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Office 12でXMLが標準フォーマットに-その狙いは


 米Microsoftは、次期Microsoft Office「Office 12」(開発コード名)で標準ファイル形式にXMLを採用することを明らかにした。Office 12は、次期Windows「Longhorn」(同)と同じく、年内にベータ版、来年後半に正式版が登場する予定だ。MicrosoftがWebサイト上で6月6日に公開した情報を基に、XMLから新Officeを探ってみよう。


 5月中旬に開催した「CEO Summit 2005」で、会長兼チーフソフトウェアアーキテクトのBill Gates氏は「New World of Work」(インフォメーションワークの新しい世界)を描いて見せた。データを効率よく探しだし、活用することの重要性を強調したもので、Office 12にも言及している。このテーマは6月上旬に開かれた「Tech・Ed 2005」でも踏襲されており、Steve Ballmer CEOが同じ趣旨の基調講演を行っている。

 そのデータ管理という視点からみて、Office 12の最大の特徴となるのは、標準ファイル形式にXMLを採用する点だ。

 「.NET」を推進しているMicrosoftは、以前からXMLを強力に支援してきた。Webサービスに関連した各種標準化の動きに参加しているほか、自社製品では「Office 2000」から部分的にサポートを始めており、その後、「Office XP」「Office 2003」「Office Infopath」などに広げてきた。

 Office 12で採用されるXMLは、「Microsoft Office Open XML Formats」という同社独自のXML仕様で、XMLと圧縮技術のZIPをベースとしている。これにより、Word、Excel、PowerPointの拡張子はそれぞれ、「.docx」「.xlsx」「.pptx」となる。また、現行の「.doc」との互換性もあるという。

 MicrosoftがWebサイトに掲げているOffice Open XML Formatsのメリットを大きく3つある。すなわち、1)相互運用性や情報共有、2)データサイズのコンパクト化、3)セキュリティおよびデータ復元―だ。

 1)は、データベースなどのバックエンドシステムや他社システムとの連携などが容易になる。たとえば、従業員は自分のPC上に作成した情報を直接ビジネスプロセスに接続できる。逆の例では、各種データベースにある最新の情報にアクセスし、PCで分析ツールを用いてリアルタイムに分析やレポート作成ができる。

 2)は、ZIP技術をベースとすることで実現した。ファイルサイズは、現行のOffice 2003の最大75%縮小できるという。このため、企業全体でみると、ストレージや帯域の無駄な利用やコストの削減につながる。

 3)は、新仕様ではファイル内のデータはセグメント化され、分散して保存される。このため、部分的にデータが損傷した場合も、ファイル全体が駄目にならずに済む。また、ファイル開示時に損傷を検知し、復旧を試みる技術も含まれているという。セキュリティでは、組み込まれたコードを実行しないよう、デフォルトで設定されていることなどを挙げている。

 さらに重要な点は、MicrosoftはOffice Open XML Formatsをロイヤルティーフリーで提供するとしていることだ。開発者は自社ツールに自由にこの仕様を統合できることになる。幅広い普及を狙うMicrosoftの意図がうかがえる。


 だが、Office 12の独走を阻もうとするアプリケーションもある。このところ、オープンソースのオフィスアプリケーション「OpenOffice.org」(OOo)の躍進が目覚しく、公共団体や学術機関などを中心にMicrosoftのOfficeから移行する事例も出てきている。OOoは、Microsoft Officeとの互換性を持ち、なにより無償で利用できる点が特徴である。

 また、OOoに関連した最近のニュースとして、eビジネスの標準策定団体OASIS(Organization for the Advancement of Structured Information Standards)が5月末、「OpenOffice.org 2.0」で採用しているXMLベースのファイル仕様「Open Document Format for Office Applications(OpenDocument)v1.0」をOASISの標準として認定した。OASISによると、今後は作業グループベースで同仕様をアプリケーションやユーザーレベルに拡張するなどを計画しているという。OASISはBtoBで影響力が強い団体だけに、OASISの認定がどう影響するかが注目されている。



URL
  「Office 12」の標準フォーマットとしてXMLを採用に関するニュースリリース(英文)
  http://www.microsoft.com/presspass/press/2005/jun05/06-01OfficeXMLFormatPR.mspx
  「Microsoft Office Open XML Formats」のQ&A(英語)
  http://www.microsoft.com/presspass/features/2005/jun05/06-01XMLFileFormat.mspx
  OASIS、OpenDocumentを認定に関するニュースリリース(英語)
  http://www.oasis-open.org/news/oasis_news_05_23_05.php


( 岡田陽子=Infostand )
2005/06/13 09:00

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