マイクロソフト、「大手町テクノロジーセンター」を10月に開設

企業システムの開発や検証を支援、イノベーションセンターの役割も移管

 マイクロソフト株式会社は9月30日、各種検証の支援やソリューション開発などを行う「マイクロソフト大手町テクノロジーセンター」(以下、大手町テクノロジーセンター)を、東京・千代田区の大手町センタービル内に開設すると発表した。開設は10月6日付けで、同社の顧客、パートナーなどが利用できる。

 大手町テクノロジーセンターの役割は大きく2つある。1つ目は、同社のビジネス活動を支える「テクノロジーセンター」の役割。マイクロソフトのソリューションを利用して、企業のシステムライフサイクル全般の最適化を支援するため、システム部門、エンドユーザー部門の意志決定者やCIOなどに向け、対話型、体験型のブリーフィングを提供する。

執行役常務 エンタープライズビジネス担当の平野拓也氏

 執行役常務 エンタープライズビジネス担当の平野拓也氏は「水平型や、業種に特化した垂直型のソリューションをどう開発し、お客さまに提案していくかが鍵になる。そのために、運用、計画、導入といったライフサイクルの1つ1つのステップを、この場所を用いて提案できるようにする。また、アーキテクチャの設計支援、ソリューションを体験していただける場を提供する」と、その役割を説明。また、「パートナーの協力により、ハードウェアを取りそろえているので、(SIerなどの)パートナーも自由に使っていただけ、お客さまの実際の環境に似た状況で、提案や検証などを進めていける」とも述べている。もともと、こうした機能自体をマイクロソフトが持っていなかったわけではないが、これを1つに集約し、設備を充実させたことに意味があるという。

 もう1つは、産学連携による研究支援や、ソフトウェア、ハードウェアベンダーなどとの連携より、日本発のイノベーションを創出する「イノベーションセンター」の役割。国内では、2006年11月に調布に設置されており、ユニークな技術を持ったベンチャー/スタートアップ企業への技術支援や、相互運用性・接続性向上のための技術支援、大学・研究機関との共同研究などを行ってきた。実績としては、3年間でのべ1万人以上が利用し、16の地方自治体を通じて、70以上のベンチャー企業と連携。また、スタートアップ企業や学生への支援プログラム立ち上げといった成果も上げている。

 マイクロソフトでは、大手町への移転後もこうした活動を継続する方針。最高技術責任者の加治佐俊一氏は、「霞が関や東京駅から近い大手町の立地を生かし、産学官の連携や、地方ベンチャーを強化したい。また、テクノロジーセンターと一緒になることで、ベンチャーのみならず、エンタープライズのパートナーとも一緒に活動できる幅が広がるだろう」と述べ、活動をさらに強化したいとした。

最高技術責任者の加治佐俊一氏「イノベーションセンター」の今後の方針
これらの設備は、16社のパートナーの協力で設備が整えられたという

 なお、「テクノロジーセンター」「イノベーションセンター」の役割別に明確に設備が分かれているわけではなく、目的に応じて共用の設備を随時利用する形をとる。具体的な設備としては、300台以上のサーバー、500TB以上のストレージを用意したサーバールームを設けるほか、ワークステーションを330台あまり設置したトポロジーセンターを併設し、各種の検証や開発作業を行えるようにしている。これらの設備は、10万ユーザー規模のExchange Server環境を、10~15プロジェクト同時に検証可能な能力を持っており、ミッションクリティカルな大規模環境の検証についても、十分に対応可能とのこと。

 また、ハンズオンが可能な2室のSolution Experience Roomを含め、10室の会議室を設けており、顧客やパートナーがソリューション体験やアーキテクチャ設計など、幅広い用途で利用可能なようにしている。

 利用する際は、直接、またはパートナーを通じてマイクロソフトの担当アカウントに申し込む必要があるが、「すでに11月まではキャパシティが満杯の状態」(マイクロソフトテクノロジーセンター長の瀬戸口靜美氏)と、滑り出しは上々のようだ。マイクロソフトでは、1年間で1000社の利用を見込んでいる。

トポロジーセンター(左)とサーバールーム(右)は80Gbpsの帯域で結ばれており、大規模なエンタープライズ環境でのネットワーク検証にも対応可能というSolution Experience Room
会議室も用意されている最大規模の会議室(左)には、同時通訳ブース(右)も設けられた





(石井 一志)

2009/9/30 18:16