富士通・野副社長、「お客様のビジネスに貢献する富士通に」

富士通フォーラム2009 基調講演

代表取締役社長の野副州旦氏
「お客様のお客様起点」「グローバル起点」「地球環境起点」の3つの起点の変革に挑む

 富士通株式会社は5月14、15日の2日間、東京・有楽町の東京国際フォーラムにおいて、プライベートイベント「富士通フォーラム2009」を開催。初日には同社代表取締役社長の野副州旦氏が登壇し、「富士通の変革 ~お客様のかけがえのないパートナーへ~」と題して基調講演を行った。

 野副氏は冒頭、「お客様のお客様起点」「グローバル起点」「地球環境起点」の3つの起点で富士通を変革していると述べ、この3つの起点での取り組みを説明した。

 「お客様のお客様起点」について、野副氏は「昨年の富士通フォーラムで前社長の黒川が説明したように、システムを作りっぱなしにしてしまい、利用する側の視点での改善が行われていなかった。これを改善するために、富士通ではフィールドイノベーターの育成に取り組んでいる」と説明。

 このフィールドイノベーターは、15年以上の実務経験者の中から選ばれ、顧客企業の業務現場において運用改善やシステム改善ポイントの発見、そして生の声をモニタリングすることで、システム運用の改善を行う人材。昨年からスタートしたフィールドイノベーターは、今年第一期生が誕生して、実務を開始している。「決意表明の様子を見ると、新入社員がそろっているように見えるが、近づいてみると髪に白いものが混じっていたり、顔にはしわもある(笑)。実際、彼らは部長や部長相当の実務経験者であり、現場の知恵と経験を多く持った人材ばかり」と、新たな職種となるフィールドイノベーターに富士通が持つビジネス経験を集約させている点を強調した。


納品したシステムの運用段階でお客様を支援しながら改善点を可視化するのがフィールドイノベーターの役割現場の知恵を経験を知のネットワークで集約し、お客様の業務現場の改善を目指すフィールドイノベーター第一期生の決意表明の様子

 お客様のお客様起点の活動のひとつとして、富士通自身の基幹システムの再構築事例も紹介。「これまで、お客様に対してシステム再構築の必要性を説きながら、自社のシステムを再構築していなかった。これは大きな矛盾であり、まず富士通自身がお客様の立場に立ってシステム再構築に取り組んだ。この新システムでは、SAP CRMを中核に、SOAに基づいたシステム構築を実施。膨大な費用をかけたが、さまざまな課題や経験を得ることができた」と紹介。

 そのひとつが、「XML大福帳」。XMLのフレキシブルなデータ構造を生かしたもので、発生したデータをすべて時系列で記録することで、企業の活動記録を一元化できるのが特長。データの発生と処理を分離しており、利用用途に応じて自由に選択できるのも利点となっている。

 また、いくら企業データがまとまっていても、単純な集計データでは経営側で利用できない。これを改善するために、「マネジメント・ダッシュボード」も用意。集計結果をグラフィカルに表示することで、直感的に情報を把握できるのが特長となっている。


SAP CRMを中核に再構築された同社基幹システム自社システムの改善から生まれたXML大福帳経営状況を視覚的に表示するマネジメント・ダッシュボード

 そのほか、社内実践から生まれた製品として、モバイルPCのHDDリモート消去も紹介。「富士通はモバイルPCを売っていながら、自社ではセキュリティの観点から自由に扱わせていなかった。これでは自己矛盾してしまっており、これを改善するものとして発表したのがこのHDDリモート消去。これを利用すると、モバイルPCを紛失した場合、遠隔操作でモバイルPCのHDDを読み出し不能にすることができる」と、さまざまな自社での経験から、お客様起点の製品・サービスが生まれているとした。

Think Globalによりグローバル起点の取り組みを強化

 「グローバル起点」については、「富士通は世界各地に進出しており、グローバル展開しているようにおもっていたが、実際は各国でローカル展開しているだけでしかなかった。これにThink Globalという考え方を追加することで、真のグローバル化を目指している」と紹介。「実際、各拠点ごとに戦略実行組織を持っていたが、これを海外ビジネスグループにまとめ、意志決定を一元化した。この場で、徹底的に議論をし、決定事項を迅速・効率的に実行する体制を整えた」と、複雑化していたグローバル体制をシンプル化し、グローバルでの成長を実現する体制を整えたと述べた。

 グローバル起点での取り組みで大きなものが、富士通シーメンスの完全子会社化。「サーバービジネスの中核となっていくx86サーバーだが、これまでは日本とドイツのダブルスタンダードになっていた。今回、富士通シーメンスを完全子会社化し、x86サーバーの開発を富士通テクノロジーソリューションズ(旧:富士通シーメンス)で一元化し、グローバルでの販売目標も掲げた。2010年に50万台をグローバルで販売するという目標設定自体、これまでの富士通では行ったことがないもので、これを実現するためには体制を大きく変革する必要がある」と、日本というローカルな視点ではなく、グローバルでの取り組みに軸足を置き、成長戦略を進めていく考えを改めて強調した。


グローバルで一貫した基盤を構築することで、世界で同レベルのサービスを提供グローバルで50万台以上のx86サーバーの販売を目標に掲げるなど、グローバルで共通目標も設定

 「地球環境起点」に関しては、「富士通では、グループ環境ビジョンを策定し、エコプロダクトやエコサービス、エコソリューションを提供している。特にITを利用することで、環境負荷低減につながるようなサービスの強化を進めている。その一つの取り組みが、グリーンインフラソリューション。データセンターの電力消費の多くは、サーバーといったシステムではなく、空調などのファシリティ。これらをトータルで省電力化することで、データセンターのCO2排出・消費電力の削減を実現する」と説明。「環境対応に関して、外部の調査機関から世界トップクラスの評価をいただいている」と、引き続き環境起点を重視し、IT産業として貢献していくと述べた。


環境負荷低減を目指した同社の取り組みグリーンテクノロジーを活用することでデータセンターの省電力化を目指す環境対応での外部評価は世界でトップクラス

 「富士通は、これら3つの起点によりお客様のビジネスを支援していく。お客様のビジネスに貢献することで、お客様にとってかけがえのないパートナーになることを目指している。これからの社会はますます大きな変革を迎えることになるだろうが、常に変革に挑戦することで、お客様とともに進化していくことを宣言する」と述べ、講演をしめくくった。





(福浦 一広)

2009/5/14 14:12