|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
AcerがGatewayを買収、アジアメーカーの台頭
|
|
|
|
アジアからの風がPC業界を席巻している。台湾のパソコン大手Acer(宏碁)が米国大手Gatewayの買収を発表した。完了すると年間売上高150億ドル、出荷台数2000万台という「世界第3位のPCメーカー」になる。2004年末、中国Lenovo Group(聯想集団)が米IBMのPC事業買収を発表して以来のビッグニュースである。アジアのOEMメーカーが表舞台に躍り出たことを改めて実感させる。
Acerは、買収後も「Gateway」「eMachines」の各ブランドは継続し、「Acer」も合わせたマルチブランド戦略をとるとしている。また、コンシューマ市場にフォーカスして、Gatewayが持っていた政府/教育機関向けプロフェッショナル部門については、売却を検討していると述べている。
Gatewayは現在、米国市場で第3位。Acerは第6位(IDC調べ)に位置する。Acerはこれまでアジアと欧州市場でシェアを拡大してきたが、米国市場では弱く、同国での成功は長年の悲願だった。
AcerのGateway買収は大きなインパクトを与えたが、Gatewayは買収発表の同じ日に、もう一つの重要な発表を行っている。オランダのPackard Bellの親会社、PB Holdingを買収するというものである。
PB Holdingの株主であるJohn Hui氏は、Gatewayに買収されたeMachinesの創設者であり、GatewayはPB Holdingの全株式取得に向け、Hui氏に対して先買権を行使する。Gatewayはこの権利を2006年に獲得したという。つまり、AcerはGatewayに加え、Packard Bellも傘下に収めようとしているのだ。
Packard Bellは欧州を中心に展開するPCメーカーで、8月8日には、Lenovoが第三者を介して買収交渉に入っていることを発表している。Lenovoは欧州市場で弱く、Packard Bellの取得で強化を狙っていた。しかし、Acerが、これを阻止することになる。
AcerとLenovoの戦いは激しさを増している。Lenovoは世界のPC市場シェアで、Hewlett-Packard、Dellに次いで3位だが、この1~2年間でめざましく伸長したAcerが追い上げている。
OEMメーカーとして名を上げたAcerは、LenovoがIBMのPC事業部の統合に手間取っている間に、ブランド確立に向け戦略を着実に実行に移してきた。
ローエンドPCだけでなく、FerrariとのコラボレーションPCなど独自の取り組みを積極的に展開。地理的にはアジアのほか欧州市場で成長を遂げた。この結果、AcerはOEMメーカーから脱却し、IDCの2007年第2四半期のPC市場調査では、出荷台数を前年同期比55.4%増と大幅に伸ばし、7.2%のシェアを獲得して4位につけている。Lenovoは8.3%で3位。僅差でAcerに勝ったという状態だ。
一方で激しい3位争いの過熱を懸念する見方も出ている。英Ovumのアナリストは、両社が互いを倒すことのみにフォーカスした場合、共倒れになる可能性があるとコメントしている。その間に、1位と2位がさらにリードを広げるかもしれない。また、台湾のASUSなど別のメーカーが足元をすくうこともありうる。
IT分野は欧米企業が主導してきたが、2005年に台湾のBenQがドイツのSiemensのモバイル事業を取得したあたりから、アジアの機器メーカーが欧米のビッグブランドを取り込む構図が目立つようになった。
今回のAcerの買収発表の直前の8月25日には、中国企業がドライブ米最大手のSeagate Technologyに買収を持ちかけているとThe New York Times紙が報じている(Seagateは後日、「買収提案は受けていない」と否定)。
ただし、中国メーカーが米国のIT企業を買収することについて、米国には、安全保障面から懸念する声が根強い。2006年には、米国政府のLenovo製PC大量調達に対して、議会が情報漏れの懸念を表明。政府はLenovo製のPCを機密を扱う業務から排除するという騒ぎもあった。
米中両国が水面下で展開している激しい情報戦が反映されたものだが、こうした要素も、今後のIT業界の再編に影響することが考えられる。
■ URL
Acerのプレスリリース
http://global.acer.com/about/news.asp?id=6775
Gatewayのプレスリリース
http://www.gateway.com/about/news_info/press_release.php
Lenovoのプレスリリース
http://www.lenovo.com/news/us//en/2007/08/packard_bell.html
IDCの四半期レポート
http://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prUS20789807
Ovumのコメント
http://www.ovum.com/news/euronews.asp?id=6079
( 岡田陽子=Infostand )
2007/09/03 09:01
|
|
|
|
|