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Solaris 10の新機能を探る【前編】
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従来バージョンやLinuxとの高い互換性をサポート
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Solaris 10 パッケージイメージ
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サン・マイクロシステムズ株式会社(以下、サン)は、SPARC、x86(64ビットを含む)プラットフォームに対応した最新OS「Solaris 10 オペレーティングシステム(以下、Solaris 10)」の提供を1月31日より同社のWebサイトにて開始する。
最新のOSであるにもかかわらずSolaris 10のライセンス料金は、使用目的に関係なく無償(ただし5CPU以上の環境は検討中)だ。ライセンス料金が無償になることで、Solarisの進化が止まってしまうのではないかと心配する必要はない。サンはSolarisのライセンス料金を無償にすることでシェアを拡大し、年額制のサブスクリプションモデルで提供するサポートプログラムで収益をあげることが狙いである。そのためには、Solaris 10が、他のOSと比較して見劣りのする製品であってはならない。つまり、Solaris 10はサンの新しいビジネスモデルを推進する上で、最も重要な製品なのだ。
■ Solaris 10の主な新機能
Solaris 10は、2002年5月にリリースされたSolaris 9よりおよそ2年半ぶりのメジャーバージョンアップで、追加された機能は600を超えるという。その中でも主な新機能は、次のようなものが挙げられる。
- パフォーマンスの向上
既存のSolarisとの互換を維持したまま、パフォーマンスを向上
- Linuxアプリケーション環境
Solarisカーネル上にLinuxアプリケーションを動作させる環境の実現
- Sun Java Desktop System
統合デスクトップ環境。WindowsライクのGUIだけではなく、StarSuiteやMozillaなどのアプリケーションも搭載
- Solaris ZFS
128ビット・アドレッシングによって事実上無限大といえるサイズのファイルシステムを構築可能。また、ブロック単位の入出力における検証機能でデータの信頼性が飛躍的に向上
- セキュリティ機能の強化
プロセス権限管理など、これまで「Trusted Solaris」でしか実現されていなかった高度なセキュリティ管理機能を標準で搭載
- Solarisコンテナ
ソフトウェア・パーティショニングによって、1つのサーバーハードウェア上の1つのOS上で複数のOS環境を仮想的に構築
- ダイナミックトレース(Dtrace)
システム障害や性能低下の原因解明を容易にするシステム診断ツール
- 予測的セルフヒーリング
あらかじめ予測されるシステム障害に自動的に対応し、可用性を向上させる自己修復機能
これらの機能のうち、Linuxアプリケーション環境、Solaris ZFSは1月のリリース時には搭載されず、今後のアップデートリリースで実装する予定だ。
■ パフォーマンスの向上と互換性の維持
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アプリケーション性能向上の例
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Solaris 10は今回のバージョンアップで、OS全体に大幅なパフォーマンスの向上を実現している。特にネットワーク機能の充実度が高く、たとえばパケット処理に必要な命令数を減らすことでネットワークのオーバーヘッドを大幅に削減することに成功している。
しかし同時にSolaris 10は、既存のSolarisとの互換性を非常に重視して開発されているOSである。これだけ多くの新機能を搭載しながらも、古いバージョンのSolarisで実行しているアプリケーションは、そのほとんどがSolaris 10環境でそのまま動作させることができる。つまり、現在使っているアプリケーションはそのままに、OSを入れ替えるだけでパフォーマンスが向上するのだ。
パフォーマンスの問題が発生すると、まずハードウェアをリプレースする企業は多いが、思ったより効果が得られないことも多々ある。たとえばネットワークのオーバーヘッドなどがボトルネックになっている場合、単なるハードウェアのリプレースでは根本的な解決にならない。その場合、システム全体を見直してパフォーマンスチューニングを行う必要があるのだが、その費用も決して安い投資ではない。
しかし、Solarisで稼動しているシステムであれば、OSのバージョンアップだけでパフォーマンスが向上する可能性がある。ハードウェアなどに高い投資をする前に、OSのバージョンアップでパフォーマンスの変化をチェックする価値は十分にある。
■ Linuxアプリケーションとのバイナリ互換
互換性に対するこだわりは、既存のSolarisだけにはとどまらず、Linuxアプリケーションにも及んでいる。それが、Linuxアプリケーション環境である。これまで「Project Janus」のコードネームで呼ばれていたLinuxアプリケーション環境は、LSB(Linux Standard Base)に準拠している。特に「ターゲットとしているLinuxのディストリビューションは、Red Hat Linux Enterpriseである」とサンは明言している。
Linuxアプリケーション環境はエミュレーション機能ではない。LinuxのアプリケーションをSolarisで動かす場合に問題になるのは、それぞれのOSでシステムコールが異なることだが、Solaris 10のカーネルはLinuxアプリケーションからのシステムコールをそのまま受け入れることができる。エミュレーションの場合、システムコールをSolaris用にマッピングするという手順が必要になり、どうしてもオーバーヘッドが発生してしまう。しかし、ネイティブにシステムコールを受け入れることが可能になったことで、この問題は解決する。
これまでLinuxを採用しているユーザーの多くは、Linuxが低コストで入手できること、オープンソースであることなどが採用の理由となっていた。しかし、主要なLinuxのディストリビューションとSolaris 10を比較した場合、パフォーマンス、セキュリティ、ファイルシステムなど、Solaris 10の方がOSとしての機能において優位なことは疑う余地がない。
さらにライセンス料金が無償になったこと、これからオープンソース化される可能性が高いことをふまえれば、ユーザーがこれからもLinuxを利用し続ける理由は希薄になる。対応プラットフォームの問題もSolaris 10がx86など多くのアーキテクチャに対応したことで解決している。これで既存のLinuxアプリケーションが、手を加えることなくSolarisの上で動作するとあれば、LinuxからSolarisへの乗り換えを検討するユーザーが多くなることは間違いないだろう。
■ Sun Java Desktop Systemを標準搭載
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Sun Java Desktop System
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これまでLinuxでのみ動作していた統合デスクトップ環境「Sun Java Desktop System(以下、JDS)」が、Solaris 10に標準搭載される。GUIによる直感的な操作が可能になるだけではなく、ワープロや表計算機能を持つ「StarSuite」、Webブラウザの「Mozilla」、メールやカレンダーのクライアントアプリケーションなども標準で搭載される、
高いスキルの管理者にとってなんでもないコマンドラインの操作も、GUIに慣れた多くのユーザーにとっては非常に難解に感じられる。この問題を解決するのがWindowsとOfficeのセットに近いJDSである。しかもユーザーライセンスは無償となれば、サーバーだけでなくクライアントPCにSolarisを導入しようと考える人も増えるかもしれない。
■ 容量と信頼性が向上したファイルシステム
Solaris 10では、Solaris ZFS(以下、ZFS)と呼ばれる新しいファイルシステムが追加される。ZFSでは、128ビット・アドレッシングによって、ほぼ無限に近い容量のファイルシステムを構築することができる。
ZFSではストレージプールと呼ばれる仮想化の概念を持っており、ドライブを追加するだけで簡単にファイルシステムを拡張するなど柔軟な管理が可能になっている。それ以外にもストレージ管理を簡素化する機能が搭載されており、たとえばファイルシステムにマウントする際に入力するコマンドラインが減少している。また、ブロック単位での64ビット・チェックサムによって、99.99999999999999999%(9が19個)の信頼性を保ち、保存データの不整合を強力に防ぐことが可能だ。さらに、目的データへのアクセスも高速化されている。
ミッションクリティカルな環境では、データの信頼度は非常に重要な意味を持っている。ZFSの登場は、扱えるデータ容量が大きくなったことよりも、データの信頼性が確保されたことの方が重要である。データの信頼性向上は、そのままシステムの信頼性向上にもつながる。もちろん、ファイルシステムの管理が容易になったことや、ファイルアクセスが早くなったこともZFSの大きな意義である。
後編では運用の面で有用な新機能を取り上げる。
■ URL
サン・マイクロシステムズ株式会社
http://jp.sun.com/
製品情報
http://jp.sun.com/solaris/10/
■ 関連記事
・ Solaris 10の新機能を探る【後編】(2005/01/07)
・ Solaris 10が正式発表、Red HatなどLinuxを強く意識(2004/11/30)
( 北原 静香 )
2005/01/06 00:00
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