Office 2010の企業向け導入支援は「地味だけど重要な“カイゼン”」-マイクロソフト


インフォメーションワーカービジネス本部 Office製品マーケティンググループ シニアプロダクトマネージャーの松田誠氏
Office導入の3つの課題
Office導入支援センターを設立、ノウハウの集積などを目指している

 「新機能に比べて地味な点だが、導入時のコストに跳ね返ってくる、重要な機能“カイゼン”だ」――。マイクロソフト株式会社は3月29日、Office 2010に関する記者説明会を開催。導入時の負荷軽減のための企業向け支援策などを、インフォメーションワーカービジネス本部 Office製品マーケティンググループ シニアプロダクトマネージャーの松田誠氏が説明した。

 Office 2010では、各製品にさまざまな新機能が追加されているが、それとは別の側面で、ROIの最大化といった面でも高い効果を得られるような仕掛けが用意されている。これを提供する理由として松田氏は、「ホワイトカラーの生産性を上げるために最新のOfficeを使いたいというニーズがあるが、移行について、ある金融業のお客さまではPC2万台で3億円かかるという試算があり、この費用を抑えないと費用対効果が見合わなくなる」という点を指摘。Office導入時に上位にランクされる課題として、「互換性検証」「トレーニング」「導入・展開」の3つを列挙した上で、これらを解決するために、マイクロソフトとしても十分な用意をしているとする。

 このうち、「互換性検証」というのは、主にマクロとレイアウトの互換性に関する問題になる。その大きな要因は、「バグ」と「アーキテクチャの変更」が大きく2つあるとのこと。「アーキテクチャの変更」に関しては、例えばサポートする行数・列数の拡大によって発生したものなど、どうしても修正できないものも含まれているが、「バグ」については発見され次第できるだけ修正を進めており、「Office 2003からOffice 2010(RC版)への移行時に発生する問題は、Office 2007へ移行する場合と比べて、マクロでは約60%、レイアウトでは約22%、それぞれ削減できた」(松田氏)という。

 また、従来も、マイクロソフトでは問題の解決のために努力してきたというが、その“問題”というのが、あくまでも同社が把握している、あるいは想定できる範囲のものに限られてしまっていた。そこで今回は、現場で実際に発生している問題を把握し、導入に関するノウハウを集約するため、大塚商会、CSK Win、NSDの3社と協同で、2009年9月に「Office導入支援センター」を開設。そこで出てきた問題をすぐに開発担当へ送って問題解決に努めたり、各種資料を作成したり、といった活動を製品出荷前の段階から実施している。

 資料については、同センターで検証を行って凝縮されたノウハウを、ホワイトペーパーで提供する予定で、マクロの互換性、レイアウトの互換性に関する注意事項をまとめたものや、導入全般について状況別の最適な手法を解説したものなどを用意する。さらに、導入全般についての技術情報を集約したWebサイトも立ち上げる予定とした。なお、こうしたホワイトペーパー提供などはOffice 2007でも行っていたものの、検証結果が社内でのものに限られていたり、提供までに製品出荷開始後半年かかってしまったりしたため、効果が限定されてしまっていた点を反省。今回は製品出荷開始後60日以内の提供を目標にしている。

 あわせて、Office導入支援センターでのノウハウと、それを反映した独自ツールを活用し、Office 2010の早期検証を実現する互換性検証サービスも、大塚商会、CSK Win、NSDの3社が提供する予定で、導入期間の大幅な短縮が可能になるとした。

互換性に関する資料を提供するパートナーによる互換性検証サービスも用意した
トレーニング用コンテンツを無償提供

 2つめの「トレーニング」では、Office 2007から採用されたリボンUIの効果を最大限発揮させるために、効果的なトレーニングを行えるような支援を提供するという。松田氏は、「わずか2時間のトレーニングを行っただけで、Office 2007では、Office 2003と比べて、2週間の作業において約40%作業時間を短縮できた」との、三菱総合研究所の調査結果を示して、リボンUIの価値を強調。それを生かすために最低限知っておくべきことをA4紙1枚にまとめたクイックガイド、詳細な内容まで踏み込んだトレーニングビデオ、Tips集などを早期に配布するほか、これらのコンテンツをDVDに収録したトレーニングキットの配布、トレーニング情報をまとめたポータルサイトの開設を、それぞれ6月、5月より行うという。

 「便利な新機能が増えているのに、以前と同じ機能しか使わないのでは意味がないので、一般のスクールに行かなくても技術習得可能なキットを配布し、できるだけトレーニングコストをおさえられるようにしたい。Office 2007ではこうしたコンテンツの提供に1年半かかったが、今回はすぐに配布したいと考えている」(松田氏)。

App-Vによってソフトウェア配布の工数を削減できるとした

 最後の「導入・展開」については、Application Virtualization(App-V)によるメリットを説明した。企業の規模が大きくなればなるほど、導入・展開については大きな手間がかかり、インストールに時間がかかる、インストール時の管理者権限付与でセキュリティレベルが下がる、といった問題が生じてしまうという。App-Vは、専用ツールによってパッケージしたアプリケーションをストリーミング配信する仕組みで、オフラインで使えたり、サービスパック適用を迅速に行えたり、複数バージョンを共存できたりするメリットもあり、展開時の手間を削減可能なメリットがある。なお、App-Vは、Windows OSのソフトウェアアシュアランス(SA)保有者が購入可能なオプションパック「MDOP(Microsoft Desktop Optimization Pack)」を購入すれば利用可能だ。

 加えて、Volume Activation 2.0に対応しているので、ライセンス認証キーの流出を防止できる点もメリット。松田氏は「認証キーを従業員に公開すると、不正に使われるリスクがあり、コンプライアンス上見せたくないというニーズがある。KMSを利用すればこうしたニーズに応えられる」としている。




(石井 一志)

2010/3/29 15:30