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次世代ネットワークConverged Enhanced Ethernetとは何か?【第四回】

Converged Enhanced EthernetとEthernetの違い・その2

 前回はConverged Enhanced Ethernet(CEE)の特長のうち、異なるサービス品質を要求するネットワーク(プロトコルではなく)を実現するための、プライオリティの実装について触れた。今回は、品質低下を避けるための技術など、残り3つの特徴を説明する。


品質低下を避けるための技術

【図1】Congestion Notificationのイメージ
 スイッチの受信側ポートの輻輳(ふくそう)のために、複数のトラフィックがたまっていくような状況下では、フレーム受信のためのキューがあふれてしまうことが考えられる。このような状況下では、Random Early Detectionなどでフレームなどを破棄することが一般的であるが、この連載では最初から触れている通り、I/Oネットワークにおいてはフレームの破棄は大きな影響をもたらすため、これは行えない。したがって、Priority-based Flow Control(PFC)により、フレーム送信のPAUSEを要求するわけである。

 前回も触れた通り、PFCではタイマが切れると送信側は自発的に送信を開始する。本来であればPAUSEタイマが働いている間にキューの処理が行われ、受信バッファが回復することが期待されるが、保証されるものではない。したがって受信ポート側から輻輳(ふくそう)を管理するか、もしくは輻輳(ふくそう)を通知する仕組みがある方が望ましい。これがCongestion Notification(CN:IEEE 802.1Qau)である。CNを行ってレートシェイプするのは、上記の通り、受信側がデータロスなしに帯域制御する仕組みがないためである。

 CNは輻輳(ふくそう)地点からフレーム送信ポートに対して行われるが、実装法はBackward Congestion Notification、Explicit Congestion Notification、Quantized Congestion Notificationなどがある。なお、CNに相当する仕組みは、Fibre Channelでは存在しない。なぜならば、Creditモデルでフロー制御が行われているため、受信側が送信データのシェーピングをすることが可能だからである。

 なお、CNは現在もまだディスカッション中(2008/9/29)の技術であり、最終的な意見集約は今後になる。


ネットワークの整合性を保つための管理は必要か

【図2】DCBXのイメージ
 CEEではこれまで見てきた通り、多くの仕組みが加わっており、それらが個別のパラメータをもって動作している。このため、ファブリック全体でパラメータの整合性をとる仕組みも必要になる。ファブリックでの固有なパラメータの交換を行うための仕組みが、DataCenter Bridge eXchange Protocol(DCBX:IEEE 802.1 DCB)だ。

 DCBXは全く新しいプロトコルというよりは、既存のLink Layer Discovery Protocol(LLDP)の拡張である。もともとのLLDPはシャーシ名、ポート名やデバイス情報などを取得するためのプロトコルだったが、DCBXはCEEで必要とするパラメータ、つまりPFC、Priority Group、CN、アプリケーションなどをデバイス、スイッチ間で交換するためのプロトコルに拡張されている。

 このプロトコルがあることで、ファブリック全体の整合性が保たれる。裏を返すと、DCBXに対応していないデバイスもしくはスイッチは、CEEファブリックには参加できないことになる。実際、DCBXでは、対応していないデバイスが検出された場合、DCBXはdisableになると規定されている。また、パラメータの自動設定やミスマッチを検出する際にも使用される。


ルーティングを気にする必要はない?

 既存のEthernetが不利なことの1つに、ファブリック内のマルチパスを使用することができないということがある。レイヤ2接続でループを構成すると、フレームの寿命がないため、古典的なブロードキャストストームを発生させてしまうのだ。ネットワークに詳しい方はご存じの通り、Ethernetではループの抑制のために、通常はSpanning Tree Protocolを使用し、問題を回避している。この結果、コスト等価なパスは存在せず、ネットワーク全体としては最短経路での通信が保証されないし、マルチパスでのロードバランスも行うことができない。

 これに対しレイヤ3接続は、フレームの経路選択が行われるので、ループの問題は回避される。IPでは、よく知られている通り、多くのルーティングプロトコルによりネットワーク網が安定動作している。しかし、レイヤ3接続の問題点はアドレッシングとルーティング設定をどのように行うかという点にある。現在のIPネットワークではDHCPサーバーをマニュアルで設定し、ルーティングはルータなどをマニュアルで設定するということが主流であるが、これはいかにも煩雑である。また、2回目に触れた通り、IPでのネットワーク統合を行う際には、現実的には低レイヤでのネットワーク技術の拡張が必要になるため、魅力は小さい。


【図3】TRILLのイメージ
 そこで、CEEでのマルチパスルーティングに関する標準として、TRansparent Interconnects of Lots of Links(TRILL)というものがIETFへ提案されている。TRILLではルータとブリッジの両方の特徴をもつRBridge(レイヤ2/3ルーティング)という実体を定義し、RBridgeによるゼロ設定でのマルチパスルーティングを行う。

 TRILLの標準も現時点ではまだディスカッション中であり、これからも変更されうる。しかし、リンクステートプロトコルを利用し、マルチパスルーティングを行うことは間違いないだろう。現在はプロトコルとしてはIS-ISが提案されている。OSPFなどのプロトコルはIPが前提なのでRBridgeとしては不適格なのと、IS-ISは歴史的に見ても、OSIネットワーク層のルーティングプロトコルのため、使用しやすかったという側面もある。

 RBridgeでは、48ビットのIS-ISシステムIDによりそれぞれのRBridgeが識別される。また、ニックネームと呼ぶ16ビットのダイナミックに割り振られる属性を使用することもできる。

 TRILLの特徴をまとめると下記のようになる。

 (1)ゼロ設定
 (2)マルチパスルーティングが可能
 (3)ファブリック全体のスループットが大きい


 ここまでで、CEEの技術的な特徴を説明してきたが、最終回となる次回は、いよいよ、CEEの上位レイヤの1つであるFibre Channel over Ethernetを取り上げる。



URL
  ブロケードコミュニケーションズシステムズ株式会社
  http://www.brocadejapan.com/

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( ブロケードコミュニケーションズシステムズ )
2008/12/11 08:58

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