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ITベンダーで導入進む「テレワーク」、その実態に迫る【前編】
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“協働”できるワークスタイルを目指す-NEC
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テレワーク制度を導入する大企業が増加している。以前は、コンピュータベンダーや通信ベンダーなど、在宅勤務を実現するために必要なソリューションを提供する企業が、実験的な意味も含めて導入することが多かった。しかし、2007年4月から松下電器産業が前年試験的に導入していた在宅勤務制度を本格的に導入し、3万人の社員をその対象とするなど、導入する企業、規模も広がっている。
用途としても、育児や介護など、以前は会社に出社することが難しい社員をサポートする“在宅勤務”制度として注目されることが多かった。それが、営業やSEなど客先に出向くことが多い職種での採用例が増え、仕事を効率的にこなすための手段として採用する企業も増加している。
だが、その一方で、「導入の際の不安」を訴える企業も多いという。どんなインフラを用意すればいいのか、会社はどんなルールを用意すればいいのかなど、未知の要素が多いことがその原因となっている。
そこで顧客にソリューションとしてテレワークを提供し、自社でも早い段階からテレワーク制度を導入している日本電気株式会社(以下、NEC)、日本アイ・ビー・エム株式会社の2社に、テレワーク導入の現実について話を聞いた。前編では、2006年7月から「テレワークトライアル」として、2000人の社員がテレワークを実践しているNECの例を紹介する。
■ 2006年から自社トライアルを開始
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NECではテレワークを“協働”の1手段ととらえ、オフィスと同じように働けるような仕組みを整えている
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企業ソリューション企画本部の田中克昌主任
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IP内線電話、Web会議、プレゼンスなどのシステムを活用し、協働のための環境を構築している
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通信とコンピュータの融合を標ぼうするNECにとって、テレワークは自社の強みを生かせる分野だ。しかし、テレワークとはハードやソフトを提供するだけでは十分ではない。その企業に適したテレワークとはどんなものか、コンサルティングを行った上で導入する必要がある。そこでNECでは、自らテレワークを実践することで、テレワークとはどんなものか、実態を知りたいと望む企業には自社の状況を公開。さらに、実践で得たノウハウを吸収しながら、導入を望む企業に最適なテレワークをコンサルティングできるよう模索している。
具体的には、「どこにいてもオフィスと同じように業務を遂行・協働できるワークスタイル」をコンセプトに、社員2000人を対象として、職種や用途を限定しないテレワークのトライアル勤務「テレワークトライアル」を2006年7月から実施している。
「この試みのベースになったのが、2002年から実施している、育児や介護を行っている社員を支援するために設けた在宅勤務制度です。ただし、この時に制度を実施したのは、『育児や介護によって職場を離れざるを得なくなること』を考慮してのことだったため、『在宅勤務』に対応した制度となっています。しかし、2006年から実施しているテレワークトライアルは、在宅だけにとらわれず、働く場所を会社の机に限定せず、『その時のスケジュールにあわせた場所を選んで働くことができる』制度となっています」(企業ソリューション企画本部の田中克昌主任)。
「テレワーク」といっても、その概要は実施している企業によって若干異なる。NECでは、テレワークを“協働”のためのものととらえ、「どこにいても、オフィスと同じように業務を遂行する」、「完全在宅勤務ではなく、状況によって働く場を使い分ける」ことを実現するためのものと定義している。
NECが実施するテレワークにおいては、育児や介護などフルタイムで働くことが難しい社員だけでなく、このトライアルの対象となっている企業ソリューションビジネスユニットに属する社員であれば、基本的に誰でも参加が可能。ただし参加要件として、上司が参加の承認を行っていること、部門およびグループがブロードバンドオフィス環境を整えていることが必要となる。
「働く場を会社に限定しないことによって、育児、介護を行っている社員に加え、営業やSEなど客先に出向いて作業する機会が多い職種では、自宅から客先に直行することで、効率的に仕事を進めることができるようになります。ブロードバンドの普及とモバイルパソコンや携帯電話など、ツール類は先に整っていました。社内ルールなど会社の子細をそこにあわせるものに変えていくことで、新しい働き方を提案できると考えました」(企業ソリューション企画本部の岩田真由美主任)。
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自社の経験をもとに、UNIVERGEで各種のソリューションも提供している
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こうしたトライアルをNEC自身が実践することで、コンサルティングを含めたソリューション提供が可能となる。
2007年4月には、「UNIVERGEユビキタスワークプレース」というコンセプトで、情報の共有化やコミュニケーションの活性化をオフィスからさまざまな現場に広げる4つのソリューションを発表した。それが、「UNIVERGE 役員会議ソリューション」「同 モバイル文書閲覧ソリューション」「同 どこでも内線ソリューション」「同 テレワーク導入支援ソリューション」、の4製品だ。
自ら実践した実績をもちながら、ソリューションを提供できるのがNECの強みである。
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Web会議ソリューション「コミュニケーションドア」によって、手軽にWeb会議を実現可能。資料の共有も可能で、同じ資料を閲覧しながら会議を行える
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映像の解像度はさほど高くはないが、相手の様子を確認することは十分可能だ
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必要なハードウェアはパソコンとWebカメラのみ。ブロードバンド回線経由で、リモート環境から手軽に利用できる
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■ ITベンダーでさえ、「やってみなければわからない」部分も多数
ソリューションを販売するために、NEC自身がそれを体感するというケースはさすがに珍しい。
しかし、テレワークは、実際に体験してみないとわからない部分も多いという。
ブロードバンドを利用したモバイルソリューションについても同様だ。NECでは、品川に「NECブロードバンドソリューションセンター」を設けた。このセンターでは、1000人の社員が最新のモバイルソリューションを活用しながら働いているが、ここでノウハウを吸収するとともに、モバイルソリューションとはどういうものかを社外の人に理解してもらうため、社員の働く姿を公開するショールームとして活用している。
さらに、2006年から実施するテレワークトライアルによって、導入によるメリットといったプラス部分だけでなく、実際に起こった問題点などを体感し、顧客にソリューションを提供するためのノウハウとして活用しているのだ。
実際にNECでも、やってみてわかったこと、提供している機器を利用してみてわかったことも多い。
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ActivePresenceを用いれば、「何をしている」というプレゼンス情報だけでなく、位置情報も表示できる。相手の姿が見えないテレワークでは、効果的なツールだ
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ブログを利用して、社員の生の声を収集することも有効だという
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例えば、自宅を仕事場にするためにはネットワーク接続が不可欠となる。ところが、「NECの社員であっても、『どうしてもネットワークがつながらない』とヘルプを寄せてきた社員がいました。当社のようなITベンダーの社員でさえ、自分でネットワーク接続ができない社員がいるのですから、ITと全く関係のない業種となると、事前教育およびサポート体制の拡充が不可欠だといえます」(岩田主任)。テレワークの場合、客先、出張先のホテルなど自宅以外の場所で、ネットワーク接続する場面も出てくるため、その際のサポート体制を作ることも不可欠となる。
また、自宅や外出先で作業を行うとなると、時間管理は個人に任せられることになる。「その結果、働かない社員が出てくるのも困りものですが、SEなどの職種では誰も止める人がいないために、時間を問わず作業を続けてその結果、トラブルが起こるというケースもありました。タイムスケジュールの報告はもちろん、自分で意識してタイムスケジュールを守る意識をもつことが必要です」(田中主任)。
タイムスケジュールを守るために、在宅で勤務している社員に好評だったのが、お互いの状況がわかるプレゼンス管理のためのソリューション「ActivePresence」。このソリューションは、FOMAや無線LANアクセスポイントへの接続情報をもとに、社員の居場所、状況を表示し、お互いがどこで仕事をしているのか確認することができる。
「ActivePresenceは、当初は本社の上司が、部下がいつ、どこで仕事をしているのか確認するために必要なものという認識でした。ところが、在宅で働いている社員から、『このソリューションがあると、社内の様子が把握できるのでありがたい』という声があがってきています。働いているのが自分だけではないことが把握できるため、心強いという声もありました。また、タイムスケジュール管理にあたり、上司が仕事をしているうちは仕事を続けるといった利用の仕方をしている社員もいます」(田中主任)。
テレワーク制度を利用している社員の生の声を知るためには、社員が発信するブログも有効活用できる。
「ブログには、社員の生の声があがってきます。『在宅で勤務する日には、家族と昼ご飯を食べるものと思っていたら、仕事を邪魔してはいけないと気を遣った家族が全員外出していて、1人で昼ご飯を食べることになった』といった声は、ブログならではの意見。『テレビ会議を行う際には、カメラに写る範囲はきちんと片付けなければならないことがわかった』という書き込みは、在宅勤務を行うには自宅にそれなりの環境作りが不可欠ということを表しています」(岩田主任)。
こうした現実は、まさにNEC自身が実践で獲得したノウハウだといえるだろう。
■ 大企業だけでなく中小企業の導入も十分に可能
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企業ソリューション企画本部の岩田真由美主任
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テレワーク導入というと、大きく報道されるのは大企業の事例が多いが、「中小企業でも十分に導入メリットがある」とNECでは断言する。
「テレワークというと、特別なシステムへの入れ替えが必要というイメージがあるようです。しかし、実際にはブロードバンドやパソコン、携帯電話といったものは必須となるでしょうが、ソリューションについては当社が利用しているソリューションすべてを、一挙に導入しなければならないわけではありません。導入形態としても、『育児中の社員がピンポイント利用するために導入する』といった方法も可能です。当社のようなベンダーは、新しいものをどんどん試してみせる必要がありますが、お客様はそういう必要はないのです。その会社にあわせた仕組み、ソリューションを選択すればいい」(岩田主任)。
NECが推進するNGNのようなネットワーク網は、テレワークとの相性はよい。ただ、「お客様の現実を優先するべきで、NGN優先ではテレワーク導入に二の足を踏むお客様も出てきてしまうでしょう」と、最新ソリューションを前面に押し出した提案はあえて行わない考えだ。
導入検討をする多くの企業が懸念するセキュリティ対策についても、シンクライアントの活用をはじめ、複数の対策を用意している。
「NGNが整備され、インフラとして採用すればより強固なネットワークセキュリティを実現することが可能になります。ただし、NGNがなければネットワークセキュリティは構築できないのか?と尋ねられれば、それは“ノー”です。シンクライアントについても、シンクライアントを利用したセキュリティ対策をとることも可能ですし、シンクライアントを利用しないセキュリティ対策も用意しています」(田中主任)
テレワークの利用スタイルは、企業によって変わってくるため、「これしか答えはない」という打ち出し方はしていない。
「企業規模、職種問わず、一度相談して欲しい」とNEC側は強くアピールする。
テレワークに適した仕事や業種についても、「向くもの、向かないものは確かにあると思いますが、以前は向かないとされていた職種であっても、働き方を変えることでテレワークを利用するようになったといった例もあります」(岩田主任)という。
社員のテレワークの導入頻度についても、「当社の実例でお話ししますと、毎日、在宅での仕事ばかりで、会社には来ないという社員というのは実はいないんです。多い人で週に1、2度。平均すると月に1回程度の利用が多いようです」(田中主任)と、案外少ない。
テレワークを実践する企業というと、オフィス内には空席が目立ち、社内がシーンと静まりかえっている…といったイメージを思い浮かべてしまうが、現実はそうではない。テレワークに抵抗を感じる企業も、この現実を聞けばイメージが変わってくるのではないだろうか。
■ URL
日本電気株式会社
http://www.nec.co.jp/
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( 三浦 優子 )
2007/08/23 00:00
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