富士通、新社長に50代の山本氏が就任へ-同日付で副社長に昇格


代表取締役会長兼社長の間塚道義氏(左)と、4月1日付で執行役員社長に就任する山本正己氏(右)

 富士通株式会社は1月22日、同日付で執行役員副社長に昇格した山本正己氏を、4月1日付で執行役員社長とする役員人事を発表した。現・代表取締役会長兼社長の間塚道義氏は社長の兼任を解除し、会長職の専任に戻る。あわせて、5名の執行役員副社長の人事も発表。現・執行役員副社長のリチャード・クリストウ氏に加えて、石田一雄氏(現・執行役員上席常務)、藤田正美氏(現・執行役員常務)、佐相秀幸氏(現・執行役員常務)、生貝健二氏(現・執行役員)らが4月1日付で執行役員副社長に就任する。取締役については、6月の株主総会での承認後に決定する予定。

 新社長に就任する山本氏は、1954年生まれの56歳。1976年に富士通に入社し、日本語ワープロ「OASYS」やPCなど、プロダクト製品を担当。2005年には経営執行役 兼 パーソナルビジネス本部長に、2007年には経営執行役常務に就任しており、執行役員副社長に就任する直前は経営執行役常務 兼 システムプロダクトビジネスグループ長を務めていた。

 新社長決定までの経緯について、間塚氏は、「10月に指名・報酬委員会を設置し、取締役の大浦溥氏を委員長に、私と社外取締役の野中氏の3名で社長の人選を進めてきた。富士通が現在置かれている環境、副社長を含めた新体制などを熱心に議論し、候補となった副社長・常務・執行役員を委員長の大浦氏が面接し、10名程度に絞り込んだ。その中で、幅広い経験と知見を持ち、変革のマインドを持って舵取りできる人材として、山本氏を選んだ。今秋月曜に本人に伝達し、その場で就任する結論をえた」と説明。

 「今年はクラウドがビジネスとして拡大する年であるなど、IT産業はこれから大きく変わっていく。富士通として、クラウドの延長線上に、人を中心としたパラダイムシフトが起きると考えている。山本氏は、OASYSやPC、IAサーバーなど、時代の変化の最先端を経験されている。この経験は、これからの変化を受け入れる柔軟性にマッチするもの。また、決めたことは徹底的にやり遂げる行動力を持っている面は、新しい時代の開拓への胆力を持ち備えた人材と考えた。年齢も今月56歳になったばかりと、若さも重要な要素。今回副社長になる4名も50代と、これからの時代を切り開く若さを持っている」と、大きく変化するIT産業に柔軟に対応できる人材であることを評価したと述べた。

 新社長に就任する山本氏は、「入社以来、プロダクト中心に経験してきており、ITに関しても黎明(れいめい)期から手がけるなど、ITが重要な道具となってくるのも見てきている。こうした経験を、これからの大きな変化の中で生かしていきたい。また、富士通が目指す真のグローバルカンパニーについても、PCの海外展開や富士通シーメンスの100%子会社化といったプロジェクトでの経験を生かしていきたい」と、グローバル観点で取り組んでいく考えを示した。


執行役員社長に就任する山本正己氏代表取締役会長兼社長の間塚道義氏

 5人の副社長を設置する新体制について、間塚氏は「短期間ではあるが、社長を兼任して実感したのが、一人で決済するのは非常に大変ということ。各部門で経験・知見を重ねてきた人材がサポートすることで、すばやく結論を出して行動できる体制として、5人の副社長を設置した」と説明。山本氏も、「たとえば、ソリューションとサービスをこれまでは一人の副社長が見ていたが、これを分けたり、コーポレート担当が不在だったのを新設したりしているので、富士通の規模からいえば決して多くはなく、妥当な体制と考えている」と述べた。

 事業の選択と集中については、「これまでの構造改革で、かなり整理整頓できたと理解している。半導体事業をどうするかという話もあるが、プロセッサを開発できる企業は、世界でも限られた企業のみ。クラウド時代においても、(スパコンが持つ)高速な処理性能が求められる部分もありうるので、差別化要素として今後も高速プロセッサの技術を磨いていく。また、こうした事業ができるのも半導体事業を持っているからこそ。もちろん儲かる事業にすることは重要なので、半導体事業の正規化は継続していきたい」と述べた。

 社員に対するメッセージとして、山本氏は、「若い社長と紹介されたが、競合企業と比べると決して若いわけではない。なので、若さといった次元は超えて、グローバルITカンパニーとなるよう突き進んでいきたい。そのためにも、富士通を明るい元気な会社にしたい」と述べた。





(福浦 一広)

2010/1/22 17:00