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仮想化技術が急速に浸透、オープンソースのXenが加速


 1台のサーバー上で複数のOSを仮想的に動かす「仮想化技術」が急速に浸透している。米Yankee Groupのグローバル企業調査(7月12日発表)によると。3分の2が仮想化技術を「導入済み」または「計画中」と回答、「導入計画なし」は4%にすぎなかった。昨年末、「来年は仮想化の年」という声があちこちから聞かれたが、まさに、その通りになっているようだ。


 仮想化ブームに火をつけたのは、同分野の草分け的存在であるVMware(米EMCが2003年に買収)だった。主力製品は「VMware ESX Server」。Yankee Groupの調査では現在シェア55%で最大手となっている。

 だが、現在の急速な認知・導入に大きく貢献しているのは、オープンソースの仮想化プロジェクト「Xen」といえるだろう。Xenは、2002年に英ケンブリッジ大学で開発が始まったオープンソースプロジェクトだ。現在、同大学に籍を置き、プロジェクトを率いるIan Platt氏は米XenSourceを立ち上げて、商用バージョンを提供している。

 Xenの技術面の最大の特徴は「Paravirtualization」だ。VMwareや米Microsoftの独自技術がOS上でハードウェアをエミュレートするのに対し、XenではOSとハードウェアの間にレイヤをはさみ、そこで仮想マシン実行に必要な管理を行う。Xenによると、これによりネイティブに近い性能を実現でき、Xenは「業界最速かつ最も安全な仮想化ソフトウェア」だという。また最新バージョンの3.0ではマルチプロセッサに対応。米Intelや米AMDのプロセッサがサポートすることで、OS互換性が改善している。

 VMware、Microsoft、米IBMらがそれぞれ自社の仮想化技術を提供する中、Xenが浮上した理由は、オープンソースという特性だ。XenはLinux、FreeBSD、NetBSDなどの上で動く。つまり、サーバーOSとして拡大が続くLinuxの土台を活用でき、米Red Hatや米Novellは自社サーバーOSでXenサポートを表明している。このほか、IBM、米Hewlett-Packardなどのシステムベンダー、米Intelや米AMDなどのハードウェアベンダーまで広く支持を集めている。現在、XenプロジェクトのWebサイトによると、サポート企業は20社を超えるという。


 このようなXenブームを目の当たりにして、Microsoftは7月17日、XenSourceとの提携を発表した。2007年に提供が予定されている次期Windows Server「Longhorn」(開発コード名)でXenとWindows仮想化技術との相互運用性を実現するという。

 Microsoftにとって、仮想化技術はLinuxとの混在を認めることになるためか、対応は遅れた。同社は4月3日、仮想化に沸いたLinuxのイベント「LinuxWorld Conference&Expo」(米ボストン州で開催)で、「Virtual Server 2005 R2」を自社ユーザーに無償で提供することを発表した。この際、LinuxをゲストOSとして稼動させるためのプラグインも無償で公開しており、事実上Windows上で仮想的にLinuxをサポートすることとなった。こうしたMicrosoftの動きからは、市場が立ち上がったばかりの仮想化技術では、同社は最初から協調と競争の姿勢をとろうとしていることがわかる。

 また、シェア首位のVMwareも今年2月、ローエンド版「VMware GSX Server」の無償提供に踏み切っている(無償版の名称は「VMware Server」)。オープンソースのXenのインパクトで仮想化技術の価格が下がり、コモディティが進んでいるのである。

 仮想化には、コスト削減、管理の容易さなどさまざまなメリットがある。早い時期にコモディティ化が進み始めたということは、何よりもユーザーに大きな恩恵をもたらすだろう。Xenが後押し役を担った仮想化のコモディティ化は、これまでのところ、オープンソース効果が良い形で市場に現れた例といえそうだ。



URL
  Xen(米XenSource内)
  http://www.xensource.com/xen/
  米Yankee Groupのニュースリリース(英文)
  http://www.yankeegroup.com/public/news_releases/news_release_detail.jsp?ID=PressReleases/news_servervirtualization_07_12_06.htm
  米Microsoftのニュースリリース(英文)
  http://www.microsoft.com/presspass/press/2006/jul06/07-17MSXenSourcePR.mspx
  米Microsoftの「Virtual Server 2005 R2」のQ&A(英文)
  http://www.microsoft.com/presspass/features/2006/apr06/04-03virtualizationqa.mspx
  米VMwareの「VMware Server」ニュースリリース(英文)
  http://www.vmware.com/news/releases/server_beta.html


( 岡田陽子=Infostand )
2006/07/24 08:55

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