「オートタギング技術でレコメン市場からアドネットワークまで開拓」TAGGY石上社長


 本日のゲストは二回目の登場となるTAGGYの石上社長です。動画検索サービスとして知られることの多いTAGGYですが、前回のインタビューでも話されていたように、事業そのものはB2B的な企業です。最近はレコメンデーションサービスの市場でも旋風を起こしつつあるTAGGYが、目指すところはなにかをお伺いしました。


石上 裕
株式会社TAGGY 代表取締役社長

日本大学卒、元建築プロデューサー。国内外におけるホテル開発や商業施設開発など、豊富なプロジェクトマネジメント経験を持つ。2000年からは株式会社ネットエイジにて複数のネットビジネスをプロデュースし、株式会社ライフバランスマネジメント取締役副社長、株式会社タイルファイル取締役を歴任。2006年9月、株式会社TAGGYを創業し、現在、同社代表取締役社長。


動画検索サイトはショーケース

小川氏
 先日飲んだばかりですね(笑)。飲みの席でも仕事の話しかしないですけど、お互いに。


石上氏
 そうですね(笑)。

 前回この場でお話させていただいたときには、タグ検索と動画検索のメディアに軸足をおいた話をさせていただいたと思います。動画を中心としたCGM系サービスの横ぐし検索という形で。


小川氏
 それ自体は今も変わりないんですよね。


石上氏
 ええ。ただ、前から同じことをいっているつもりですけど、要素技術を切り出してマネタイズするためのメディアはショーケースにすぎないんです。

 TAGGYイコールメディア検索といわれがちですけどね。ビジネスモデルは違うところにあるんですよ。


小川氏
 そうおっしゃってましたね。


石上氏
 メディアのビジネスモデルは広告事業で、それはやっていますけど、うちは主にソリューション事業、つまり要素技術である検索エンジン提供や、データマイニング事業といって、お客さまにとって必要なデータを抽出して提供する事業でマネタイズをしています。Googleなどとは違って、特定サイト、現在では主要な約1200サイトをクロールしており、それぞれを精度よく情報収集できるように一個一個のサイト用にカスタマイズして、パーサをパターン化しているので、複数のサイトからメタデータと記事・情報を横断的に抽出できます。われわれはこれをセマンティッククロールと呼んでいます。Web上の有用情報は、Web全体というよりも意外に特定少数のサイトにあるものです。


レコメンデーション市場で先行者を追撃

小川氏
 作りはMODIPHI IIと似てますよね。


石上氏
 そもそも小川さんとは考えることが似てると思いますよ(笑)。

 いずれにしてもTAGGYでは、クロール技術を使ってデータ精度が高く、即時性があるメディア横断の情報収集を提供することを主力事業の一つとしています。さらに、キーワードがいかにバイラル化(ウイルスのように感染力が強くなること)していくかを計測するためのバースト解析や、コンテキストの解析、トレンドサイクル解析などの独自のWeb解析技術も提供します。TAGGYでは連想ワード辞書を持っていて、オータギングロジック、アフィニティ(親和性)ロジック、レコメンドロジックなども提供できます。


小川氏
 それらはレコメンデーションサービスにつながってるということですね。


石上氏
 そうです。最近、先行するアルベルトさんKBMJさんとのコンペになることも多いですね。

 ただ、われわれには他社さんにない優位性があるんです。例えばオートタギングです。記事の分類や関連記事検索に役立つ機能ですが、他社さんはそれを手作業でやっているから即時性がない。

 例えば、蛯原友里さんの記事が出たとします。蛯原友里という名前だけではなく、エビちゃんみたいなニックネーム、関連する写真、プロフィールデータなど、蛯原友里を軸としてさまざまなクラスタリングを行う必要があるときに、一般にメディア側が属性情報を自身のデータベースからタグとして手入力しています。しかし、TAGGYの技術なら自動でタグ付けします。TAGGYはレコメンデーションのアルゴリズムに加えて、クロールしてとってきた情報を解析して瞬時にタグ付けできるからです。


小川氏
 なるほど。


石上氏
 だからTAGGYは業界初のリアルタイムアフィニティエンジン&レコメンデーションエンジンでもあるんですよ。

 サイト内の情報を類似性によってリアルタイムに分類するし、情報と情報だけでなく情報と人、人と人とをサイト内でリアルタイムにつなげることもできます。クロール、タグの抽出、言葉同士の関連とシソーラス分類。この三つの特質がTAGGYと他社さんのレコメンサービスの差別要因になっていると思います。


小川氏
 しかしレコメンデーション市場はプレーヤーが多い割には大きな市場ではないですよね。


石上氏
 将来は分かりませんが今はまだ小さい。せいぜい20億~30億円の市場です。ニーズがあるからお答えしているけれど、TAGGYにとって主要なマーケットではないかもしれないです。そもそもわれわれは、明日のWebをよりよくする、Webを整理整頓する、というモットーで仕事をしていますが、それをマネタイズするためには、どうWebをよくするのか、というときに、マーケティング視点で考えていくべきと思っています。レコメンデーションはマーケティング上のサイト最適化技術の一つにすぎない、だから検索やデータマイニングなどを含めて多面的なソリューション提供をしていきます。


タギング技術で新しいアドネットワークサービスモデルへ

小川氏
 客単価をあげていくにはそれしかないですね。


石上氏
 2015年にネット広告が1兆円市場になるという予測もありますし、その1%を狙いたいですね。そのために広告のマッチングサービスも考えています。


小川氏
 それはアドネットワーク化するということですか?


石上氏
 そうです。

 TAGGYほどタグを抽出して収集している会社は国内ではないので差別化要因になります。タグ化を完了すれば、それからが新しいビジネスになると考えていて、その一つが広告のマッチングサービスです。ユーザーが訪問したサイトの記事に関連するタグを自動で付与して、より深い嗜好(しこう)性抽出による次世代行動ターゲティングへつなげられると考えています。同時に、広告側のデータもクロールして細分化して、あらかじめタグ化しておくことで、より細かくホットなアドをマッチングできるはずです。現在テストマーケティング中ですが、世界に通じるビジネスモデルになるはずです。ある広告代理店と共同で研究中です。


小川氏
 なるほど。


石上氏
 同時に、コンテンツの死蔵コンテンツのリサイクルサービスも考えています。メディアには死蔵してるコンテンツがたくさんありますが、似た者同士をたばねてあげると、新しいコンテンツができあがります。


景気の上向きに乗じて資金調達中

小川氏
 すべてを実現するには、それなりに資金がいりますね。


石上氏
 そうですね、いま調達に動いています。不景気もやや底打ち感があるし、金融の引き締めがユルくなった気がしていますので、資金調達にはいい時期になったかもしれません。
 VCさんも慎重さは保ちつつも、いまお金を使わなければいつ使う、と思ったのでは? ベンチャー側も企業価値を吹っかけたりできないですしね、今は。


小川氏
 モディファイは昨年の6月に第三者割当増資をしましたが、うちもいろいろと開発コストがかかるので、そろそろ真剣に次のラウンドを考えなければと思っているところです。


石上氏
 より大きなパイを狙わないと投資家にも評価されないですしね。

 通常のメディアやECだけでなく金融のオンライントレードなども潜在顧客になるかもしれないです。金のにおいがするビッグポケットをあたらないと(笑)。


小川氏
 うちもほんとに石上さんのおっしゃるアプローチに似てますよ。TwitterクローンといるSMARTも、ソーシャルメディアマーケティングの支援ツールとして作っているSM3も、すべてMODIPHI IIというスマートクローラーと検索技術をベースとしたエンジンのユースケースです。特に、TAGGYがアドネットワークならSM3はSP(販促プロモーション)ネットワークを志向していますし。


石上氏
 いや、ほんとにわれわれは似た者同士なんですよ。技術が好きだけどマーケティング視点でモノを考える、ビジネスプロデューサーなんです。


小川氏
 そうですね。TAGGYは4期目、うちはまだ2期目なんで、離されないようについていきますよ(笑)。

 今日はありがとうございました。





小川 浩(おがわ ひろし)
株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコ ラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス 「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用 して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス) などがある。

2009/6/23/ 09:00