「SANではリーダー的立場を維持、IPネットワークでも第2位を目指す」、ブロケード青葉社長


代表取締役社長の青葉雅和氏

 ブロケード コミュニケーションズ システムズ株式会社(以下、ブロケード)は7月24日、事業戦略説明会を開催。代表取締役社長の青葉雅和氏が、国外、国内の状況とビジョンを解説した。

 米BrocadeはもともとSAN関連で強いリーダーシップを発揮していた企業だが、Foundry Networks(以下、Foundry)を2008年に買収し、SANとIPという2つの製品ラインを持つ企業として生まれ変わっている。もともとがSAN製品の企業であるため、今までの製品がどうなるのかという不安の声もあったが、IP製品を含めた自社製品によって「データセンター」「サービスプロバイダ」「エンタープライズ・キャンパス」の3分野にフォーカスする戦略の推進と、5月に行われた、旧Foundry製品ラインを継続するスイッチ、ロードバランサーの発表により、「そうした不安を払しょくできたのではないか」(青葉社長)という。

 今後についても、旧Foundryのハイエンド製品である「NetIron MLX」に対し、Brocadeが推進する次世代Ethernet「CEE(Converged Enhanced Ethernet)」対応ブレードを提供することを6月に発表。順調に統合に向かっていることをアピールしている。さらには、SANという非常に厳しく信頼性が要求される環境向けの基準を、IP製品にも適用することで、「水準と比べて、Foundryが低かったわけではないが、Brocadeと比べて不良率などでも3倍の開きがあった。Brocadeのプロセスを反映し、IP製品も本当の意味でのデータセンタークオリティに向上させる」という。

 また、米国での企業買収に伴い、Brocadeの日本法人であるブロケードも、SAN/IPの両製品ラインを扱うことになった。同社では、社内の体制を一新し、営業では1人1人がSAN/IP製品をきちんと手掛けられるようにしたほか、パートナーとの関係も深化を図るという。これは、基本的に間接販売でビジネスを行っているブロケードでは、パートナーとの関係を深めることがビジネスの強化につながってくるため。これについて青葉社長は、「ブロケードでもパートナーへの投資を積極的に行い、既存のSANのパートナーにはIPを、IPのパートナーにはSANを扱ってもらえるようにする」との考えを示す。

 そのためにも、「まず技術者の支援が重要で、当面は当社からの無償トレーニングを提供しようと考えている。また、IP製品を取り扱ってもらうために、当社の中でもラボやデモ機器の貸し出しなどを進められるようにしている」(青葉社長)とのこと。取り扱い製品の増加でビジネスの拡大を図るパートナー側でも、相応の投資が必要になることから、ブロケードでもかなりの投資を行い、パートナー支援を積極的に行っていこうというわけだ。さらにパートナーとは、販売だけでなく、保守体制も含めた戦略的な関係の構築も検討しており、きちんとしたクオリティを提供するために、包括的な提携も視野に入れていくとしている。

 加えて、日本IBMへのOEMによる効果も期待する。米国では4月、日本では5月に発表されたこの提携により、国内では日本IBMが、ハイエンドからローエンドまでのIP製品と、FCoE(CEE)製品を自社ブランドで取り扱えるようになった。これによって、販売量の増加といった直接のメリットが期待できるほか、製品のフィードバックによる品質向上など、副次的なメリットも期待できるようになったのとのことで、ブロケードでもトレーニングや共同セールス、マーケティングといった支援を提供するという。

パートナーとの関係を生かし、マルチベンダーのデータセンター環境でも、検証済みのソリューションを提供できるという

 なお青葉社長は、注力する3分野のうち特にデータセンターを取り上げ、ブロケードならではのユニークなパートナー戦略によって差別を提供できるとアピールした。データセンターにおいて仮想化などの技術を利用する場合、ネットワーク製品はその中の1コンポーネントという扱いになり、ストレージやサーバーなど、データセンターにあるほかのコンポーネントとの組み合わせで、アプリケーション最適化や自動化といった価値を提供することになるため、エコシステムが非常に重要になるのだという。

 Brocadeでは、SAN製品のOEMを長年にわたって続けており、その中で、主要なサーバーベンダーやストレージベンダーとの関係を構築してきた。またBrocade自身が、共同開発・検証に対して10億ドルもの投資を行っている。こうした背景があるため、ネットワークを提供する他ベンダーとはまったく異なる価値を、国内ではブロケードが提供できるのだと、青葉氏は主張する。「当社のパートナーとの、マルチベンダー環境での仮想ソリューション提供が、市場から求められてくる。パートナーとともに標準化を行い、検証し、実際に動くものをお客さまに提供できるのは当社だけだろう」(青葉社長)。

 ブロケードではこうした施策を通じて、国内での事業を拡大。2012年までの3年で、二次店の数を現在の倍に、認定技術者を5倍に、またブロケード自身の販売・サポート体制も倍に向上させるとしている。「SANではリーダーシップを堅持するとともに、IP市場では第2位のポジションを確立したい」(青葉社長)。





(石井 一志)

2009/7/24 16:37