マイクロソフト、SQL Serverなどに適用可能な新ライセンス「EAP」

競合製品からの乗り換えアセスメントの無償キャンペーンなども発表

Enrollment for Application Platformのメリット
アップグレードを促進するため、セミナー開催を強化する
新規に最新版のライセンスとSAを購入する場合と、EAPを利用してSAを購入し、既存ライセンスをアップグレードする場合では、圧倒的な金額差が生まれるという

 マイクロソフト株式会社は10月2日、SQL Serverの導入促進を図るための、各種の施策を発表した。アップグレードをしやすくしたり、ライセンス費用を最大40%割り引いたりする新ライセンスプログラム「Enrollment for Application Platform(EAP)」を11月1日より開始。また、他社製品から移行するためのアセスメントサービスの提供、専用コールセンターの設置などを順次開始する。国内のRDB/DWH(データウェアハウス)市場において、「2012年までの早い段階で50%を超えることを目指す」(サーバープラットフォームビジネス本部 業務執行役員 本部長の五十嵐光喜氏)という。

 EAPは、SQL Serverを含むアプリケーション基盤製品が対象となる新ライセンス。SQL Serverの場合は、Enterprise Edition/Standard Editionを問わず、プロセッサライセンス×15、ないしはサーバーライセンス×10とCAL×400を持つか、新規で購入するユーザーが契約できる。

 このライセンスは、五十嵐本部長が「端的にいえば、コスト削減のためのライセンス」と話すように、旧バージョンのユーザーが、最新版へ低コストで円滑に移行することを支援するために設けられたもの。その企業が過去に購入したSQL Serverのライセンスに対して、ソフトウェア保守契約に相当する「ソフトウェアアシュアランス(SA)」を追加購入可能になる。SAではその特典の1つとして、最新版に無償アップグレードできる権利が提供されているため、例えば、SQL Server 2000のユーザーが、最新のSQL Server 2008を利用できるようになるのだ。

 企業向けのソフトウェア製品では、保守契約(マイクソフトの場合はSA)を契約し続けているユーザーであれば、常に最新版を利用できるのが一般的だが、保守契約は購入後時間がたってからは契約できなかったり、契約できても、支払っていない全期間の保守料金をさかのぼって支払わないといけなかったりすることが多い。つまり、保守契約をしていない場合は、ライセンスを新たに買い直さないと最新版を使えない、ということになる。

 しかしEAPでは、「7年前、8年間に購入したライセンスでも、払っていない欠落期間分の保守料金は請求しない」(五十嵐本部長)点がポイント。SAの価格は、ライセンスを買い直す場合と比べて安価に設定されているので、ユーザーは最小限のコストで最新版にバージョンアップできるのである。マイクロソフトが把握している限りでも、SQL Serverの旧バージョンを利用中のユーザーが、約3500社、22万サーバーあるとのこと。同社ではこうした層に向けて、EAPを用意するのみならず、アップグレードに関する具体的なノウハウを提供する「アップグレード推進セミナー」を年間48回開催するほか、販社に関してもアップグレードのノウハウや提案手法などを説明する「SQL College」を年間40回開催し、アップグレードを推進したい考えだ。

 このほかEAPでは、SQL Serverのライセンスを新規・追加で購入する際も、Standard Editionで15%、Enterprise Editionで40%、ライセンス価格が割り引かれる。購入は1ライセンスから可能で、特に数の制限はない。さらに、3000万円以上のSAを契約し、Premier Foundation以上のサポート契約を締結しているユーザーは、専門エンジニアによるサポートが無制限に利用可能になるとのこと。

 なお従来のSQL ServerのライセンスにEAPによるSAを購入した場合、SA契約を終了し、なおかつライセンスを使い続けるには、新規のライセンス料の支払いが生じるなど、一部取り扱いが複雑な部分があるので、注意が必要である。

市場シェア拡大のため乗り換えを促進、新規市場の開拓も

サーバープラットフォームビジネス本部 業務執行役員 本部長の五十嵐光喜氏

 2012年以前に50%のシェアを獲得するためには、競合ベンダーからの乗り換えユーザーを多数獲得する必要があることから、マイクロソフトでは、移行を促進するための体制をさらに整備するという。具体的には、他社製品からSQL Serverに乗り換える場合の概算コストと、移行後の削減コストを試算するアセスメントサービスを、11月2日より提供する。これは、「ユーザーが移行するためには、どれだけ工数がかかるのか、そもそも移行が可能なのかなどの懸念を取り除くためのもの。当社が通り一遍のアセスメントをするのではなく、競合データベース製品に詳しい株式会社インサイト・テクノロジーのサービスを利用する」(五十嵐本部長)点が特徴。2010年3月末までは必要な費用をマイクロソフトが負担するキャンペーンも行い、ユーザーの負担を取り除くとした。

 さらに、SQL Serverに対しての知識を深めてもらい、販社内でのシェアを拡大する目的で、データベースシステムの構築にたけたOracle Master向けのトレーニングを強化。加えて、SQL Serverに興味を持ったけど問い合わせ先がない、わからないという要望に応えるため、「気軽に聞ける無償コールセンター『SQL Direct』を新たに開設する」(五十嵐本部長)。SQL Directは、SQL Serverや関連製品に特化したコールセンターで、他社製品との比較からライセンスの購入方法まで、幅広い質問に答えられるよう、バックエンドの専門家と連携しながら対応していくとした。

 「すでに、競合製品からのスイッチング案件も多数あるほか、競合製品でないとできないと思われていた提案中の案件がひっくり返ったこともあり、エンジニアの理解を進めることが必須だと確信した。また、厳しい経済状況の中で、同じかそれ以上のことを、より少ないコストでやりたいという要望も強い。圧縮やレポーティング機能などを標準ライセンスの範囲で提供しているSQL Serverであればこうした期待に応えられるということを、エンドユーザーに強く届けていきたい」(五十嵐本部長)。

Fast Track DWHによって、DWH市場の拡大とシェア獲得を狙う

 また、企業内に蓄積されるデータが増大する中で、それらの活用を図るBI/DWH製品が注目を集めている。マイクロソフトでは、この市場の獲得に向けても積極的に取り組んでおり、6月には、DWHアプライアンス「SQL Server Fast Track Data Warehouse」(以下、Fast Track DWH)を発売した。この市場においては、「DWHは32TB未満がほとんどであり、ここに対して、もっとも求めやすくて安心できるソリューションを提供する」(五十嵐本部長)との方針で、パートナーと取り組みを進めているが、9月15日には、さらにローエンドのすそ野を開拓する製品をNECが発売した。

 NECの第一コンピュータソフトウェア事業部 嶋津和行統括マネージャーは、「低価格モデルを先行して提供し、このくらいの価格(標準価格800万円台)でもDWHができるということを示したい。また、先行しているベンダーはいわば“箱物”だけの提供だが、当社では総合的な体制でサービスを提供しており、責任を持って構築支援まで行える点が強みだ」と、自社のメリットを強調。また今後については、「(無停止型サーバーの)ftServerを利用した高信頼モデルや、高性能モデルも検証を進め、提供を開始する」(嶋津統括マネージャー)計画で、近々リリースされるとのことである。

NECの第一コンピュータソフトウェア事業部 嶋津和行統括マネージャーNECのFast Track DWHへの取り組み





(石井 一志)

2009/10/2 11:15