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もう無駄金は使わない!-失敗しないERP導入術【後編】

成功事例で見る、導入のツボ

 前回まで、ERPパッケージを導入するにいたるまでの課題と、導入に向けたポイントを紹介した。今回は、実際にERPを導入し、所期の効果をあげつつある企業の事例を紹介してみたい。

 株式会社アキュラホームは、「日本の住まいを安くする」をコンセプトに、業界でドンブリ勘定の傾向が強かった注文建築の工程見積もりを、約2万工程にまで分解し徹底した合理化見直しを実施。現場作業効率を高めるとともに部材の一括仕入れや下請け・孫請けを排した中間マージンのカットなどに取り組んだ、「アキュラシステム」を導入。コストパフォーマンスの高い木造注文住宅を提供しているハウスメーカーだ。

 この「アキュラシステム」による合理化ノウハウは、全国の地域工務店を中心とした約2500社に提供。さらに、約600社の参加によるスケールメリットを活かし、住宅用部資材や設備を共同購入して高品質・適正価格をはかろうとする「ジャーブネット」も主宰している。

 こうした、IT技術を積極的に活用した企業経営が評価され、経済産業省の「IT経営百選」にも選定され、最優秀賞も2年連続で受賞している。

 現在、従業員数は約600名(本社スタッフ約130名)で、事業拠点は12支店34営業所、売上高204億円(2007年2月期)という規模だが、人員的なスケールでは年間150名増員が続く状況だという。

 IT技術の導入・活用にはもともと積極的な会社であったが、ERPの導入を本格的に検討しだしたのは2006年3月。株式会社クレオの部門最適化型ERPパッケージ「CBMS ZeeM 会計・人事給与」を導入したのが昨年の7月、運用開始は今年の3月とのことだ。


株式会社アキュラホーム
総務人事部 システム課 課長
の小林秀敏氏
 「管理会計に求められるのは継続性です。業務拡大とともに2000人規模の会社になっても対応できるシステムを考えると、会計・人事給与システムの変更は待ったなしでした」

 そう語るのは、社内コンセンサスの調整からシステム要件のチェック、パッケージ選定までを一手に引き受けたアキュラホームの小林秀敏氏だ。

 「当初は、『単体の業務パッケージじゃ、なぜダメなの?』という声がほとんどだったんですよ」

 手になじんだシステムから大きな変革は望まないのが現場の常かもしれない。検討から導入、運用開始にいたるまでを聞いてみた。


部門別経営の強化のため必須とされたERP

 「経営トップの管理会計に対する要請というのは、『部門別の経営状況を明確に把握しなければいけない』というのが大前提でした」

 具体的には、部門別損益が瞬時に取り出せ、部門ごとの採算性が的確に把握できることである。

 「それまで使っていた業務パッケージではそれができなかった。部門別採算性の経営を強化するというのであれば、全社の部門長に向けて損益計算書等の帳票開示ができなければ意味がありません」

 数あるERPパッケージから「CBMS ZeeM」を選択したのはなぜか。

 「いくつか候補はあげて比較検討しましたが、基準としては、当社の売上や従業員数といった企業規模から、業務プロセスとコスト面でマッチするものをピックアップしました」

 機能面での要望はどのようなものがあったのか。

 「日本版SOX法に対応していて、部門別の帳票出力と拠点ごとの分散入力ができること。会計科目を決めたあとも、項目追加が可能という拡張性があることなど」


 勘定科目の見直しは、管理会計への考え方ひいては経営の礎として、ERP導入時にとどまらず中長期的に追加や変更がありえる部分だ。

 いくつかのパッケージのなかから「CBMS ZeeM 会計・人事給与」を採用したのは、サーバーに負荷をかけないプログラムであったこと、他社事例でバグの報告が少なかったことなども大きなポイントになったという。

 「新しいパッケージだが発表から2年が経過しており、安定性が確立されていたという要素は大きかったですね。当社としては、サーバーが5年1サイクルとして、パッケージソフトはできれば2サイクル使いたいともくろんでいましたから」

 減価償却という観点も検討要素に加えていきたいところだ。

 導入過程でのERPベンダー クレオの対応はどうだったか。

 「クレオに関していえば、SE 2名が専任でつき、各工程ごとに明確なスケジュール管理をしながらサポートしてくれた。月一回のレビューとタイムキーパーの役割を果たしてくれたおかげで、こちらの回答が遅れたことはあっても、順調に工程をクリアしていったと思う」

 ユーザーとベンダーが一体になった導入工程を、いかに円滑に築けるかということも、スケジュールとコストの両面で重要になってくる。


ERPが会社のマインドを変える

 「CBMS ZeeM 会計・人事給与」の導入に関しては、チューニングのみでカスタマイズの必要性はほとんどなかったことも大きい。

 「標準機能外の対応はアドオンでのチューンアップだったので、パッケージのバージョンアップにも有利。長く使いたい当社としては、これもメリットです」

 業務パッケージではひとつひとつの目的で完結してしまっており連携性に乏しいが、「CBMS ZeeM 会計・人事給与」なら機能ごとのパッケージが連携しつつ、コンプライアンスの観点からもバランスが取れているという。

 「ワークフローシステムでは、管理部門がプロセスごとの進ちょくや承認を統制管理できること。また、代理承認などを目的とした権限委譲など、柔軟な権限設定が可能なのもユーザビリティにあふれた機能だと思います」

 ERPパッケージの導入と活用で、企業経営でなにか変化があらわれているだろうか。

 「勘定科目を精査してブラッシュアップすることで、財務諸表に目がいくようになったのではないかと思います。経理担当者をふくめて、数字を「読む」「語る」という素地ができたのではないかと。部門ごとにリアルタイムに開示される損益状況など、管理会計を推し進めるうえではあたりまえのことが実現したことで、目の前がひらけた感じがします。こうした導入後の成果からも、ERPパッケージへのさらなる活用がすすみ、ニーズもまた変わるんじゃないでしょうか」

 スケジュール面、コスト面と、決して軽い負担ではないERPパッケージだが、業務の効率化とともに経営環境および社員のマインドすら変える力をもっているツールと考えてもよさそうだ。


 あなたの会社に当てはめるとすれば、どのような目的と効果をシミュレートできるだろうか。



URL
  株式会社アキュラホーム
  http://www.aqura.co.jp/
  株式会社クレオ
  http://www.zeem.jp/

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( 前野 公彦 )
2007/11/22 09:00

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