|
|
|
|
|
|
驚異的な伸びを示すSharePoint Server 2007-その理想と現実を見る【前編】
|
|
|
|
|
|
昨年リリースされた2007 Microsoft Office system(以下、Office 2007)のサーバー側の中核ソフトといえるMicrosoft Office SharePoint Server 2007(以下、MOSS 2007)の導入が、日本国内の企業においても積極的に行われ始めている。
「MOSS 2007は、旧製品となるSharePoint Portal Server 2003と比べると、数倍の売れ行きを見せています」(MOSS 2007担当のマイクロソフト株式会社インフォメーションワーカービジネス本部IWソリューションマーケティンググループ エグゼクティブプロダクトマネージャの昇塚淑子氏)
|
2006年 国内コラボレーティブアプリケーション市場ベンダー別売上シェア(出展:IDC Japan)
|
実際、調査会社IDC Japanの国内コラボレーティブアプリケーション市場調査によれば、「2006年の国内コラボレーティブアプリケーション市場規模は、前年比12.9%増の525億円となりました。2006年~2011年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)10.5%で成長し、2011年には865億円に達する見込みです」(IDC Japan国内コラボレーティブアプリケーション市場規模予測より)とコラボレーティブアプリケーション市場の成長を予測している。
「2006年のコラボレーティブアプリケーション市場ベンダー別シェアでは、マイクロソフトが2005年に引き続きトップシェアを維持しました。特に2006年11月から販売を開始した、SharePoint Server 2007の売上が好調でした。IBMは、バージョンアップの案件が堅調に推移し、2005年を上回る成長率となりました。2005年は苦戦を強いられた国産ベンダーも更新需要に支えられ、2006年は回復の兆しがみられました」(同上)と、MOSS 2007の売れ行きの好調さを分析している。
「MOSS 2007の好調さは、このバージョンになって、日本国内のお客様のニーズに合った製品になったためだと思います。MOSS 2007を発表してから、お客様より詳細を教えてほしいとか、MOSS 2007のシステムインテグレータ(以下、SIer)を教えてほしいというお声をちょうだいしています。MOSS 2007に関して深くカバーされている会社も限られているので、お客様をお待たせしている状況となっています」(昇塚氏)
マイクロソフトでは、MOSS 2007の機能を以下の6つにカテゴリ分けして、分類している。
- コラボレーション
- ポータルサイト
- エンタープライズ検索
- エンタープライズコンテンツ管理
- ビジネスプロセスとフォーム
- ビジネスインテリジェンス
「MOSS 2007は、1つのソフトで、これだけの分野をカバーリングしているということで、多くのお客様のニーズにフィットしたのだと思います。以前のSharePoint Portal Serverでは、コラボレーションやポータルサイト機能はあっても、セキュリティ性の高いコンテンツマネジメント機能がなかったため、多くのお客様は導入に踏み切れませんでした。しかし、MOSS 2007では、ユーザーアカウント別にファイルのコントロールができるため、特定のユーザーにしかアクセスできないドキュメントだけでなく、特定のユーザーにしか表示されないドキュメントというものができるため、コンテンツマネジメントということでは非常に評価をいただいています。さらに、Windows Server 2003のIRM(Information Rights Management)を利用して、ドキュメントの閲覧、編集、コピー、印刷などの権限をユーザーごとにコントロールすることができます」(昇塚氏)
実際、MOSS 2007の導入が進んでいるのは、コラボレーションやコンテンツマネジメント分野に関してのようで、ビジネスインテリジェンス(BI)などは、SQL Serverなどのデータベースをバックエンドで必要であること、また本格的なBIを行うには別売のPerformancePoint Serverなどを利用しなければならない。このため、BI分野での導入は、2008年に入ってからになると予測している。
「確かに、BI分野では、MOSS 2007だけでなく、PerformancePoint Serverや分析の基となるデータベースの整備など、コラボレーション機能やコンテンツマネジメント機能などに比べるとハードルが高いことは確かです。しかし、今までのBIソフトに比べるとはるかに低コストでBIツールが利用できるということは、お客様にとって魅力のようです。さらに、MOSS 2007のポータルサイト機能を利用してWebパーツであらかじめ決められた分析をダッシュボードとして表示ができるのも魅力のようです。このため、将来的には、BIまで統合していきたいとお考えのお客様からMOSS 2007は、支持されているのだと思います。今使えるコラボレーション機能やコンテンツマネジメント機能、ポータルサイト機能だけでなく、BI機能やビジネスプロセスやフォーム機能といった将来性も買っていただいているのだと思います」(昇塚氏)
いくつかのSIerから話を聞いたところ、確かにMOSS 2007は、以前のバージョンよりも引き合いが強いというコメントが出ている。しかし、これには前提があって、以前のバージョンがあまりにも使えなかったため、導入を検討したが、結局導入を延期し、次バージョンが出るまで待っていたという企業が多いということだ。このため、MOSS 2007のリリース後、多くの企業が導入を始めたというのが、大きな理由だ。
だだ、最近になって、以前にSharePointの導入を検討していた企業だけでなく、新たにMOSS 2007を知って、導入を検討している企業も増えてきているようだ。これらの企業においては、MOSS 2007のコンテンツマネジメント機能を「ドキュメント管理」として利用したいということからだ。ある意味、会社に分散して、無秩序に作られているファイルサーバーを統合したいというニーズから導入を検討しているという。また、企業内におけるドキュメントのセキュリティが、数年前の個人情報保護法の制定やコンプライアンスへの高まりといったことで注目を浴び、システム部門の予算取りにも影響を及ぼしているようだ。
■ MOSS 2007の作り込みよりも、データの棚卸しに焦点をあてる
MOSS 2007は、標準パッケージでも多くの企業で有効に利用できるようになっている。さらに、InfoPath Forms Serviceと連携して電子フォームを作成し、フォームを作成したワークフローに従って、ビジネスプロセスとして運用することができる。また、コラボレーション機能では、ユーザー独自のWebパーツを構築できるため、これを利用して外部のシステムとの連携も可能になっている。MOSS 2007とSAPのシステムと連携するDuetというモジュールも提供されている。
|
マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部IWソリューションマーケティンググループ エグゼクティブプロダクトマネージャの昇塚淑子氏
|
「現在、MOSS 2007をコンテンツマネジメント機能をメインとして導入されているお客様のほとんどは、MOSSの作り込みをせずに、ほとんど標準でお使いになっています。Webブラウザに表示される画面などは、自社のロゴや色に変更されている会社が多いです。しかし、MOSS 2007に対して、ゴリゴリと作り込みをしたシステムというのは少ないです。作り込みに時間をかけるよりも、情報の棚卸しをきちんと行っていこうというお客様が多いですね」(昇塚氏)
これは、MOSS 2007自体の機能を拡張するよりも、企業内におけるドキュメント管理という部分にフォーカスをあてたためだろう。システムのカットオーバーに時間をかけるよりも、自社内部にあるさまざまなドキュメントを洗い出し、どのドキュメントを企業内の共通ドキュメントとしておくのか? また、このドキュメントには、どのようなセキュリティをかけて、閲覧できるユーザーを限定するのかなど、実際の運用面での下準備に時間をとるようにしている。
「MOSS 2007を導入されている株式会社ケーヒン(ホンダ系の自動車部品メーカー)様では、エンドユーザーと一緒になって、情報の棚卸しが行われています。洗い出した情報を元に、MOSS 2007へドキュメントを移行されています。MOSS 2007自体は、ほとんど標準パーツで利用されています。ケーヒン様のシステム部門では、システムの完成に時間がかかるモノよりも、実際に運用するときに問題になるドキュメント管理の運用に関して時間を割きたかったので、システム構築が簡単に行えるMOSS 2007を選択したといっていただいています」(昇塚氏)
【お詫びと訂正】初出時、会社名を間違って表記しておりました。お詫びして訂正します。
いくつかのSIerに話を聞いても、MOSS 2007を導入する企業の多くが、標準状態でMOSS 2007を使用しているとのことだった。MOSS 2007自体は、さまざまなAPIが公開されWebパーツ化されているため、SIerが開発を手がけることもできるが、まだまだそこまでは手が回っていない状況というのが本音の部分だ。また、ユーザー側もMOSS 2007に対して期待する機能は、カスタマイズということよりも、手軽に、短期間でシステム構築ができるという部分に注目をしているためだ(MOSS 2007対応モジュールをカスタム開発したとしても、次バージョンで利用できるかどうかわからないということもあるようだ)。
■ Office 2007を前提としないシステムが多い
「MOSS 2007を最大限活かすためには、Office 2007との連携がもっとも便利です。実際、WordやExcelの中から、ドキュメントをMOSS 2007に発行したり、修正したりすることができます。しかし、お客様の環境をみてみると、さまざまな理由で、全社でOffice 2007を使用している環境が実現しているわけではありません。このため、WebインターフェイスでMOSS 2007を使われているお客様が多いです。ファイルのアップロードやダウンロードなどWebブラウザベースになりますが、それほど手間がかかるモノではありません。マイクロソフトからいえば、MOSS 2007を採用されたお客様には、Office 2007という組み合わせで使ってもらいたいのですが、こればかりはお客様に強制できません。ただ、多くのお客様は、マイクロソフトとライセンスを契約して、さまざまなソフトを導入されているため、将来的にはOffice 2007の全面採用を視野に入れられているお客様も多いです。クライアントPCのリプレース時期に、Office 2007とWindows Vistaへの移行を計画されているお客様も多いです。これらのお客様は、今はMOSS 2007をWebブラウザベースで利用していますが、将来的にはOffice 2007と連携した形での利用をイメージされています」(昇塚氏)
企業のクライアントPCにインストールされているOfficeは、2003やXPなどがまだまだ多い(会社によっては、Office 2000を使っている企業もまだある)。このため、多くの企業ではWebインターフェイスでMOSS 2007を利用している。
「マイクロソフトが行うデモをみた企業のシステム担当者が、Officeがあれば同じようなことができると勘違いしていることがありました。Office 2007としか連携しないということを聞くと、残念がりはしますが、それで導入をあきらめるということは、ほとんどありません。使い勝手を考えると、Office 2007から利用できた方がいいのでしょうが、ドキュメント管理に使用するくらいなら、Webインターフェイスで十分ということなのでしょう」(MOSS 2007のインテグレーションを行っている日本ヒューレット・パッカードの三輪祥宏氏)
MOSS 2007を利用している企業にとっては、確かにOffice 2007との連携は便利と感じているが、マイクロソフトがいうほど、Office systemというファミリー感はないようだ。それよりもMOSS 2007自体の機能に魅力を感じているようだ。
多くの企業においてMOSS 2007の導入が検討されているということは、企業におけるコンテンツマネジメントやポータルサイトに対して、有効なソリューションということなのだろう。だた、MOSS 2007の導入シナリオや動機をみていると、マイクロソフトの思い描いたモノとは、少し異なるようだ。いくつかのSIerに話を聞いたところ、多くの企業では、MOSS 2007をドキュメント管理としての機能とユーザー主導の情報発信ツールといったソフトとして認識しているようだ。
このため、MOSS 2007でワークフローを作成して、ビジネスプロセスまで構築するといった部分には、まだ到達していないようだ。また、MOSS 2007のもう一つの特徴となるInfoPathなどのフォームを使ったシステムも簡単なものは、構築されているが、まだまだ最初の一歩といえる。
次回は、実際にMOSS 2007のインテグレーションを行っているSIerに、MOSS 2007の現実と理想について語ってもらう。
■ URL
Microsoft Office SharePoint Server 2007
http://office.microsoft.com/ja-jp/sharepointserver/
■ 関連記事
・ 驚異的な伸びを示すSharePoint Server 2007-その理想と現実を見る【後編】(2007/12/26)
( 山本 雅史 )
2007/12/25 00:00
|
|
|
|
|