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もう無駄金は使わない!-失敗しないERP導入術【中編】
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夢をみないで現実を、経営者の判断が成功を左右する
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■ 導入当初から求められる経営者判断
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株式会社クレオ プロダクト事業部長の林森太郎氏
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ERPの導入にあたっては、その目的を明確にすることは前回紹介した。
業務プロセスの統合と合理化がERP導入の目的であろうが、そのめざすレベルは企業規模はもちろん、経営者や現場レベルのニーズによって大きく異なる。それを見誤ると、導入プロセスひいてはコスト面で大きな差がでることになるからだ。
「企業の規模やその独自性をかんがみず、ごく単純にERPの最適化効果を信じてしまうのが、よくある失敗例です。ERPさえあれば、『BPR(Business Process Reengineering)なんて簡単だ』と夢をみてしまいがちです」
日本企業向けERPの開発にたずさわり、数々の企業導入例をみてきた株式会社クレオの林森太郎氏はそう語る。
ひとくちに、業務の統合と効率化といっても幅広い。林氏のアドバイスによれば、以下の3つの要請から判断していく必要があるという。
- ERPによる業務統合の目的とは、経営判断に貢献する最適化こそ優先されるべきである。
- 最終的な目的は経営判断への貢献だが、企業ごと引き継がれてきた独自性を性急に一新することは好まない。現場業務の効率を見直しながら国際会計基準にのっとった標準化をはかりたい。
- 現場ごとの効率化を求め、会社経営の全体像はシステム統合しなくても十分に把握できる。
上場企業で今後も3のレベルでよいと考える企業はないと思われるが、この場合はERPの必然性がないと考えるべきである。問題は、1と2の間にある差異で、この間を見きわめることがERP導入の手はじめにもっとも重要な判断ポイントとなる。
「ERPの導入には、最初から経営者判断が不可欠なのです」
経営者が自社の経営理念にそって、IT戦略を立案し判断することこそ必要というわけだ。もっとも、すべての経営者がそうあるべきだというのは難しいことかもしれない。そうした場合でも、CIOとしての役割を果たせる人材が経営者の補佐者として、企業の情報化戦略を経営的見地から統合のレベルをはかり、中長期的な戦略を立案・実行していかなければ、ERPの導入からつまずくことになりかねないし、導入後の効果も満足いくものがえられない可能性がきわめて高くなるはずだ。
■ 標準化と独自性のバランスが重要
では、ERPを導入するにあたりチェックしていくポイントとはどのようなものなのだろうか? 再びクレオの林氏にうかがってみた。
「どの業務をリニューアルするか、独自性をどういかしていくか、コストはどれだけかけられるか、の3つのポイントがあります」
そのうえで、「業務パッケージの再構築」なのか「ERP」の導入なのか、あるいはそれら両者と必要に応じて自社の既存システムを組み合わせいくのかを判断していかなければいけないと話す。
「ERPをはじめとした、基幹業務システムの導入は、大規模なところでは2000年問題を契機にした、大企業を中心とした動きからはじまっています」
現在はその動きが、中堅企業までおりてきているともいえるだろうし、バージョンアップ等のサイクルで更新の時期にきているともいえる。
「さらに、中堅企業までERPの導入が加速されているのは、来年度から施行される日本版SOX法に対応した財務会計への信用担保として。さらに、内部統制の必要性からe文書化への準備をすすめて、ITによる管理・統制化で業務プロセスの効率化をはかろうというニーズへのあらわれです」
企業なりの独自性をどの程度残していくかで、ERPの導入に関してもパッケージ主体ですむのか、スクラッチ開発の度合いが高まるのか分かれるところだ。もちろん導入コストに与える影響も大きい。
ERP導入の目的がはっきりしたところで、それ以降のプロセスとプランニングが必要となってくるのだが、これに関しては、経営者判断はもとより、情報システム担当の判断、導入後の保守もふくめたアウトソーサーの使い方なども考慮して検討していかなければいけないだろう。
独自性に関しては、業種ごとの慣行やこだわりも多いだろうが、導入のそもそもの契機が国際基準に合わせた業務の標準化なのだから、割り切って国際化の流れにシフトしてしまうという考え方も必要だろう。
企業としてなんらかの課題を感じているからこそ導入を検討しはじめているERPである。全社のシステムを変えるということは、ある種の思い切りも必要だ。それが、最適化への効果をうながし、バックオフィスの効率化を加速したという事例も多い。
もっとも、その思い切りこそ、経営主導でしかなしえないことなのだが。
■ ERPベンダーの“いい”使い方を
ERP導入に向けた検討のステップは、1)なにに向けた目的で、2)どう使うか、3)どのくらいのコストで、となる。だが、「経営主導」による「中長期的な判断」で、「戦略的なプランニング」を実行する、というようにはうまくいかないのが現実の導入事例だろう。
クレオの林氏に、ERP導入で失敗するパターンをうかがってみたところ、ユーザーの問題として次のような事例が多く見うけられるという。
「まずは、プロジェクトオーナーがしっかりしていないということ。課題の明確化や最適化へのニーズがしぼりこめないという事例です。次に、現場のリーダーに権限がないということ。決定に時間がかかり、当然コスト増も招きます」
そんなときは、ERPベンダーをコンサルタントとして使うのもひとつの手だという。
「経営と現場のニュアンスの違いは明確にしていただきたいですが、あらかじめベンダーをそこに噛ませることで、開発から導入、その後の運用保守までのリスクを軽減できる効果は大きいと思います」
製品パッケージの比較についても、ベンダーに対応策の詳細を提供してもらうための情報提供依頼書やシステム開発のための提案依頼書により、システム開発仕様書を精査する。
「複数のベンダーのパッケージを比較検討するには、横にならべてみてユーザーの要望と合致する個所の多いものを優先するということでよいのではないでしょうか」
以上のことから、ERP導入による業務プロセスの統合管理、および内部統制を実現する成否には、企業経営者のリーダーシップが最重要のファクターとなる。リーダー自らがトップダウンで整備を行うのが望ましい。
次に、自社の業務プロセスとERPパッケージの合致性の検討である。パッケージの標準機能に業務プロセスはどこまで合っているのか。会計科目の追加など、カスタマイズはどの程度容易なのか。カスタマイズは最小限にとどめる発想とともに、業種別のソリューションは充実しているかなどが、現実の導入の際には大きなポイントになるだろう。
次回は、ERPを実際に導入された株式会社アキュラホームの例を紹介することで、失敗しないERP導入のヒントを探る。
■ URL
株式会社クレオ
http://www.zeem.jp/
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・ 「経営者が金と人が見えなくなればERPの検討時期」-クレオ“ZeeM”の特長を聞く(2008/05/19)
( 前野 公彦 )
2007/11/15 00:00
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