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リムーバブルHDDで簡単バックアップ! 日本HPの「StorageWorks RDX」を試す


 HP StorageWorks RDXは、小規模な企業やSOHOや個人事務所のデータのバックアップを簡単に行える装置として、1月に発売された新製品だ。リムーバブルHDDを利用するほか、簡単バックアップをうたうなど、とてもユニークな製品に仕上がっているHP StorageWorks RDXを日本HPからお借りできたので、本当に簡単にバックアップができるのか、試してみた。


バックアップは面倒?

 ある程度の企業になれば、サーバールームにサーバーを配置して、バックアップも専門のITスタッフが管理している。しかし、小規模な企業では、専用のサーバールームも持たずに、オフィスの片隅に配置されたサーバーでさまざまなシステムを運用している場合が多い。また、SOHOや個人事務所、数人の社員しかいない支店や支社では、サーバー(あるいはサーバー相当のPC)が動いていても、誰も管理していないことが多い。このような状況では、誰もバックアップに関して、気にしていないというのが本音だろう。

 もし、サーバーにトラブルが起こり、HDDがクラッシュしてしまった場合などは、システムを再インストールすることになるし、何よりも問題になるのはデータが消えてしまうことだ。データがなくなる恐ろしさは、実際にこういった事態にあってみないとわからないかもしれない。

 こういった事態を未然に回避するためには、バックアップが必須となる。しかし、専用のバックアップソフトを導入したり、テープ装置を購入したりして、定期的に(1日1回とか週2回とか)バックアップを行うことにしても、誰かが専用のバックアップソフトを起動して、テープを入れて、バックアップ作業を行う必要がある。バックアップ作業自体は、それほど複雑なことではないが、いろいろと面倒なことがあるのは確か。このため、誰も積極的にやりたがらない、というのが本音のところだろう。

 しかし、使ってみてわかったことだが、HP StorageWorks RDXは、面倒くさがりな人のために開発されたといってもいいバックアップ装置だ。専用ソフトをインストールしてStorageWorks RDXをUSBで接続すれば、すぐにバックアップが始まる。特に複雑な手順はいらないため、バックアップをまったく意識する必要がないのである。


StorageWorks RDXの外観

StorageWorks RDX本体(左)と専用HDDカートリッジ(右)

背面には電源端子とUSB端子、冷却ファンがあるだけのシンプルな構造だ
 StorageWorks RDXは、いわばUSB接続のリムーバブルHDDといったモノだ。本体自体は、18cm(縦)×10cm(横)×5cm(高さ)の長方形で、内部にはカートリッジを入れる空洞がある。

 実際に本体を持ってみると、ある程度の重量がある。また、本体には、ゴムが張り付けられているため、サーバーやPCの上に置いたり、デスクの上に置いたりしても、簡単に落ちることはない。裏側を見ると、端子としてはUSB端子と電源端子だけ。後は、ファンの吹き出し口があるだけだ。これだけシンプルだと、接続を間違うことはないだろう。

 サーバーとの接続には、このUSB 2.0インターフェイスを使用する。USB 2.0専用というわけではないが、USB 1.0ではデータの転送レートが遅すぎて、バックアップ時間が非常にかかる。このため、StorageWorks RDXを使用する上では、USB 2.0インターフェイスが必須となっている。USB 2.0なら30MB/秒でバックアップが行える(つまり、1時間で108GBのバックアップができる)。なお、今回発売されたStorageWorks RDXは外付け型だが、米国では内蔵型もリリースされている。外付け型でも、内蔵型でも、接続はUSB 2.0となる。


1mの落下に耐える2.5型HDDの専用カートリッジを使用

専用のHDDカートリッジ

カートリッジを本体に収納したところ
 カートリッジ自体は、本体に比べると非常に軽い。タバコ2箱分ぐらいの重さだ。ここには、2.5型のHDDが入るようになっている。日本HPでは、160GB、500GBのカートリッジを発売(将来的には1TBも予定)しているが、カートリッジは専用ケースに入っているため、市販の2.5型HDDをそのまま利用することはできない。

 ただ専用である分、カートリッジ自体は非常にタフにできている。日本HPによれば、高さ1mから落としても、大丈夫なように作ってあるとのこと。さすがに、床にたたきつけるようにぶつけてしまっては駄目なのだろうが、デスクから落としたぐらいなら大丈夫だという。このあたりは、バックアップを考えたメディアであるため、HDDのタフさということも設計思想に入っているのだろう。

 カートリッジには、書き込み禁止のボタンが用意されている。ボタンを書き込み禁止位置にスライドすれば、そのカートリッジにはデータの書き込みができなくなる。これなら間違ってバックアップ済みのカートリッジに上書きすることもない。

 本体にカートリッジを挿すときは、本体の奥までカートリッジを差し込めばOK。カートリッジを抜くには、イジェクトボタンを長押しする。そうすれば、内部のモーターが、カートリッジを押し出して、カートリッジを抜きやすくしてくれる。力任せに引き抜いたりすることがないため、トラブルが起こることもないだろう。なお、稼働中にカートリッジを間違えて抜いてしまうことがないよう、カートリッジをロックする機能も備わっている。


StorageWorks RDXにHDDカートリッジを挿入するところ HDDカートリッジの上面。右下の赤いスイッチが書き込み禁止スイッチ HDDカートリッジの背面

使いやすさは専用ソフトがもたらす

 StorageWorks RDXには、バックアップ/リストア用の専用ソフト「RDX Continuous Data Protection」(以下、CDP)が付属されている。CDPは、Windows XP/Vista、Windows Server 2008/2003、Red Hat Enterprise Linux、SUSE Linux Enterprise ServerなどのOSに対応している。ただ、実際にWindows Serverにインストールしてみると、64ビット環境(x64)にはインストールできなかった。サーバーでは、64ビット環境が多くなっていることを考えると、早急に64ビット環境に対応してほしい。

 CDPをインストールして、StorageWorks RDXを接続すると、カートリッジの挿入をうながされる。新しいカートリッジを挿入すると、カートリッジのタイトルを入力するだけで、最初のリカバリポイントを作成するためのバックアップが自動的に開始される。バックアップの時間に関しては、使用しているHDDの容量などによって左右されるが、Windows Server 2008のOSをインストールしただけの環境では40分ほどかかった。

 StorageWorks RDXをCDPで利用すると、自動的にデータ量を1/2に圧縮する(データの種類によって、正確な圧縮率は異なる)。このため、160GBモデルであれば、320GBのバックアップ装置として利用することができる。


StorageWorks RDXに付属しているCDをインストールすれば、自動的にドライバとCDPがインストールされる インストールすると、このような画面が立ち上がってくる StorageWorks RDXは、USBで接続する。もし、データカートリッジが挿入されていないと、OSからはリムーバブルHDDをして見える

CDPをインストールして、StorageWorks RDXをUSBで接続すれば、自動的にデータカートリッジを挿入するようにメッセージが出る 使用していないデータカートリッジを挿入し、バックアップで使用するかどうかを設定する。この後、データカートリッジのタイトル名を入力する。このタイトル名でカートリッジを区別するのだ データカートリッジが認識されると、自動的に初回のスナップショットが作成される

バックアップされているデータカートリッジを挿せば、エクスプローラでドライブとして見える。ここには、バックアップされているデータが表示されているので、ユーザーは必要なファイルをコピーすればいい

VSSを使って、更新されたファイルのバックアップが作成されている。もし、古いファイルを戻したければ、右クリックして古いファイルを確認できる。ユーザーは、このファイルをコピーすればOK
 リストア自体も非常に簡単だ。WindowsのエクスプローラにStorageWorks RDXのドライブアイコンが表示されている。ここをクリックすれば、バックアップされているドライブが見える。ここから必要なファイルをもとのサーバーのHDDにコピーすればいい。

 また、間違えてファイルを上書きしてしまったときにも、慌てることはない。戻したいファイルを右クリックすれば、「HP RDXバックアップ」という項目がある。ここには、ファイルが作成されてからすべての更新ファイルがバックアップされているため、それを物理ドライブにバックアップすればOKなのだ。

 これは、Windows Server 2008のVSS(Volume Shadow Copy Service)を利用することで実現されている。StorageWorks RDXが接続されていれば、最初のスナップショットを作成した後に、追加/変更されたファイルはVSS機能を利用して、自動的にStorageWorks RDXに保存される。

 このため、初回のスナップショットは、時間がかかるが、その後は、それほど時間がかからずにバックアップができる。もちろん、定期的にサーバーのHDD全体のスナップショットを取る。つまり、CDPを使っていれば、ユーザーはまったくバックアップのことを気にしなくても、HDDのバックアップが行われていることになる。

 さらに、StorageWorks RDXを便利にしているのは、HDDが破損して、OSが起動しなくなったときだ。StorageWorks RDXに用意されているブートCDを利用すれば、新しいHDDに交換したとしても、システムを自動的にリカバリすることができる。Windows OSをインストールなどしなくても、StorageWorks RDXから直接リストアできる。実際に試してみると、Windows Server 2008をインストールしただけの環境でも、リストアには1時間ほどかかった。

 なお、テキストファイルなどであれば、StorageWorks RDXのフォルダにあるものの中身を直接確認できたが、PNGなどの画像ファイルはそのままでは見ることができなかった。もちろん、一度リストアしてから確認すればいいのだが、このあたりも直接見られるのであれば、さらに便利になるのではないか。


OSが起動しなくてなっても、付属のCDからブートしてのリストアが可能 複雑な操作は特に必要なく、自動的にリストアが完了する

機能を絞って使いやすくしたバックアップ製品

 StorageWorks RDXを実際に使ってみると、結構便利だ。CDPをインストールすれば、複雑な設定などはまったく必要ない。これで、自動的にスナップショットを作成したり、VSSにより増分バックアップをしたりしてくれる。ただ、ユーザー自身が、スケジュールを設定したり、いろいろ細かなことを設定したいと思ったりしても、そういった項目が存在しない。すべて、CDPがあらかじめ設定されている通りにしかバックアップできない。

 初心者ユーザーにとっては、これほど手軽なバックアップシステムはないが、少し凝ったことをやりたくなると、CDPでは不満に感じるだろう。こういった意味では、StorageWorks RDXは、オフィスの机の下などに置かれているファイルサーバーや、ワークステーション、PCなどのバックアップシステムとしてはお手軽でぴったりだ。日本HPではサーバーを意識しているようだが、まだx64環境をサポートしていないこともあり、現状では、重要なデータが入っているPCのバックアップに向いているのではないかと感じた。

 ただ、バックアップするデータ量が多くなると、データカートリッジを複数購入したり、大きな容量のデータカートリッジが必要になったりする。500GBのデータカートリッジが7万8000円ということを考えれば、テープバックアップなど、ほかの手段の方がコスト的に安いこともあるだろう。

 このあたりは、コストとのバランスを考えて導入すべきだろうが、CDPの手軽さは、コストが高くなることを考慮に入れてもメリットは大きい。



URL
  日本ヒューレット・パッカード株式会社
  http://www.hp.com/jp/

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( 山本 雅史 )
2009/02/06 08:56

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