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エンタープライズにフォーカスした「Office 2007」




 the 2007 Microsoft Office system(以下、Office 2007)のベータ2が5月24日にダウンロード可能になった。今回のOffice 2007は、表計算やワープロなどのスイートソフトとしての機能アップも行われているが、もっとも充実しているのが、サーバー側の機能だ。以前のバージョンでもOffice systemという名称でクライアント/サーバーのシステムとして打ち出してはいた。しかし、個々のサーバーソフトのコンセプトが明確でなかったり、機能が中途半端だったりしたため、それほど普及しているというわけではなかった。マイクロソフトでは、Office 2003の反省を踏まえて、サーバー側コンポーネントの整理と改良をOffice 2007で行っている。先日行われた記者説明会を中心に、Office 2007のサーバー側の機能を紹介する。


新しい仕事環境を実現するOffice 2007

 「Office 2007は、『組織を超えた作業の簡素化(One World of Business)』、『情報発見とビジネス対応力の強化(Always On、Always Connected)』、『コンテンツのセキュリティと管理(Transparent Organizations)』の3つにポイントを置いて開発がされています。これにより、『新しい仕事環境(New World of Work)』を実現するのです。『Office 2007』は、インフォメーションワーカーの生産性に貢献する豊富なデスクトップ製品と、高度なコミュニケーション、コラボレーションを支える基盤としてのサーバー製品、さらに柔軟な利用形態に対応できるサービスからなる、一連のシステムに成長しています」と同社インフォメーションワーカービジネス本部の横井伸好本部長は語っている。


Office 2007のコンセプト。インフォメーションワーカーの生産性をアップするための機能が用意されている Office 2007の構成コンポーネント。Officeは、表計算やワープロなどのスイートソフトではなく、サーバーコンポーネントとクライアントソフトが組み合わされたOffice systemへと進化している Office 2007のリリーススケジュール。Exchange 2007は、Office 2007と同じタイミングというわけではなさそうだ。また、Ofifce Communication Serverなどは、次バージョンでOffice 2007と融合していくのだろう

 「パソコンが普及して、インターネット、イントラネット、エクストラネットへと進化していく中で、企業の内部においては、ERPやデータウェアハウス、サプライチェーン、CRMなどデータベースをベースとした数値情報、定型情報などは整備されてきました。しかし、Webやドキュメント、電子メールなどの非定型情報に関しては、それぞれのパソコンにローカルで蓄積されたり、ファイルサーバーなどに蓄積されたりしてきました。このため、統合的に検索したり、再利用を簡単にできるようにはなっていませんでした。そこで、Office 2007では、非定型情報と定型情報を一元的に扱い、必要な情報を必要なときに、どこからでも迅速に入手して、処理、判断することができるように各サーバー・コンポーネントが設計されています。また、Office 2007ではマイクロソフトが開発したコンテンツ管理システムを基盤にしてシステム開発がされているため、電子メールのExchange 2007やOutlook 2007などと連携することで、今後企業において必要とされるセキュリティ対策、コンプライアンス遵守という日本版SOX法への対応も非常に簡単に行えます」と同社インフォメーションワーカービジネス本部IWソリューションマーケティンググループの細井智マネージャーは語っている。


Office 2007の中核となるSharePoint Server 2007

 Office 2007のサーバーコンポーネントにおいて中核をなすのが、SharePoint Server 2007だ。

 「以前のSharePoint Portal Server 2003は、SharePoint Serviceを統合するようなイントラネット向けのサーバーソフトで、SharePoint Serviceを管理するような機能が中心でした。今回のSharePoint Server 2007では、単なるイントラネット向けの統合管理ソフトではなく、根本的に機能を洗いなおしています」(同社インフォメーションワーカービジネス本部IWソリューションマーケティンググループの昇塚淑子エグゼクティブプロダクトマネージャー)

 SharePoint Serverは、ある意味Office 2007のサーバーコンポーネントの中核をなしている。例えば、Project ServerやForms Service、Business ScoreCard Manager、Excel Service、コンテンツ管理ソフトは、SharePoint Server上で動作することになる。このため、Office 2007でサーバーコンポーネントを利用するには、SharePoint Serverが必要になる。また、Office 2007でも、SharePoint Serviceは提供される。SharePoint Serviceは、SharePoint Serverが提供しているさまざまな機能の基盤となるAPIは提供しているが、SharePoint Serverのようにインターフェイスがないため、ユーザーやシステムインテグレータ(SI)が、プログラムを組む必要がある。


 SharePoint Serverは、組織内と組織を越えたコラボレーションを可能とするコラボレーションプラットフォームとして機能強化されている。また、広範囲なコンテンツ・プロセス管理プラットフォーム、業務プロセスと意思決定を支援するビジネスソリューションプラットフォーム(業務アプリケーションとのシームレスな連携、情報の可視化による的確な意思決定を支援)というコンセプトで開発されている。

 ある意味SharePoint Serverは、企業におけるECM(Enterprise Content Managerment)のベースとなるものだ。SharePoint Serverにさまざまなオプションソフトウェアを導入し、SDKを使って自社だけのシステムにカスタマイズすることも非常に簡単にできるだろう。


SharePoint Serverの設計思想。企業における仕事環境の共通基盤となるように考えられている
SharePoint Portal Server 2003とSharePoint Server 2007の大きな違いは、インフォメーションワーカーのプラットフォームとなっていることだ
SharePoint Server 2007の機能は、これらの6つに大別される

SharePoint Serverの機能を大別すれば、

  • コラボレーション
  • ポータル
  • 検索
  • ビジネスデータカタログ
  • エンタープライズ・コンテンツ管理
  • ビジネスプロセス
  • ビジネスインテリジェンス
といった7つの特徴がある。


PowerPointを個々のスライドとして保存しておき、自由に組み合わせて、1つのPowerPointファイルが簡単に作れる

・コラボレーション
 SharePoint Portal Server 2003では、個人が情報を提供するには、テンプレートを使ってきちんとした形で情報を書き込む必要があった。しかし、SharePoint Server 2007では、ブログやWikiなどのテンプレートが用意されている。このため、ユーザーにとっては、気軽に、日記を書くのと同じような感覚で情報をアップしていける。もちろん、以前のバージョンにあったディスカッションやアンケート機能などは強化されている。

 もう一つ注目なのは、「リスト・ドキュメントライブラリ」の機能強化だ。以前のバージョンでは、ファイル単位でアップして、管理されていた。しかし、新バージョンでは、ファイル・アイテム単位で管理できるようになっている。例えば、PowerPointのスライドを1枚1枚アップしておけば、ユーザーが自由にスライドを組み合わせて、新しいプレゼンテーションを作ることができる。また、ファイル・アイテム単位でセキュリティ設定ができるようになっているため、非常に細かにファイルアクセスが設定できる。管理をしやすくするディレクトリサービスとしては、Active Directoryだけでなく、LDAPも利用できるようになっている。

 SharePoint Serverへのファイルのアップは、以前のバージョンと同じようにWebサイト経由だけでなく、Office 2007のクライアントソフトからより簡単にアップすることができるようになっている。さらに、Outlookの連絡先、予定表、タスクなどを双方向で同期できるようになっている。

 リスト・ドキュメントライブラリでは、ファイルのバージョン管理機能が強化されている。メジャーバージョンだけでなく、マイナーバージョンをつけて管理することができるようになった。

 新しい機能としては、プロジェクト管理機能として、ガントチャートにより一目でプロジェクトのスケジュール管理が行える。ただし、Lite版のため、Project Serverのようにスケジュールのディレイや変更など細かなことはできない。単にガントチャートでプロジェクトが表示されるだけだ。

 SharePoint Serverでは、ファイルや情報のアップデートは、メールだけでなく、RSSを使って配信される。このため、RSS配信をサポートしたOutlook 2007で簡単に確認することができる。


SharePoint Serverでは、データのバージョン履歴がメジャーだけでなく、マイナーバージョンも管理できる SharePoint Serverでもガントチャートが表示できる IRMを使えば、アイテムごとに権限が設定できる。ユーザーによってはファイル名を見せなくすることもできる

SharePoint Serverのトップ画面。さまざまなWebパーツにより、自由に画面設計ができる

・ポータル
 ポータル機能としては、今まであったWebパーツのインターフェイスが改良され、パーツ自体の数も増えている。以前のSharePoint Portalでは、いくつかの場面でユーザーインターフェイス(UI)が違っていた。しかし、SharePoint Serverでは、全体でUIを見直し、一貫したUIとなっている。また、ソーシャルネットワーク機能により参加者を親密度レベルでグループ化することが可能。さらに、SharePoint Server上に構築する個人サイトはプライバシーが強化されている。



・検索
 SharePoint Serverで用意されている検索は、Windows Vista、MSN Searchなどで使われている検索エンジンが使われている。ただし、MSN Searchと同じものが使われているのではなく、企業内でのドキュメントの検索などにランキングなどがチューニングされている。また、検索エンジンではデータをクロールしてインデックスに登録していく。このときに、クロールのパフォーマンスをアップして、システムに負荷がそれほどかからないように作られている。また、WordやExcelなどのOfficeドキュメントだけでなく、フィルタを追加することで、PDFや一太郎のドキュメントもクロールすることができる。

 SharePoint Serverの検索エンジンは、SharePoint Server内部だけでなく、Exchange Server、SharePoint Service、ファイルサーバー、Notes/Domino、インターネットのWebサイトなども検索することができる。

 検索結果の表示に関しても、検索キーワードのハイライト、類似結果の折りたたみ表示によりわかりやすく表示されている。


SharePoint Serverの検索は、MSN Searchでも使われている検索エンジンだ
検索結果は、キーワードが反転して表示されるため、非常にわかりやすい

ビジネスデータカタログは、データベースとSharePoint Serverを融合している

・ビジネスデータカタログ
 もっとも注目されるのは、バックエンドにあるデータベースに簡単にアクセスして、データを表示する「ビジネスデータカタログ」機能だ。この機能は、難しい設定の必要がないコネクタにより、SAPシステムやSiebelシステムのデータにアクセスしやすくなっている。ビジネスデータカタログでは、Webパーツ、リスト、人材プロファイル、および検索を介して業務アプリケーションのデータベースにSharePointから簡単にアクセスできる。便利なのは、検索文としてSQL文などを使わなくても、簡単に検索してデータを表示することができる。これなら、専門家でなくても、バックエンドのデータベースからリアルタイムにデータを引っ張ってきて、ポータルに表示することができる。



・エンタープライズ・コンテンツ管理
 SharePoint Serverでは、Windows Vistaで搭載されるWindows Workflow Foundationを基盤としている(SharePoint Serverインストール時にWorkflow Foundationもインストールされる)。このため、SharePoint Serverでワークフローを構築することができる。例えば、稟議書のテンプレートを使って、Wordで文書を作り、SharePoint Serverにアップすれば、決められたワークフローにしたがって、上司に連絡が行き、承認してもらわなければ、文書が経理に回らないような流れを簡単に作ることができる。

 また、SharePoint ServerのベースにInformation Rights Management(IRM)が用意されているため、文書のセキュリティなど、非常に細かに設定することができる。例えば、あるユーザーは、オンラインで文書を見ることはできるが、変更やコピー、印刷などができなかったり設定することができる。


ドキュメントやメールのセキュリティを設定するInformation Rights Management(IRM)がSharePoint Serverのベースに入っている SharePoint Serverの構成図。Windows Server 2003上にWorkFlow Foundationが新たに必要になる(同時にインストールされる)

SharePoint Serverで追加されたWorkFlow機能を使えば、申請書を決められた人に回して承認をえるようなフローが簡単に作れる
ワークフローを設定するのも画面で簡単にできる
IRMを使って、ユーザーごとに権限が設定できる。この画面は、書き込みが制限されていることをあらわしている

SharePoint Server上にForms Serviceを搭載することで、InfoPathを使わなくてもWeb画面でデータ入力ができる

・ビジネスプロセス
 SharePoint Serverは、Forms Serviceを利用して、データ入力のフォームを作ることができる。このサービスを利用すれば、InfoPathでデザインされたフォームをWebブラウザで入力することができる。さらに、InfoPathで作成されるため、データはXMLで作られる。SharePoint Serverのワークフローと組み合わせれば、データの入力から各種データの処理まで、一連の流れをSharePoint Serverで構築することができる。もちろん、バックエンドのデータベースと連携したり、Webサービスを使用してフォームベースのビジネスプロセスを構築し、バックエンドシステムと連携させることもできる。


クライアントにInfoPathを使えば、データの入力画面がこのように表示される Forms Serviceを使えば、InfoPathがなくてもWebブラウザでデータ入力が可能 IE以外のWebブラウザ(Mozilla)でも同じような画面で入力できる

Excel Serviceは、Excelの計算部分をサーバー上に持ってくる。これにより、Webサービス経由で高度なデータ操作ができる

・ビジネスインテリジェンス
 SharePoint Serverには、Excel Serviceが用意されている。Excel Serviceは、Webサービスを介して、他のアプリケーションから、Excel 2007のロジックにアクセスして、処理をさせることができる。これにより、プログラムで組むには複雑な計算処理をExcelのマクロなどで簡単に組むことができる。

 また、多数のダッシュボードコンポーネント、WebコンポーネントがSharePoint Serverには用意されている。KPI Webパーツを利用したBIダッシュボードなども簡単に作り上げることができる。これらのWebコンポーネントやダッシュボードを利用すれば、各種の情報をわかりやすく図やグラフにして、表示することができる。例えば、売り上げの比較などを、単に数字で表すのではなく、前月、前年同月、地域などにカテゴライズして、グラフやエリアマップで表示することができるため、さまざまな意思決定が行いやすくなる。


SharePoint Serverに追加されたビジネスインテリジェンスのダッシュボード画面。このようにわかりやすい画面で表示される Excelの計算機能をサーバーで処理するExcel Service

新たな機能を提供するGroove 2007

Grooveのワークスペース画面

Grooveの設定画面。このように、フォームをカスタマイズすることができる
 昨年Microsoftが買収したGroove Networks社がリリースしていたP2Pソフト「Groove(グルーブ)」をベースにして、Office 2007と連携するように改良されている。

 Grooveは、P2Pソフトと評されることが多いが、日本で話題になっているWinnyなどとはまったく種類の異なるP2Pソフトだ(テクノロジーとしてP2Pが利用されているだけ)。現在のビジネス環境を考えると、社内だけでなく、社外のさまざまな人々と、データを共有してビジネスを進めていく必要がある。しかし、インターネットで接続されたパブリックな環境を考えると、社内とインターネットの間にはファイアウォールがあったり、さまざまなセキュリティ手段が講じられているため、メールや外部のパブリックなファイルサービスを利用する以外に、大量のデータを送信するすべはなかった。

 そこで、GrooveはP2Pテクノロジーを利用して、社内のネットワークを越えた、インターネット上のユーザーともデータを共有できるシステムが構築されている。ユーザーは、インターネット、イントラネットのどこにいようとも、Grooveのワークスペースを共有することができる。Grooveで便利なのは、P2Pテクノロジーを利用しているため、Grooveを起動しておけば、自動的にデータのアップデートが行われる。このため、ユーザーは、データ転送を意図的に意識する必要はない。Grooveのシステムを利用すれば、メールでは送りにくい、データ量の大きいCADデータや高解像度の写真などを簡単に転送できる。

 Grooveでは、データ共有以外に、ディスカッション、予定表、メモ、会議の議事録、スケッチパッド、フォーム、案件管理などが共有できる。これらの機能のうちいくつかは、SharePoint Serverとダブっている。MicrosoftがGrooveを買収してから改良したのが、ダブった機能をうまく使って、SharePoint ServerとGrooveとでデータの同期が行えるようにした点。これにより、Grooveで共同作業を行い、ある程度完成したら、SharePoint Serverにアップロードして、全社的に公開することが可能だ。


Groove 2007の機能概要
Groove 2007のワークスペース画面
Groove 2007でのセキュリティ

 これ以外にも、InfoPathのフォームをGrooveのフォームとして利用可能になっていたり、GrooveからOffice Communicator(IM)の機能を利用して、Grooveを起動していないユーザー同士間でもコミュニケーションをすることができる。

 Grooveは、P2Pテクノロジーを利用しているため、企業によっては、セキュリティに不安を感じるかもしれない。Grooveは、このような部分にも配慮して、設計されている。Grooveのワークスペースは、作成された時点で暗号化されている。また、他のユーザーをワークスペースに招待するためには、ユーザー同士で暗号化されたキーをやり取りしなければ、ワークスペースを共有することはできない。

 さらに、Grooveの通信自体が暗号化されているため、他のユーザーがGrooveの通信を盗み見することはできない。もちろん、ワークスペースも暗号化されているため、別のユーザーがGrooveでアクセスしてきても鍵が異なるため、別のワークスペースが盗み見られることはない。

 このように、Grooveは、P2Pテクノロジーを使っているとはいっても、匿名でのアクセスは認めていない。鍵も単純なデータではなく、個人のPC環境をチェックして作ったデジタル指紋が利用されている。また、Groove Serverを利用すれば、Groove上でのユーザー権限の設定や監査などの機能を提供しているため、Grooveを利用したとしてもIT管理者がコントロールできなくなるということはない。


SharePointとの連携
InfoPathとの連携
Communicatorとの連携

Office 2007と統合されるExchange Server 2007

Exchange Server 2007の開発コンセプト
 Exchange Serverは、今まではサーバーグループの製品だったが、2007年になりOfficeグループへと移管されて、Office Systemの一員となった。

 Exchange Server 2007では、Outlook 2007との連携が図られている。Exchange Serverで扱えるメールやファイルなどをOutlook 2007の新しいUIで簡単にチェックすることができる。RSSのレポート、添付ファイルをワンクリックで簡単にプレビューしたりすることができる。

 さらに便利なのは、Exchange Server 2007では、Outlookと同じUIでインターネット上からアクセスできるようにOutlook Web Access(OWA)が用意されている。また、Exchange ActiveSyncプロトコルを使ってWindows Mobile 5.0と電子メール、予定表、連絡先、仕事などの項目を簡単に同期することができる。マイクロソフトでは、NTTドコモとビービーシステムと協力して、携帯電話からExchange ActiveSyncにアクセスできるiアプリのプログラムが開発されている。これを利用すれば、携帯電話でも簡単にメールなどをチェックすることができる。

 Exchange Server 2007を見てみると、今年になってOfficeチームに移管されたため、Office 2007との連携度合いは低いといえる。実際、SharePoint Serverの検索エンジンと同じものがExchange Server 2007に導入されているわけではない。また、ベースのデータベースエンジンとしては、旧来のままで、新しいSQL Serverをベースにしているわけではない。

 今後を見てみると、SharePoint Serverの連携を密にしたりしていく必要があるだろう。また、機能強化部分を見ていくと、旧来の共有フォルダ機能などよりも、ユニファイドメッセージングシステムという部分が中心になっていくようだ。現在は、電子メールをPCだけでなく、さまざまなフォームファクターで利用できるようになっている。例えば、Outlook 2007で使うのがもっとも便利だが、OWAを使えばWebブラウザが搭載されているPCならOutlookと同じようなUIで利用できる。また、Windows Mobileや携帯電話などからもアクセスできる。日本語化は時間がかかっているが、米国ではメールを読み上げてくれるサービスもExchangeに入っている(もちろん、音声認識でメールを削除したり、スケジュールを確認したりすることもできる)。

 このようなことを考えていくと、Exchange Serverは、将来的にはVoice Over IPなどのPBX交換機と接続して、企業内の電話と電子メールなどのメッセージングを統括するようになるだろう。また、Officeチームが持っているインスタントメッセージ(IM)を管理しているLive Communication Serverとも統合するようになるのかもしれない。このあたりは、あと数バージョン後になるのだろう。


Exchange Server 2007と連携するOutlook 2007
Exchange Server 2007は、さまざまなメディアからのアクセスを可能にしている
Outlook Web Access(OWA)は、Outlookと同じUIをWebブラウザで実現している

Windows Mobileからも簡単にExchange Serverにアクセスできる
NTTドコモの携帯電話からもiアプリのプログラムを使ってアクセスできる
Exchange Serverは、PBXを経由して音声でもメールを読み上げてくれる

Outlook 2007では、Exchangeと組み合わせて、予定表などにもアクセスできる
Exchange 2007を使えば、各ユーザーのスケジュールを簡単に確認して、会議を設定することもできる

Outlookと同じ画面がWebブラウザでも実現されている
ExchangeのスケジュールもWebブラウザで簡単に確認でできる

新しい一歩を踏み出したOffice 2007

 Office 2007は、SharePoint Serverを中核にして、進化していこうとしている。だが、GrooveやExchange、Live Communicationなど、まだまだSharePointと連携しているというわけではない。しかし、徐々にSharePointに融合していこうというコンセプトが見えてきている。また、それぞれのソフトでダブっている機能も整理していくのではなく、ダブっていてもデータは相互に同期するようになっている。このあたりは、マイクロソフトはOffice 2007のサーバーコンポーネントをすべて導入しないと、いろいろな機能が使えないというのではなく、1つのコンポーネントを導入するだけでもある程度の機能が使えるようにするというコンセプトからだろう。

 企業にとっては、Office 2007は強力なサーバーソフトになるだろう。SharePoint Serverは、資料の検索で時間のかかっていた作業時間を短くするし、他のユーザーとの情報共有もうまくいくだろう。また、今後重要になってくる電子メールや電子ドキュメントのセキュリティや保護なども、Office 2007のベースにコンテンツ認証システムが入っていることで簡単に実現できる。今後の日本版SOX法や企業コンプライアンスの遵守などにとっては重要なツールになっていくだろう。



URL
  the 2007 Microsoft Office systemプレビューサイト
  http://www.microsoft.com/japan/office/preview/


( 山本 雅史 )
2006/06/12 10:34

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