【Kaspersky本社レポート】「選んだ市場で2014年までにナンバーワンを獲得する」

コーポレートビジネス部門担当副社長が話す、企業向け重点施策

 ロシアのKaspersky Lab(以下、Kaspersky)は、主にビジョンやビジネス面での戦略を伝えるため、プレスイベント「New Horizon」を本社のあるモスクワで開催した。ブヤーキンCOOが全社としての戦略を説明したのに続き、コーポレートビジネス部門担当副社長のキース・マスケル氏は、「2012年からの3年において、当社の選択した領域で、なるべく早いうちにグローバルでのナンバーワンを取る」と述べ、同社の企業向けビジネス戦略を説明している。


オープンシステムにビジネスチャンスがある

ロシアKaspersky Lab コーポレートビジネス部門担当副社長のキース・マスケル氏
競合とKasperskyのビジネスの違い

 オープンシステムはさまざまなメリットを企業にもたらすが、データの損失やマルウェアといったITリスクが常につきまとう。もちろん、Microsoftのようなプラットフォームベンダーでも自社製品向けにはセキュリティ製品を提供しているものの、企業で利用されているプラットフォームは1つではないため、他社のものまではカバーしきれない。さらに、多くの顧客はプラットフォームベンダーではなく、独立したベンダーからセキュリティソリューションを購入したいと希望しているという。ここに、Kasperskyのような、セキュリティベンダーのビジネスチャンスがある。

 また、すでに多くの企業がこのセキュリティ領域でビジネスを行っているが、マスケル氏は「膨大で複雑な製品リストを持つほか、買収によってポートフォリオを拡大しているため、それらを統合するか、といった課題を持っている」と、競合となる企業の問題点を指摘。「それに対して当社では、製品リストは明確であるし、すべてのソフトを内製しているがゆえに、当社の成長はすべて有機的なもの。複雑になりすぎた他社製品に対し、明確な管理が可能な当社製品は良い代替手段となり得る」と、強調する。

 販売についても、直販を行っていない同社にとって、販売の上でパートナー企業がとても重要な役割を担うという点を重く考えているという。そのため、「競合ではビジネスパートナーにすぎないが、当社にとってはファミリー。利益をきちんと配分する」との姿勢を打ち出し、ともに成長していけるとアピールした。

 製品の中核としては、エンドポイントセキュリティをフォーカスすべき点として挙げる。ここはとりわけ、多くのベンダー、製品がある激戦領域ではあるが、ワールドワイドでの企業向けエンドポイントセキュリティ市場(2008年のIDC調査)では、Kasperskyのシェアは4.7%で5位に過ぎず、まだまだ伸びる余地があるからだ。その中でも、今後はアンチマルウェア製品単体でなく、セキュリティスイートやその他のエンドポイントセキュリティ製品が伸びると予測されており、こういった市場ニーズに応えるため、KasperskyでもDLP、暗号化などの機能を開発。スイートとしての提供体制を整えてきている。またそれ以外の分野では、マスケル氏はメッセージングセキュリティ市場でのSaaS、Webセキュリティ市場でのソフトウェアとSaaSといったところを挙げた。

 では、これらの製品・サービスをどうやって市場に提供するのか。マスケル氏はこの点について、オンプレミスやクラウドサービスの両形態を、市場の規模やニーズにあわせて柔軟に組み合わせて提供できるようにするとの戦略を示す。そして、これを実現するために製品、サービスのラインアップを増やしていくこと、またレベルの異なる2つのSLAを提供することなどを話し、そのロードマップを提示している。

オンプレミス、クラウドを問わずさまざまな製品・サービスを提供し、幅広いニーズに応えていく今後の製品ロードマップ2つのレベルのSLA提供を計画する





(石井 一志)

2010/1/8/ 00:00