ランキングで振り返る、2007年のエンタープライズ業界動向（上半期）

　Enterprise Watchで今年一年間掲載した記事の中から、アクセス数をもとに月別の10大ニュースを選出して紹介する。個人ユーザーでも関心が持てる記事へのアクセスが高くなりがちではあるが、ランキングを通じて業界全体の動きを振り返ってみる。

　今回は、1月から6月までのランキングを紹介する。

■ 【1月】PDFとFlashを融合したアドビのAIRがトップ

　当初Apolloと呼ばれていたアドビのAIR（Adobe Integrated Runtime）の記事が1位に。FlashとPDFを融合した次世代アプリケーションプラットフォームという新技術に関心が集まった。新技術といえば、この時期はWindows Vistaの発売が目前に迫ったころ。1月30日の一般販売に向けて、マイクロソフトの普及施策に関する記事が6位にランクインするなど盛り上がりを見せた。

　NECからは、早々とWindows Vista搭載のPCが発表されており、10位にランクイン。今後も、PCなどのハードウェア、ソフトウェアのWindows Vista対応のニュースが相次ぐこととなる。

　また、SunとIntelの提携を報じた記事が7位に入った。業界を驚かせた出来事だっただけに、読者の関心もまた高かったようだ。

順位	記事名	掲載日
1	アドビ、FlashとPDFを融合した「Apollo」を公開－正式版は2007年後半を予定	1/17
2	1月の修正プログラム適用によりExcel 2000でファイルが開かなくなる不具合	1/12
3	マイクロソフト、「MS07-002」の不具合を改善した修正プログラム	1/19
4	キヤノン、カラー10枚/分のA4レーザープリンタなど6製品	1/17
5	マイクロソフト、Officeの脆弱性など“緊急”3件を含む修正プログラムを公開	1/10
6	発売秒読みのWindows VistaとOffice 2007、マイクロソフトが普及に向けた施策を発表	1/15
7	米Sunと米Intel、SolarisとXeonで広範な戦略提携	1/23
8	日本HP、最新Opteronを2基搭載する水冷式ハイエンドワークステーション	1/30
9	米VMware、仮想化環境変換ツール最新版をリリース	1/30
10	NEC、Windows Vista搭載のビジネスPC44モデルを発表	1/15

■ 【2月】“旬”のWindows Vista関連記事がランクイン

　5位にCore 2 DuoとWindows Vistaに関する記事がランクイン。Windows Vistaの一般販売に合わせて、両者を組み合わせたユーザーエクスペリエンスに関心が集まりだしたころだ。4位には、マイクロソフトの海賊版対策の記事も入っており、新OS発表の裏につねにつきまとう海賊版への関心も大きいことがうかがえる。

　仮想化関連記事も多数ランクイン。今年のトレンドの1つは、間違いなく仮想化だろう。2月も8位と9位にランクインしたように、仮想化関連の記事は報じられるたびに高い注目を集め、ランキングにも数多く登場している。

　また、エクストリームのスイッチが持つ「Universal Port」機能を解説した記事が3位に登場。ネットワーク系の記事はほかに押されてあまり上位に登場しないが、USBのような機能性をネットワークに提供するというユニークさが注目を集めた。

順位	記事名	掲載日
1	マイクロソフト、“緊急”6件を含む12件の修正プログラムを公開	2/14
2	NEC、第3四半期決算でPC事業が黒字化	2/7
3	“USBのようなネットワーク”が提供できる－エクストリームがモジュラーOS「XOS」をアピール	2/16
4	マイクロソフトが海賊版対策機能を強化－Windows XPの自動更新時にも適用	2/20
5	インテル吉田社長、「Core 2 DuoとVistaによりパソコンの新世代が始まる」	2/1
6	グーグル、独自ドメインメールやオフィスアプリが利用可能なSaaSサービス	2/23
7	日立、Vista Business搭載ビジネス向けPC－1.12kgの軽量ノートPCなど	2/13
8	インテル、クアッドコアで実現する“第2世代VT”に関する最新動向を説明	2/22
9	米Microsoft、Virtual PC新版を発表－仮想化ソフト「Virtuozzo」もサポート	2/21
10	日本オラクルと日本IBM、Linux環境における16CPUまでの拡張性と柔軟性を実証	2/8

■ 【3月】日立がPC事業から撤退

　シマンテックのノートン360の記事がトップ。同製品はこれまでのSymantec Internet Securityと比べて、どちらかというPCのスキルの少ない初心者を対象にした製品。セキュリティ対策にPCのメンテナンス性も包括的に統合されており話題となった。

　また、Dellの中国向け低価格デスクトップPCが4位、デルのvPro対応デスクトップPCが6位に入るなど、PCの話題には関心が集まりやすい。しかしPC事業は各社で苦戦が伝えられているジャンルでもあり、3月は日立がビジネスPCの自社開発から撤退というニュースも報じられ、7位にランクインしている。

順位	記事名	掲載日
1	シマンテック、統合セキュリティの最新製品「ノートン 360」	3/6
2	米Microsoft、「Office Communicator 2007」のパブリックベータ公開	3/8
3	アダプテック、SASとSATAに対応したユニファイドコントローラを発売	3/28
4	米Dell、中国市場向け低価格デスクトップPCを発表	3/22
5	クアッドコアでなくデュアルコアでもAMDより性能上－米Intel副社長がプレス向け説明会	3/28
6	デル、vPro対応のミニタワー型デスクトップPC	3/29
7	日立、ビジネスPCの自社開発から撤退－HP製PCのOEM供給で基本合意	3/9
8	米Microsoftなど11社、ITリソース記述言語「SML」の仕様をW3Cに提出	3/23
9	米Red Hat、Red Hat Enterprise Linux 5の正式版を発表－新サービスも開始	3/15
10	米Adobe、Webブラウザ不要のアプリ技術「Apollo」のパブリックアルファ	3/20

■ 【4月】マイクロソフトのセキュリティ情報に関心が集まる

　3万円台から購入できるタワー型サーバーの記事が4月のトップに登場した。すぐにでも購入できそうな低価格ということもあって、人気を集めたようだ。しかし一方で、ベスト10圏外の12位にはHDDが12基搭載できるラック型サーバーが、16位にはワークステーション環境をデータセンターへ集約する「ブレード型ワークステーション」が入っており、“とんがった”機能のある製品への関心も依然として高い。

　また、緊急のセキュリティパッチなど、マイクロソフトのセキュリティ関連の記事が4つもランクインした。

　そのほか、次期サーバーOSのWindows Server 2008に関する記事もランクイン。この時期から具体的な製品情報が出始めた。

順位	記事名	掲載日
1	日本HP、3万円台からのAMD製CPU搭載タワー型サーバー「ML115」	4/12
2	米Adobe、「Flex」をオープンソース化	4/27
3	マイクロソフト、“緊急”の修正プログラムを公開－Vistaも対象	4/4
4	マイクロソフト、Windows Server“Longhorn”日本語版ベータ3を公開	4/26
5	マイクロソフト、緊急の更新プログラム1件を4月4日に公開	4/2
6	米IBM、「POWER」上でx86 Linuxアプリを実行する仮想環境を発表	4/25
7	マイクロソフト、4月のセキュリティパッチは「緊急」含む5件を予定	4/6
8	マイクロソフト、“緊急”4件を含む5件の修正プログラムを公開	4/11
9	インテル、45nmプロセスの次期プロセッサ「Penryn」を国内初デモ	4/20
10	富士通、2006年度連結決算は増収増益－純利益は過去最高	4/27

■ 【5月】富士通のウルトラモバイルPCがトップ

　富士通のウルトラモバイルPCが1位に。PC Watchなどでも大きく取り上げられたこともあり大反響。5月17日・18日に開催された富士通フォーラムでも目玉製品として展示されていた。

　CPUに関する記事は人気が高く上位の常連だが、5月は日本IBMのPOWER6に関する記事がトップを獲得。また、Longhorn Server（開発コード名）の名称が正式にWindows Server 2008へ決まったことを報じた記事が3位に入った。5年ぶりのバージョンアップとなるこのサーバー製品への関心は高く、9月からスタートした弊誌での特集記事も毎回多数の読者にご覧いただいている。

順位	記事名	掲載日
1	富士通、重さ約580gの企業向けウルトラモバイルPC「FMV-U8240」	5/16
2	日本IBM、動作周波数4.7GHzの「POWER6」を発表－各種ベンチマーク記録を更新	5/23
3	Longhorn Serverの名称が「Windows Server 2008」に正式決定	5/16
4	NEC、“1Uサイズに2台入る”Core Duo搭載サーバーなど	5/22
5	マイクロソフト、DNSサーバーの脆弱性など“緊急”7件の修正プログラムを公開	5/9
6	海賊版撲滅の大義名分でファイルを上書きするマルウェア－ソフォスが紹介	5/11
7	九十九電機、19800円から買えるSUSE Linux搭載の中古PC	5/28
8	日立、物理容量よりも大きなボリュームを仮想的に割り当てられるストレージ	5/15
9	富士通フォーラム開催－今年のテーマは“フィールドイノベーション”	5/17
10	IT投資による生産性、日本ではなぜ向上しない？－アクセンチュア調査	5/21

■ 【6月】アドビがAIRをベータ公開

　企業向けには2006年11月から提供開始されたWindows Vista。この新OSへの関心も依然として高く、関連する記事が1位と9位にランクイン。また3位には、1月のトップでもあったAIR関連で、正式名称決定のニュースが登場した。

　そのほか、携帯端末向けOSのWindows Mobile 6と、それを搭載したウィルコムの「Advanced/W-ZERO3 [es]」も発表。前機種から話題性の高いツールであり、ジョグキーによって新しい操作性を実現した新機種への関心も高かった。

順位	記事名	掲載日
1	米Microsoft、Windows Vistaのデスクトップ検索仕様を変更	6/22
2	三菱電機、非接触ICカードリーダ/ライタを内蔵した高セキュリティノートPC	6/19
3	米Adobeが「Apollo」ベータ版をリリース、正式名称は「AIR」に	6/12
4	「2007年は富士通が変わる年に」、黒川社長が中期経営方針を打ち出す	6/8
5	日本HPがVista搭載のブレードPCを発表、XPとの混在も可能	6/14
6	ウィルコム、Windows Mobile 6を採用した最新スマートフォン「Advanced/W-ZERO3 [es]」	6/7
7	富士通、1.5kgを切るワイド液晶搭載A4コンバーチブル型タブレットPC	6/25
8	マイクロソフトがWindows Mobile 6を発表－「年内に100万台を出荷する」	6/6
9	マイクロソフトがVistaの最新状況を説明、「デバイスの互換性はXPを超えた」	6/18
10	エプソン、分散配置を促進するオフィス向けプリンタ	6/14

（編集部）
2007/12/25 09:00

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