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現場担当者が語る「グループウェアを使ってもらうノウハウ」とは?


 業務にITを取り入れ効率化を図る動きが強まる中、グループウェアの導入率が伸びており、複数の調査会社で、すでに50%を超えていると報告している。しかし、それらが活用され業務の効率化に貢献しているかというと、およそ半分は導入してみたものの何らかの理由で使われていないともいわれている。

 Web型グループウェア「desknet's」を開発・提供する株式会社ネオジャパンは、ユーザー企業の担当者ら3人をスピーカーとして招き、導入の経緯や苦労した点などを「あらかじめ決められたストーリーなしで」語るトークセッションを開催した。そこからは、社員にグループウェアを活用してもらうための現場のノウハウが、いくつも示された。


ビジネス翻訳業を営む株式会社サン・フレアの管理部情報システム課 課長 四戸充氏。自社サーバーにて運用 家電メーカーの株式会社テスコム業務改善推進部情報システム課主任小林利之氏。ホスティングサービスにて運用 情報通信サービス業のキズナジャパン代表取締役社長 高崎義一氏。ASPサービスを利用

自社サーバーでの運用とASP利用のメリット・デメリット

 参加したスピーカーらが運用するdesknet'sは、それぞれ利用者が多い順に「自社サーバー」「ホスティングサーバー」「ASPサービスを利用」という異なる形態で運用されている。

 人数が少ないから自社サーバーは使えないというわけではないが、キズナの高崎氏は「管理者や詳しい人がいない小さな会社はASPがいい」と強調していた。同社では以前に自前でWebサーバーやメールサーバーを運用していたが、そこが激しい攻撃に遭ってしまい対処できなかったという経験からASPを選択したという。また、「すぐに始められ、実際に運用してみて業務に合わなければすぐにやめることができる」こともASPを選択した理由だという。

 逆に自社サーバーを選択したサン・フレアの四戸氏は「グループウェアから社内情報が漏れることだけは避けなければならない」という大前提から自社サーバーを選択した。ASPやホスティングと比較して出張先や自宅からアクセスすることができないが「セキュリティと便利さのトレードオフ」のもと、割り切ってセキュリティを優先したという。ただし今後はSSL-VPNなどの導入も検討しているとのことだ。

 セキュリティにおいては、機械的な側面もさることながら、人的な面での管理も重要だ。テスコムの小林氏は、desknet'sの利用方法とともに情報の取り扱いやモラルの教育を全国の従業員に実施し、以後新たに入社した社員にも欠かさず行っているという。さらに「機密情報を漏らしたら会社を辞めてもらう誓約書を書いてもらってからIDを発行する」という徹底ぶりだ。また、ホスティングサーバー上にあるdesknet'sとの通信はSSLによって暗号化している。

 ASPを利用するキズナも、アドレスがわかれば誰でも入口までたどり着けるという危険性をかんがみて、絶対に漏らしてはいけない情報はdesknet's上に置かないほか、「小規模企業だからお互いわかるため」登録するユーザー名に従業員の本名ではなくニックネームを使うという工夫をしているという。


社員全員にスケジュール管理機能を使ってもらう

トークセッションは2時間以上にわたり熱い議論が交わされた
 グループウェアにはさまざまな機能があり、desknet'sには合計20個以上も標準で備わっている。その中で3社が共通して利用していたのがスケジュール管理だ。特にキズナの高崎氏は「基本的にはスケジュールしか使っていない」という。そもそもdesknet'sを導入したきっかけも、社長である高崎氏の予定が誰もわからないと困るという意見からであった。PCがあまり得意ではない高崎氏は、はじめのうちはそれまでの習慣から手帳と併用して、うっかり登録を忘れることもあったが、出先から携帯電話から入力できるなどの機能を活用することでdesknet'sに移行し、ついに手帳を手放したという。

 サン・フレアやテスコムも「スケジュール管理をdesknet'sに一本化し、全員が使わないと意味がなくなる」ことから、自主的な移行を促した後、手帳を取り上げるなど強制的な移行も勧めた。こうしたことにエンドユーザーのとまどいもあるだろうが、予定時間前に携帯電話にアラームのメールを送るなど手帳にはない機能が徐々に浸透していき、移行に成功したという。「とにかく使ってもらい、便利なものだと認識してもらうことが大変だったが、大事」だとサン・フレアの四戸氏は話す。両社は、まず役員から導入し、便利で業務の効率化につながると理解してもらって徐々に購入するライセンスを増やす「トップダウン型」で広めた。

 サン・フレアでは、スケジュール管理以外で、稟議書のワークフローをdesknet's内に構築するという目的があった。業務に必要なものをすぐに買いたいのだが、稟議書の行方がわからないという問題を解決するためだ。テスコムも同様にワークフローの構築がグループウェア導入の目的の1つであり、この機能が標準で備わっていたことが決め手でdesknet'sを選択したという。


多機能だけではなく、全員が利用できる機能を重視

 ただし機能がたくさん備わっていればいいかというとそうでもなく、実際に利用している機能は多くても全体の半分程度だという。テスコムの小林氏は「たくさんあると逆に使いづらいので、はじめは2,3個に絞って、後は使えないようにした方が使いやすい。慣れてきたら徐々に増やしていって10個くらい使うようになった」と話す。また、「全員が使う機能と、そうでない機能を明確に分けた」という。例えば図面など容量の大きいデータのやりとりをする部門では、サーバーの負荷が大きくなるからメール機能の利用を禁止した。

 小林氏は、運用にあたって「ルール付けの徹底」が大事だと強調する。スケジュール管理やワークフローなど一本化した業務は必ず利用してもらい、グループウェア上で共有する情報の取り扱い、さらに管理において退社した社員のID破棄やパスワードの変更などを挙げ、これらのルールを守ることがグループウェアを運用していく上で最も大事であることとした。

 また、社員にはITに詳しい人から、あまり得意ではなく積極的に利用したがらない人まで、さまざまな人がいるが「一人でも使わない人がいると、情報が滞ってしまい活用することができない」。管理者は視点をあまり利用したがらない人に合わせて、どのようにすればそういった人たちも利用できるかを考えた導入・運用をすべきとした。



URL
  株式会社ネオジャパン
  http://www.neo.co.jp/
  desknet's製品情報
  http://www.desknets.com/


( 朝夷 剛士 )
2005/10/21 11:30

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