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企業ユーザーにもブレイクするか?「ビジネスブログ」【前編】

社内コミュニケーションツールとしての可能性

 個人ユーザーの間で日記や情報発信などのツールとして急速に広まりつつあるブログを、法人向けにビジネスブログとして活用しようという動きが強まっている。ブログ構築ソフトの元祖ともいえる「Movable Type」を開発した米Six apartの日本法人シックス・アパートは、Movable Typeの法人向けパッケージをソフトバンクBB経由で年内に出荷すると10月に発表した。またブログを利用した社外向けWebサイトや社内コミュニケーションツールの構築サービスの提供が各社からアナウンスされている。

 果たしてビジネスブログにはどのような特徴があるのだろうか。既存のWebやメールなどのツールと何が違うのだろうか。前編では社外向け・社内向けブログの活用法と従来のツールとの違いを探ってみた。


「社長日記」以外にも利用拡大

日立「BOXERBLOG」のWebサイト。見た目は普通のページと変わらないが、ブログのエンジンで作成されている
 ビジネス用途のブログとして有名なのが、社長日記に代表される会社や商品認知を目的としたものだ。最近ではeコマースやプロモーションサイトにブログを利用する例も増えている。その多くは読み手のブログとリンクするトラックバックを許可し、ネット上における口コミの広がりを狙ったものだ。また、記事に対するコメントを許可しフィードバックを収集するツールとして活用するブログもある。これらは基本的にコンシューマユーザーを対象とした例だが、今後も増加が見込まれる。

 また、Webサイトの更新作業を簡素化することもブログを導入するメリットの一つだ。これは日々更新される情報がページの上部にくる典型的なブログ形式だけではなく、見た目ではブログとはわからないページにすることも可能だ。日立製作所コラボレーションウェア設計部BOXERビジネスグループ部長代理の小川浩氏は「従来のページデザインをほとんど変えずにページ作成システムだけをブログ化し、HTMLを意識することなく容易に更新することも可能」と話す。

 このように社外向けページにおいて、ブログにはビジネス用途でもさまざまな活用方法がある。だが「問い合わせは社外向けより社内向けシステムの方が多い」と小川氏は言う。


「情報を蓄積し再利用できる」社内向けブログの強み

シックス・アパート 代表取締役 関信彦氏
 従来の社内コミュニケーションツールとしてはメールや掲示板、IM(インスタントメッセージ)などがある。また、これらの機能を統合したグループウェアも広く利用されている。

 シックス・アパート代表取締役の関信彦氏は、従来のツールにはない社内向けブログの特徴として「個人が軸となっているため、ほかのどの話題にも属さない情報やアイデアを書き込みやすく、それらを蓄積して再利用することができる」と説明する。

 例えば掲示板は、あらかじめ決められた話題以外の書き込みは読み手に不快な思いをさせる恐れがあるため、必然的に書き込まれる情報は制限される。またメールは、送信する相手を選ぶか関係する人全員に送ることになるが、情報管理が各人に委ねられるため非効率的でばらつきもでる。さらに受信するメールの増加やスパム・ウイルスの問題もあり、情報の共有手段として適当ではない。

 その点ブログは個人が主体となっており、掲示板における話の流れやメールにおける返信の必要性を意識することもないため、どのような情報でも書き込みやすい。また書き込んだ情報はXML形式でデータベースに蓄積されるため、後で検索して容易に取り出すことができる。

 さらに部門内や他部門の人のブログを参照できるようにすれば、過去の情報から知りたい情報を検索して再利用したり、トラックバックやコメント機能を利用して話題を横に広げることができる。幾重にもフィルタリングされ定型化された社内文書よりも、多くの人の知識を盛り込んだ深い情報を、迅速に得ることができることもある。

 ただし、これらは従業員が積極的にブログを書き込んだ場合の話だ。関氏は「ブログの導入において難しいのは、システムの導入ではなくブログを書いてもらうこと」と話す。ほとんど場合、従業員のうち好んで情報発信する人は少なく「通常は数%」だという。そこで、ブログに書き込んでもらう仕組みが必要となる。

 これを解決する方法として関氏が挙げるのが、ブログを日報形式にして義務化することだ。日報はほとんどの場合メールなどで上司に提出される。上司は確認を行うが、ここで多くの情報がフィルタリングされてしまい、それ以外の人が目にすることはない。そこでブログに書き込むことで内容を蓄積し、上司以外の人も参照できるようにする。例えばある顧客と過去にどんな取引やコンタクトがあったかを調べ、営業に役立てることができる。仮に当時担当した人が退社していても情報は残るわけだ。

 後編はブログのもう一つの特徴であるRSSの活用法と導入の進め方を、日立の「BOXERBLOG」を例に取り上げる。



URL
  株式会社シックス・アパート
  http://www.sixapart.jp/
  BOXERBLOG
  http://boxer.ne.jp/

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( 朝夷 剛士 )
2004/11/26 00:00

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