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仮想化技術を採用した新世代レンタルサーバーサービスの中身とは?


 株式会社テイルバックは、10月3日より最新の仮想化技術を採用したレンタルサーバーサービスの提供を開始した。このサービスは、VMwareの仮想サーバー「VMware ESX Server」とDatacore Softwareの仮想ディスク「SANmelody」を高度に統合した新世代のシステム「Grow Server」に基づくものだ。今回は、株式会社テイルバック 代表取締役社長の山田敏博氏とシステムインテグレーション部 インフラグループ エンジニアの高見禎成氏に、レンタルサーバーの歴史、GrowServerの技術概要、今後のロードマップなどをお聞きした。


株式会社テイルバック 代表取締役社長の山田敏博氏
株式会社テイルバック システムインテグレーション部 インフラグループ エンジニアの高見禎成氏

1Uラックマウントサーバーに代わるサーバーの仮想化技術

 SolarisやHP-UXといった商用UNIX系OS、OracleやDB2といった商用アプリケーションによるシステム構築が主流だった90年代後半を経て、2000年にさしかかる頃にはLinuxが台頭し始めた。それと同時に、Apache、PHP、MySQL、PostgreSQLといったオープンソースソフトウェアによってシステムを構築する時代が訪れたのも記憶に新しい。

 また、こうしたオープンソースソフトウェアを生かす器として、ミドルタワーPCやコンパクトPCに代わる1Uラックマウントサーバー(以下、1Uサーバー)が登場した。1Uサーバーは、限られたスペースに多数のサーバーを配置できることが大きな特徴だが、ディザスタリカバリや負荷分散などを視野に入れると必ずしもベストな選択肢とはいえない。基本的に1台ずつをバラバラに使うだけなら問題ないが、複数のサーバーを組み合わせた環境では、システムを構成するすべてのサーバーに対して1台ずつOSやソフトウェアのインストール、設定を行わなければならないからだ。これにより、システム全体の構築にはかなりの時間がかかり、納期も大幅に遅れてしまう。


レンタルサーバーの歴史(出典:株式会社テイルバック、以下同様)。テイルバックは、ミドルタワーPCをデータセンターに置く最初期の時代からレンタルサーバーサービスを提供し続けている。その最新型が仮想化技術に基づくGrowServer 第三世代のサービスだ。
 そこで、テイルバックはサーバーの仮想化技術に着目した。これまでサーバー関連の仮想化技術といえば、社内のサーバー統合などで活用されるケースが多かったが、こうしたサーバー統合のメリットを享受できるのは、多数のサーバーを所有する比較的規模の大きな企業に限られるのが実情だ。テイルバックは、このような仮想化技術の長所を逆手にとり、多数の企業に多数のサーバーをレンタルするというビジネスモデルを思いついたという。

 「GrowServer以前は、1Uサーバーなどを用いてレンタルサーバーサービスを提供していましたが、その当時は5人ほどの管理者で全体を回していました。しかし、新規の納品が間に合わないくらい多忙だったのです。これに対し、GrowServerの管理者は私を含む2人で回していますが、200台以上の仮想サーバーを十分に管理できています。仮想サーバーの基本的なインストール作業は、ひな形となるゴールドマスターのイメージファイルを展開するだけです。あとは、IPアドレスの設定に加え、お客様の要望に基づくWebサーバーやDBサーバーの細かい設定、ドキュメントの作成などで済みます。これにより、お客様への最終的な納期は1週間以内に短縮されています。これほどの効率アップは、仮想化技術がなければ実現できませんでした(高見氏)」


GrowServerのターゲットは、1台あたり月額数万円から数十万円のセグメントだ。
 レンタルサーバーサービスは、激しい価格競争が繰り広げられている個人向けの低価格レンタルサーバー(1台あたり無料または月額数千円)、情報配信サイトや電子商取引サイト、会員サイト、社内サービスなどを対象とした専用レンタルサーバー(月額数万円から数十万円)、大規模なポータルサイトやネット証券といった本格的なサイト向けの大規模なハウジング(月額数十万円から数百万円)という3つのセグメントに大きく分類される。GrowServerがターゲットにしているのは、1台あたり月額数万円から数十万円という2つめのセグメントだ。


仮想インフラソフトウェアにVMware ESX Serverを採用

 GrowServerのコンピューティングプラットフォームは、4基の64ビットXeon MP 3.66GHz、32GBのメインメモリを搭載したIBM eServer xSeries 366上に仮想インフラストラクチャソフトウェアのVMware ESX Serverを乗せたものだ。この仮想インフラストラクチャを複数の顧客に分割する形をとる。具体的には、CPU、メモリ、ディスク、トラフィックの割り当て方によってS、A、B、C、D、Eという6つのグレードに分かれ、月額は1台あたり30万円から3万円に設定されている。

 「ハウジングは戸建てを丸ごと借りる感じですが、GrowServerはちょうど超高層マンションとマンスリーマンションを組み合わせたような形となります。非常に堅牢で高性能な物理サーバー上に仮想サーバーを複数作ることで、低価格ながらデータセンターレベルのサービス品質を実現しています。しかも、メモリやディスクのサイズを柔軟に変更できますから、システムの拡張もきわめて容易です」

 「このため、GrowServerはネットビジネスに最適なプラットフォームといえます。ネットビジネスは、当たるか当たらないかは実際にサービスを始めてみないと分かりません。そこで、最初は小さく安全に始めてみて、当たったらすぐにシステムを増強する形をとればよいわけです。GrowServerなら一週間以内でシステムを拡張できますので、一気にビジネスが広がったとしても即座に対応できます(以上、高見氏)」


GrowServerの料金体系。CPU、メモリ、ディスク、トラフィックの割り当て方によって6つのグレードが用意されている。Bのグレードが最も売れているという。
GrowServerは、大きな物理サーバーを多数のユーザーが共有する超高層マンション形式でありながら、同時にマンスリーマンションのような柔軟性も併せ持っている。

 テイルバックが、GrowServerの仮想インフラストラクチャソフトウェアとしてVMware ESX Serverを採用した理由は、インテリジェントなワークロード管理を行うVMotionテクノロジにあったのだという。VMotionテクノロジは、ユーザーにまったく影響を及ぼすことなく仮想インフラストラクチャ全体のリソースを迅速に再構成および最適化するための技術だ。これにより、サービスを中断することなく稼働中の仮想マシンを同じSANに接続された別の物理サーバーに移動したり、仮想マシンを暫定的に別の物理サーバーに移動してダウンタイムなしに物理サーバーのメンテナンスを行うといったことが可能になる。

 「1Uサーバーからなるシステム環境では、その中の1台が止まってしまえば、何らかの障害が発生してしまいます。しかも、1Uサーバーは低価格であるがゆえに信頼性はあまり高くありません。その点で、VMware ESX Serverの基盤となる4CPUの高性能サーバーは、1Uサーバーとは比較にならないくらいの信頼性を持ちます。このような止まることのない物理サーバー上で複数の仮想サーバーを走らせることにより、従来の1Uサーバーにはない高い信頼性が得られるのです。さらに、仮想サーバーが走る物理サーバーをVMotionテクノロジによって切り替えられることで、大規模で高価なハウジングにも匹敵する可用性を同時に達成しています(高見氏)」


ディスク仮想化ソフトウェアにDatacore SoftwareのSANmelodyを採用

DASからSAN、さらにはディスクの仮想化などを経て、現在の第三世代に到達した。次の第四世代では、Oracle RAC、DB2、MySQLを対象としたデータベースのハイアベイラビリティ化、さらには別ロケーション間での広域ロードバランシングを目標に掲げている。
 GrowServerのディスクは、世代ごとに大きな変遷があった。第一世代では、Fibre Channel接続のストレージを直結するDAS(Direct Attached Storage)を採用していた。このため、1台の物理サーバー上で複数の仮想サーバーを用意することはできたものの、2台の物理サーバー間で仮想サーバーを移動するVMotionテクノロジはサポートできなかった。そこで、第二世代では、VMotionテクノロジを活用できるようにストレージの接続をSANに切り替えた。ただし、単一のディスク筐体を複数の物理サーバーで共有する形をとっていたため、ディスクが停止すると仮想サーバー上のサービスも継続できなくなる。

 現行の第三世代では、この問題を解決するためにディスクも仮想化された。仮想ディスクコントローラには、Datacore SoftwareのSANmelodyを採用している。こうした仮想化コントローラにはIBMのSAN Volume ControllerやFalconStorのIPstorといった選択肢もあるが、GrowServerでSANmelodyを選択した理由を山田氏は次のように説明する。


テイルバックの計測によるディスクパフォーマンス結果。第二世代と比較して読み出しで最大70倍、書き込みで最大2倍というアクセス性能が得られている。
 「最終的には、パフォーマンスの高さとVMware ESX Serverとの相性の良さが決め手となりました。また、大容量のディスクキャッシュを積めた点も特筆すべき点でしょう。SANmelodyは、WindowsがインストールされたIAサーバー上で動作しますので、IAサーバーに装着された大容量のメインメモリをキャッシュとして存分に活用できます。GrowServer 第三世代では、SANmelodyのコントローラ上に32GBのメモリをフル搭載しています。これは、ディスクパフォーマンスの向上に大きく寄与しています。実際、弊社の計測結果によれば、第二世代と比較して読み出しで最大70倍、書き込みで最大2倍というアクセス性能が得られています」

 SANmelodyのディスクコントローラには、ディスク筐体としてIBM TotalStorage DS4100が接続されている。ここには250GBのシリアルATA HDDが搭載されており、6台ずつでRAIDグループが構成されている。具体的にはRAID 1+0、すなわち2台のHDDでミラーリングを行いつつ、これらを3セットまとめてストライピングを行う形をとっている。また、コントローラとディスク筐体をもう1セット用意し、両者の間でミラーリングを行っている。テイルバックはこのような構成をRAID (1+0)+1と呼んでいる。これにより、コントローラやディスク筐体の障害、さらには機器の増設やメンテナンスといった計画的停止に対してもディスクアクセスへの可用性が失われず、仮想サーバーの運用をそのまま継続できる。

 「当初はディスク筐体内のRAIDグループとしてHDDの利用効率が高いRAID 5を検討していました。しかし、Datacore Softwareの副社長からRAID 5では内部トランザクションが増えてアクセス性能が低下しやすいため、RAID 0を採用すべきとのアドバイスを受けました。確かに2台のディスク筐体でミラーリングを行っていますので、内部がRAID 0でもデータを最低限は保護できますが、これでは弊社が想定していたサービス品質を満たすことができません。そこで、最終的には内部にもミラーリングを取り入れたRAID 1+0を選択したというわけです(山田氏)」


GrowServer 第三世代のシステム構成。システムを構成するハードウェアのほとんどが二重化されており、ハードウェア自体の耐障害性も極めて高い。この上で高度に仮想化された仮想サーバーが動作するため、まさしくノンストップのサービスを提供可能だ。 GrowServer 第三世代のディスク構成。仮想ディスクコントローラには、Datacore SoftwareのSANmelodyが動作するWindows系IAサーバーを使用している。ディスク筐体には、大容量のシリアルATA HDDが搭載されたミドルレンジクラスのディスクサブシステムを採用している。

時代に合わせた最新技術を統合して常に最良のサービスを提供する

 現在は、4CPUの物理サーバー上で展開しているが、8CPU以上の物理サーバーを用いればさらにパワフルかつ多数の仮想サーバーを提供できる可能性がある。実際、テイルバックは第三世代の導入時に8CPUの物理サーバーも検討の対象になったという。

 「8CPU以上のサーバーでは、メインメモリの容量がボトルネックとなってしまいました。WebサーバーやDBサーバーは多くのメモリを必要としますので、それぞれの仮想サーバーに対するメモリ容量が最大となる構成として4CPUの物理サーバーに落ち着いたという経緯があります。また、CPUのパフォーマンス面についてですが、現時点ではユーザーのゲストOSがまだそれほど高負荷の処理をしていません。現在の4CPUサーバーでも、CPU使用率は平均して40%くらいですから、まだまだ余裕があります。さらに、I/O性能のボトルネックも無視できません。現在は2GbpsのFibre Channelで物理サーバーとディスクコントローラ間を接続していますが、仮想サーバーの台数をあまり多くするとディスクI/Oが追いつかなくなってしまいます(高見氏)」

 ムーアの法則によれば、集積回路の集積度や処理性能は約18カ月に2倍になる。つまり、レンタルサーバーに内蔵されるプロセッサの処理性能も18カ月ごとに2倍となるため、購入したレンタルサーバーをそのまま使い続けていくと、いずれはコストパフォーマンスの悪いサービスしか提供できなくなってしまう。従って、何年か使い続けたら、既存サーバーのサービスをより高性能な新しいサーバーへと引き継いでいくのが理想的である。

 しかし、旧サーバーから新サーバーへのサービス移行は、いうほど簡単な作業ではない。というのも、新サーバーの構築には旧サーバーのときと同等の労力が課せられるからだ。例えば、OSやミドルウェア、アプリケーションなどを新たに導入しなければならない点は旧サーバーとまったく変わらない。また、OSやミドルウェアがバージョンアップすれば、アプリケーション側の大きなプログラム修正が必要とされるケースもある。サービスがきっちり動くことを確認する検証にも十分な時間をとらなければならない。

 これに対し、仮想サーバーであれば、VMotionテクノロジを活用することでサービスを止めることなく時代に合わせてハードウェアを更新していける可能性が高い。

 「GrowServerのハードウェアは、だいたい4年リースで契約しています。このため、3年間動かしたところで、新しいハードウェアへと1年かけて移行していく形をとる予定です。GrowServerのサービスを一度ご契約いただければ、あとは月額料金のみで定期的に性能アップしていくと考えていただいてかまいません。今後も新しい技術を次々と統合していきますので、最新技術のメリットを継続的に提供していきます。また、弊社のソフトウェア環境は、例えばDebian GNU/Linuxに代表されるように、できる限り長く使い続けられるものをチョイスしています。このため、なるべく既存のソフトウェアに影響を与えないようにハードウェアの更新を図っていきたいと考えています(山田氏)」

 レンタルサーバーの世界にとって、仮想化技術はこれからの重要なキーワードになるかもしれない。



URL
  株式会社テイルバック
  http://www.tailback.co.jp/
  GrowServer
  http://www.growserver.jp/

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( 伊勢 雅英 )
2005/12/02 00:00

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