Enterprise Watch
バックナンバー

使ってみるとこんなに楽しい!シトリックスの「Presentation Server」【前編】

メールを一元管理する

 シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社の「Citrix Presentation Server(旧称Metaframe)」をご存知だろうか。Enterprise Watchの読者であれば、知らない人は少ないだろう。しかし、実際に使ってみたことがあるかと問われれば、意外に使ったことがないのではないだろうか。

 そう。筆者自身も使う機会がなく、Presentation Serverの機能を“頭”で理解していた...つもりであった。使う前のイメージとしては、Windows XPで提供されているリモートデスクトップのようなもので、それ以上でもそれ以下でもなかった。しかし、実際にPresentation Serverを使ってみると、そのイメージは一気に崩れた。とにかく、快適なのだ。とにかく、便利なのだ。今回、このPresentation Serverの魅力について、検証できた範囲で紹介する。


余ったPCがあればいつでも体験できる

 今回構築したPresentation Serverのテスト環境は、ほとんど借り物で済ませた。サーバーは、デルの好意によりお借りしたタワーサーバー「PowerEdge 830」を使用。デュアルコアPentium D搭載可能なサーバーだ。貸出機は、Pentium D 3.00GHz、メモリ2GB、HDDはSATA 160GB×4(RAID 5)という構成。同社のサイトでは20万円くらいの価格で販売されている。

 サーバーOSは、「Windows Server 2003 R2」。これはマイクロソフトのサイトから180日評価版が公開されているので、それを使用した。x64版も公開されているが、今回使用したのはx32版だ。

 これに「Citrix Presentation Server」をインストール。Presentation Serverは90日間99ユーザーまで接続できる体験版が配布されているので、それを使用。デュアルコアPentium D搭載サーバーにインストールしたことからおわかりいただけるとおもうが、デスクトップPCクラスのスペックでも十分利用できる。余ったPCさえあれば、すぐにでもPresentation Serverは体験可能だ。


デルからお借りしたPowerEdge 830。デュアルコアPentium D搭載の手頃なサーバーだ マイクロソフトのWindows Server 2003 R2評価版紹介ページ これがPresentation Serverインストールディスク。同社のサイトから入手可能

 シトリックスでは、体験版利用者のためにインストールガイドも用意している。丁寧に手順が書かれているので、これを見ながらインストールすれば迷うことはない。ただし、インストールガイドはActive Directoryを利用することを前提に書かれている点に注意が必要だ。Active Directoryの管理者であればそのまま読み進めて問題はないが、そうでない場合は、Active Directoryを使わなくても利用できるので、該当箇所は読み飛ばそう。この点さえ気をつければ、あっけないくらい簡単にインストールは終了する。

 インストールが終了すると、やるべき作業は利用者の設定と利用するアプリケーションの登録だ。利用ユーザーは、サーバーのローカルユーザーもしくはActive Directoryに登録されているユーザーを利用できる。今回は試用ということで、ローカルに必要なユーザーだけを登録して試してみた。

 アプリケーションの登録も簡単な操作で行える。アプリケーションの実行ファイル(.exe)のある場所さえ理解していれば、その実行ファイルを選択するだけというシンプルさだ。


メール管理の一元化に最適

 今回Presentation Serverを使ってみたいと思ったのは、会社で使っているクライアントPCのリカバリーがきっかけだった。というのも、毎回リカバリーするたびにメーラーのデータをバックアップせざるを得ず、どこかで一元管理できないものかとおもったことがきっかけとなった。Presentation Serverを使えば、クライアントPCをリカバリーする際に、面倒な作業がひとつ減るという安易な気持ちがスタート地点だった。

 ということで、Presentation Serverのインストールが終了したので、真っ先にメーラーをインストールしてみた。日常使っているのは「Becky!」というメーラー。これをインストールして、公開アプリケーションに登録してみた。


アプリケーションを公開するには、実行ファイルを指定するだけ 解像度や色数の設定も可能 同時使用の制限やCPUの利用度合いなど細かな設定ができる

Web Interfaceを利用した例。アイコンをクリックすると登録したアプリケーションが起動する
 Presentation Serverに登録されたアプリケーションを利用するにはいくつか方法があるが、今回はWebブラウザからアプリケーションを起動する方法を使ってみた。

 右がWebブラウザからアクセスしたところだ。このように登録されているアプリケーションがアイコンで表示されるので、このアイコンをクリックして起動する。

 Pentium Dサーバーにインストールされているだけあって、起動は早い。そう、高スペックのマシンをPresentation Serverとして使えば、クライアントPCのスペックが劣っていても、サクサク起動するのだ。このメリットを感じるのは、出社直後にメーラーを起動したとき。大量のスパムメールが届いているのだが、400通のメールもあっという間に取り込めるのだ。

 あとは、会社でも自宅でも、同じメーラーを同じ環境で利用できるのが大きなメリットだ。今までは、自宅でメールを読む場合、整合性を保つためにPOPサーバーにメールを残し、出社後に会社のPCで再度取り込んでいた。そのため、長期休暇後などはメールの受信にかなり時間がかかっていたが、Presentation Serverを利用してからは、いつでも同じ環境で取り込める。

 また、アプリケーションを「切断」すると、クライアントPCから接続していないだけで、サーバー側で起動した状態にすることもできる。こうしておけば、常にメールを受信するという荒技も可能だ。


Presentation Serverを利用してBecky!を起動。Windows XPで使っているのと比べると見た目が若干異なるが、使い勝手は同じ。ただし、IMEはサーバーのIMEを利用することになるので注意

添付ファイルの保存ダイアログボックス。ここに出ているローカルディスクはサーバーのローカルディスクだ。使っているPCは「Client」と表示されているドライブになるので注意が必要だ
 とはいえ、長期間使ってみて気になる点もある。

 添付ファイルを保存したり、開いたりする際、すべてサーバーを基準に行われるという点だ。たとえば、添付ファイルを保存しようとすると、保存のダイアログボックスに表示されるのはサーバー内のフォルダでありデスクトップなのだ。冷静に考えれば当たり前のことではあるが、これが意外に面倒。つい、デスクトップやマイドキュメントフォルダに保存してしまうと、クライアントPCからサーバーにアクセスしそのデータを再度探し出すのが結構困難だ。ただし、クライアントPCのドライブも保存先として指定できるので、保存するときに間違えなければ済む話ではある。

 また、添付ファイルを開くという操作は本質的な問題を抱えている。たとえば、Wordの文書ファイルが添付されていて、ダブルクリックしてその場で開こうとしても、クライアントPCにWordが入っていてもサーバーにWord(もしくはWord文書を開くことができるアプリケーション)がインストールされていないと開けないからだ。これはPDFファイルの場合も同じ。必要に応じてアプリケーションを追加することになる。

 そのほか、ドラッグアンドドロップでファイルを添付するといった操作もできない。これも理屈は同じだ。頭でわかっていても、こうした細かな操作ができないのは、けっこう苦痛かも知れない。


 細かな不満を挙げてはみたが、メーラーを一元管理できたのは個人的に大きな収穫だった。後編では、Office 2007ベータ2など、メーラー以外のアプリケーションの利用結果、PDA上からの試用結果などを紹介する。



URL
  シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社
  http://www.citrix.co.jp/
  Citrix Presentation Server体験版
  http://www.citrix.co.jp/products/testdrive.html

関連記事
  ・ 使ってみるとこんなに楽しい!シトリックスの「Presentation Server」【後編】(2006/08/11)


( 福浦 一広 )
2006/08/10 12:25

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.