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“ブログを新たなビジネスツールに”日立とカレンに聞く


 株式会社日立製作所と株式会社カレンは、ブログを使ったBtoCマーケティングの支援サービスで協業する方針を、3月に明らかにした。ビジネス用途で利用が拡大している日立のブログシステム「BOXERBLOG」をベースに、カレンのマーケティングに関するノウハウを生かして、ブランドの確立や商品の購買意欲を促進するブログサイトの構築と運営を支援する。

 個人でも手軽に情報発信できるツールとして定着しつつあるブログだが、これをどのようにしてビジネスに活用していくのか。日立製作所コラボレーションウェア設計部 BOXERビジネスグループ部長代理の小川浩氏と、カレン広報室長の四家正紀氏に聞いた。


日立製作所 コラボレーションウェア設計部 BOXERビジネスグループ 部長代理 小川浩氏 カレン 広報室長 四家正紀氏

ブログだからこそできる顧客の囲い込み

日産自動車の「TIIDA BLOG」。ブログを持つ読者も集まり、トラックバックされることが多い

味の素「マヤヤのお料理ABC」。おもに主婦のユーザーを集め、ブランドを高める(ファンになってもらう)ことを目的としている
-今回、ブログを使ったBtoCマーケティングの支援サービスを提供されるとのことだが、具体的な内容はどのようなものか?

小川氏
 日立のBOXERBLOGを使い、カレンがマーケティングのノウハウを生かして、集客や販売につながるブログサイトの構築や運営サービスを提供する。これまで両社は、味の素の「マヤヤのお料理ABC」や、日産自動車の「TIIDA BLOG」などで実績を積んできており、今回正式にパートナーシップを結ぶことになった。

四家氏
 カレンは、CMなどの広告から、店舗への来店や商談などの営業の間で「もうひと押しすれば売れる」状態にもっていく“プレセールスコミュニケーション”を行っている。従来のメールやDM、テレセールスなどの手法も利用しているが、ブログはこれに適したツール、つまり「モノを売るための道具」と見ている。

-ブログというと日記という印象が強いが、セールスツールとなりうる理由とは?

四家氏
 更新が容易で常に新しい情報を提供しやすいから、継続的な読者を獲得することができる。情報が網羅されているカタログや、それを模したWebサイトは、1度見ても、2度3度見ることはあまりない。また、ブログではカタログ的なWebサイトに比べて親しみやすさがあり「ここがオススメですよ」のような営業トークが可能で、次のアクションにつなげることができる。

 例えばTIIDA BLOGの場合、ページのサイドや記事の最後に試乗予約やカタログ請求へのリンクが置かれているが、あまり主張はしないような控えめな大きさにしており、記事を見て気になった人だけが次のステップに進んでくれればいいと考えている。とにかく大人数を集めるのではなく、顧客の最適化を図ることができる。

-メールマーケティングとの違いは何か?

四家氏
 誰でも参照してもらうことができ、メールアドレスなど個人情報を取得せずにメールと同等の顧客を囲い込むことができる。また、トラックバックやコメントを通じて、読者が気持ちや考えを共有できるコミュニティを形成することができる。例えば営業マンがいくつもの特長をアピールしても動かなかった気持ちが、第三者の「あ、私もこれ気に入っているよ」とのひと言で動くことがある。掲示板でもコミュニティの形成は可能だが、話題のコントロールが難しく荒れる可能性も高いため、企業で運営するのは難しいが、ブログは記事が話題を主導するので、その心配も少ない。

 ただし、メールマーケティングで可能な顧客のターゲティングや、履歴を追うことなどはできない。メールマーケティングは、顧客の購入履歴やアンケート結果などを踏まえた複雑な手法で何とおりも用意した中から最適なものを送るなど、芸のあるものでなければ効果は薄くなりつつある。


個人と企業の両方で利用され、応用が生まれる

-メールはプッシュ型メディアだが、ブログでプッシュ型を実現するRSSはどう見ているか?

四家氏
 現状では、RSSリーダーの利用率はまだ低い。誰でも使える環境が整えば活用したいし、日立の技術を利用することも考えている。

小川氏
 RSSは、まず企業のイントラネット内で利用すれば、その価値を実感してもらえると考えている。日立では、BOXERBLOGや「Sonar」というRSSを利用した社内情報共有ソリューションを提供しているが、これらを使えば、メールや掲示板でできなかった社内情報の発信や共有、管理などを最適化することができる。

四家氏
 個人でRSSリーダーの利用を広めるには時間がかかるが、企業内で「情報管理ツールとして利用するように」といえば、その企業内で100%使われる。そこで用途による向き不向きなどノウハウをため、マーケティングにも生かすことができる。

-ブログやRSSリーダーを社内業務で使うとは、なかなか想像しにくいが?

小川氏
 例えばPCやOfficeソフトなども最初は個人向けに作られ、「ビジネスにも使えるかも」という発想から企業に入った経緯がある。コンシューマツールが企業で使われると見方も変わり、ビジネスツールとして最適化されるようになる。さらにこれを家庭にも持ち帰って使いたい、といった流れができ、互いの用途で影響しあいながら応用が生まれ、ノウハウが蓄積されていく。

 ブログは従来のWebと違い、構造的なXHTMLで構成されていることから「Web 2.0」ともいわれている。企業内外を問わずコンテンツとシステム両方に最適化された新しいツールになると確信している。



URL
  株式会社日立製作所 BOXERBLOG
  http://portal.boxer.ne.jp/
  株式会社カレン
  http://www.current.co.jp/
  日産自動車 TIIDA BLOG
  http://blog.nissan.co.jp/tiida/
  マヤヤのお料理ABC
  http://cook.ajinomoto.co.jp/

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( 朝夷 剛士 )
2005/03/16 10:59

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