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吉と出るか凶と出るか、米eBayのSkype買収
オンラインオークション最大手の米eBayが、ルクセンブルクのSkype Technologiesを買収すると発表した。eBayは、現金と株式交換合わせて約26億ドル相当で、この注目の新興VoIP企業を手に入れる。さらに、Skypeの業績に応じて3~4年後に最大15億ドルを追加で支払うとしている。このニュースに対する業界の反応はさまざまだ。
eBayはドットコムブーム時に立ち上がったオンラインオークション会社で、米Yahooや米Amazon.comなどとともにインターネットバブルを生き抜いた有数のオンラインブランドだ。一方、Skypeは、PtoPのファイル交換ネットワーク「Kazaa」を仕掛けたNiklas Zennstrom氏らが2002年に立ち上げたVoIPプロバイダである。従業員は約200人。キャッチーな名前だけでなく、容易なインストール、使いやすさ、ユーザー同士の無料通話といった特徴で、みるみるうちに利用者を増やしていった。現在、ユーザー数は5400万人。毎日15万人のペースで増え続けており、常時350万人が世界からオンライン中という。
こうしたSkypeに魅力を感じた企業は多いようで、いくつかのビッグネームが買収を提案した。ここ数カ月の間に、Rupert Murdoch氏のNewsCorp、米Googleなどの企業がSkypeの買収を試みたという。だが、意外にも、最終的にSkypeを手に入れたのはeBayだった。
eBayのSkype買収に関する各メディアの報道を見ると、否定的な見解が目立つ。たとえば、買収の価格やその意図だ。
まず、26億ドルも使って買収する必要があるのかというのがある。eBayは、SkypeのVoIP機能を自社のオークションシステムに統合して、オークションの売り手と買い手のコミュニケーションを円滑にできると述べている。しかし、それだけなら提携すれば十分だとも言える。また、通話機能をオークションに組み込んでしまうことについて、一部には、言語の壁がある非英語圏のユーザーにハンディをもたらすと危惧する意見もあった。
英Times紙は、今年に入っての業績行き詰まりを背景に、eBayがコアのオークション事業からの拡大を狙ったものだと分析している。同紙は、eBayに近い筋の人物の言葉として、「10年後には、キーボードでインターネットにアクセスする時代ではなくなっているだろう。eBayは常に市場の先端にいる必要がある」というコメントを紹介している。
このほか、Reutersなどは、Skypeのユーザーが否定的な反応を示したことを取り上げている。Skypeのサイト内にあるフォーラムのアンケート調査によると、70%が一緒になることに反対で、賛成はわずか22%だったという。Reutersはこれを引用しながら、Skypeがこれまで獲得してきたコアユーザーを失う可能性もあると指摘している。
一方、買収を肯定的にとらえる意見では、ユーザーの半数が欧州にいるSkypeと、ユーザーの大半が米国ユーザーであるeBayが合体することで、ユーザー層の拡大が図れると評価するものが多い。また、Skype側のメリットとして、eBayのオンライン支払い機能によって、有料サービスへの誘導がスムーズになるという見方もあった。
米Fortune誌は、eBayとSkypeの共通点に注目している。両社のサービスの本質はコミュニティのメンバー同士のやりとりであり、両社とも、これを容易にするという点で長けているという視点から分析している。“個人が貢献する経済”のメカニズムが機能する事業体を目指すeBayにとって、Skypeの買収は意味あるものだという。
ともかく、この買収がVoIPに焦点を当てたものであることは間違いない。
米TMCnetは、eBayのSkype買収について、コミュニケーションにおける音声の重要さを取り上げている。つまり、音声はインターネットの新しいフェーズを作るものであり、買収額の大きさはVoIPの潜在的可能性や重要性の表れであるというのだ。
Skypeは、立ち上がって間もないVoIPの火付け役を果たしたが、そのサービスは、ユーザー同士の利用からは利益をあげられない。同社は収益を、固定・携帯電話との通話を可能にする「Skype Out/In」に頼っている。今年度6000万ドル、来年度2億ドルの売上高を見込んでいるが、黒字転換の見通しは立っていないといわれている。収益モデルの確立を迫られていた。
その一方で、GoogleやMicrosoft、Yahooなどの既存ブランドが音声通信機能を取り込む動きを見せている。単独では立ち向かえないというのは、Skype自身が最もよく分かっていたことかもしれない。
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URL
Reuters
http://www.reuters.com/
米Fortune
http://www.fortune.com/
米TMCnet
http://www.tmcnet.com/
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2005/09/26 08:59
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