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ビジネスモバイル市場、「成長の鍵はPDA」?


FOMA M1000
 2005年はじめ、ソニーが「CLIE」の生産停止を発表し、事実上国内PDA市場から撤退した。現在ではシャープや日本HP、デルなどが生産を続けているが、かつて期待されていたものとは程遠い市場規模となっている。

 しかし、ここにきてNTTドコモの「FOMA M1000」の発表がビジネスパーソンや企業ユーザーらを中心に大きな反響を呼び、au・ボーダフォンら各キャリアからも携帯電話を使ったビジネスソリューションが相次いで発表されるなど、PC以外のモバイル市場が活発化しようとしている。


盗難・紛失対策は「リモートからデータ消去」で解決

 企業ユーザーが、モバイル端末に注目している理由の1つに、個人情報保護法が関係しているようだ。ノートPCなどモバイル端末の盗難・紛失によるデータの漏えいが問題化し、これらの運用方法の見直しが迫られている。管理側としては、必要最低限の情報だけ外部への持ち出しを許可し、万が一端末を紛失するようなことがあっても、他人にデータを見られることがないようにしてもらいたいと考えるだろう。

 そこで各キャリアは、携帯電話内のデータをリモートから消去することを可能とし、万が一の盗難・紛失から機密情報を守る法人向けソリューションをそろえた。はじめはauのBREWアプリからはじまり、現在ではNTTドコモのiアプリ、ボーダフォンのVアプリも対応している。消去することができるデータは、基本的にiアプリ・Vアプリにおけるアプリケーション内のデータのみだが、一部のau端末やFOMA M1000などは基本機能の電話帳データにも対応する。


ようやく来た「モバイルのオープン化」

インテリシンク代表取締役社長 荒井真成氏

Vodafone 702NK
 これまでモバイル端末を使った業務ソリューションとしては、ノートPCのほかに、ハンディターミナルのような専用端末と、SIerらによる作り込みのアプリケーションといった組み合わせが、金融などの業界で利用されていた。しかし、インテリシンク代表取締役社長の荒井真成氏は「このマーケットは結局立ち上がらなかったと解釈している」と話す。

 IT化による業務効率アップを狙い、こうしたソリューションを導入したところもあったが、「横展開できなかった」(荒井氏)。つまり汎用性に欠けるため、ほかの関連業務と連携するなど拡張することが難しく、やろうとしてもコストがネックとなった。もともと“専用”であるため端末はPCと同じか、それ以上の値段になったりした。加えて紛失時の情報漏えい対策も考えなくてはならなくなった。こうした理由から、今後専用端末を使ったソリューションは伸びず、ハード・ソフトとも汎用的なプラットフォームが普及するという見通しだ。いわばモバイルにもようやくオープン化の波がやってくるともいえそうだ。

 モバイルのオープン化は業務ソリューションだけでなく、携帯電話のプラットフォームにも押し寄せている。先述のM1000やボーダフォンの「Vodafone 702NK(以下、702NK)」など、いくつもの携帯電話がOSにSymbianを採用している。SymbianはAPIが公開されているため、各ベンダーが携帯電話上で動作するアプリケーションを自由に作成することができる。すでにこうした端末上で利用可能なソリューションが、キャリアや各ベンダーから発表されており、単なる通話やメールにとどまらない携帯電話の利用が本格化しようとしている。

 また、まだ日本で製品化されていないが、Windowsにおいても携帯端末向けプラットフォーム「Windows Mobile」があり、欧米ではすでに利用が拡大している。国内においては、Officeファイルの閲覧やマルチメディア機能などに対応した最新版の「Windows Mobile 5.0」が8月に発表されており、これを搭載した端末が今年末から来年にも発売されるともいわれている。Windows Mobile 5.0は、開発環境がVisual Studio 2005と統合されるため、より活発なアプリケーション開発が期待できる。

 こうした従来の携帯電話にはとどまらない高機能な端末、「スマートフォン」の拡大が目前に迫っており、FOMA M1000や702NKはその先駆けともいえる。


市場拡大は端末次第、PDAのノウハウが鍵

 しかし荒井氏は、こうした端末に対し「まだまだ使い勝手がいいとはいえない」と話す。日本では携帯電話の機能は世界でも最先端に位置し成熟しつつあるといえるが、スマートフォンは逆にこれから市場が形成されていくものだ。欧米で利用が拡大しているとはいえ、日本語入力をはじめ求められる機能に大きな違いがある(FOMA M1000はモトローラ、702NKはノキア製)。

 そこで期待されるのが日本の携帯電話ベンダー。中でも「PDAの開発経験のあるベンダーは、そのノウハウをスマートフォンに生かせるはず」(荒井氏)。現在ではわずかなベンダーしかPDAの開発を続けていないが、実は携帯電話ベンダーの多くがPDAの開発経験を持っている。

 「現在、携帯電話の開発にキャリアが大きな影響力を持っているが、ベンダーが対等な立場となり、PDAの技術を融合できれば、きっといい端末ができる。逆にそういった端末が出てこないと、PDAのように市場が成長する機会を逸してしまうかもしれない」(荒井氏)。



URL
  インテリシンク株式会社
  http://www.intellisync.co.jp/
  関連記事:Symbian OSとは?(ケータイWatch)
  http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/keyword/12408.html

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( 朝夷 剛士 )
2005/09/22 08:56

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