション統合アーキテクチャ)。これは各種アプリケーションを容易に統合するための基盤であり、Oracle Applicationsの各業務プロセスを統合した「プロセス統合パック」と、異種アプリケーションのシステム統合を実現する「ファウンデーション・パック」などから構成される。

 この強化は継続的に行われており、日本オラクルでは4月22日に、プロセス統合パックを6つラインアップに加えたほか、ファウンデーション・パックでは、企業システムで標準的に必要となる業務プロセスを事前に設計した「Oracle AIA Reference Process Model」を新機能として追加している。また、特定業界向けとしては、通信業界向けのテンプレート「通信業界向けOracle AIA ファウンデーション・パック」を用意し、従来提供していた保険業界向け、公益業界向けとあわせて3種類を提供できるようにした。

 シン氏はこうしたことを踏まえて、「業界特有のコンポーネントや統合化のための方法、プロセス指向のフレームワークを提供しており、業界固有のビジネスプロセスも統合化を図れる。これらは、インテグレーション戦略の重要な部分だ」と述べている。

 またシン氏は、Oracleが顧客企業に提供しているメリットを説明した。「日本はWBCに優勝したが、一貫性のある長期のゲームプランがなければ勝てなかっただろう。ITシステムでも同じようなことが必要で、投資を2通りにわけて考えなくてはならない」とし、投資計画は長期、短期の双方が必要だとする。

 短期の投資としては、米HPが導入したCRMやディールマネジメント製品、インドTataが導入したSCM製品などを例に、製品・ソリューションの導入で各企業に価値を提供できると主張。また長期投資としては競合優位性を得るための基盤の整理が必要とし、それに対してOracleでは、「アプリケーションアンリミテッド」方針のもと、アプリケーションの継続強化を実施しているとアピールした。Oracleではまた、さらなるイノベーションが提供できる次世代の「Fusionアプリケーション」も開発しているが、現状のアプリケーションからFusionアプリケーションへの移行はユーザー自身が決められるようにしていると述べている。




(石井 一志)

2009/4/22 16:45