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争奪戦白熱-プラットフォーム化するSNS
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SNSを巡る大きな動きが次々に表面化している。新興SNS企業のFacebookに、Microsoftが150億ドルという評価を与え、米GoogleがSNSの大連合をつくろうとしている。これらの動きは、SNSを巡るGoogle対Microsoftの戦いなのか? それともSNSがGoogleやMicrosoftを脅かすものとなったのだろうか?
Microsoftは10月24日、Facebookとの提携を発表した。2億4000万ドルを出資して、同社の株式の1.6%を取得する。これは同社の企業価値を総額150億ドルと評価したことを意味する。この額のすごさは「収益の500倍。Googleの時価総額ですら収益の53倍といわれている」(San Francisco Chronicle紙)ということからも分かるだろう。
また両社は、2006年に締結した業務提携も拡大した。MicrosoftはFacebookに広告プラットフォームを独占的に提供し、米国外の地域でも広告販売を行う。対象はバナー広告である。
Facebookを巡っては、GoogleもMicrosoftと争奪戦を繰り広げたと伝えられている。2004年にスタートしたFacebookは現在、会員数約5100万人。さらに毎日20万人が新規登録しているという。調査会社の米comScoreの集計(2007年6月時点)によると、SNS最大手は引き続きMySpaceで、そのユニークビジター数は1億1400万人だ。2位のFacebookは同5220万人と数では開きがあるが、増加率ベースでは、MySpaceの前年同期比72%に対し、Facebookは270%。驚異的な勢いを見せている。
Facebookの魅力は、単にユーザー数が多いというだけではない。まず、“リアル性”がある。Facebookの基本は実名だ。匿名が作り出す仮想世界ではなく、ユーザーが実名でプロフィールを公開するリアルなソーシャルネットワークなのだ。創業者のMark Zuckerberg氏は自社のサービスを「ソーシャルユーティリティ」と呼んでいる。このことは、ユーザーはもちろん、はっきりとしたターゲティングができる広告主にとっても大きな魅力となる。
2つ目は、「Facebook Platform」というプラットフォーム戦略だ。プラットフォームが公開されていることで、開発者はFacebook上でアプリケーションを構築・配信できる。開発者が広告収入をシェアできるエコシステムを確立したことから、「Facebookエコノミー」ともいわれている。Facebookは今年5月に、このプラットフォーム戦略を発表したが、この戦略は成功して、すでに7000以上のアプリケーションが開発されているという。
一方、波に乗るFacebookを手中に収められなかったGoogleは10月31日、Facebook Platformに対抗するSNS向けAPI標準イニシアティブ「OpenSocial」のローンチを明らかにした。この時点で、Google傘下のOrkutをはじめ、Friendster、hi5、Linkedln、Plaxo、Ningなどが参加を表明した。参加SNSの全ユーザーを合わせると1億人。重複を無視すれば、Facebookの約2倍ということになる。
OpenSocialの発表当日は、SNS大手のMySpaceとFacebookが加わっていないことから、影響力が疑問視されていた(Googleは、2社をはじめとした他のSNSにも参加を呼びかけているとしていた)が、翌11月1日、MySpaceが参加を表明することで一躍、大きな流れになる可能性が高まった。
その後、英国大手のBebo、日本のMixiも続けて支持を表明。さらには、「iLike」「Slide」などFacebookで人気を獲得したアプリケーションもOpenSocialへの対応を進めていると伝えられ、Oracle、salesforce.comなどの業務アプリケーションベンダーも名を連ねている。OpenSocialは、単に名前だけの連合ではなく、実質的な勢力になりそうだ。こうして、Facebook対その他SNSという構図が出来上がりつつある。
これらの動きを、GoogleとMicrosoftが、新たにSNSを戦場に加えたとみることもできる。
Microsoftは「Web 2.0」で出遅れたという経緯がある。バブルと批判されても2億4000万ドルをFacebookに出すことを選んだ。それでも、今回の提携はバナー広告のみだ。バナー以外の広告では、Yahoo!やGoogleなどライバルが食い込む余地がある。米Gartnerはこのニュースを分析した報告書で、「Microsoftにしてみれば、勝ちとらなければならない動きだった」とし、「Facebookとの関係を深めることは、今日のMicrosoftにとってポジティブな事業開発となるだろう」と記している。
だが、Googleにしてみても、「SNSでは苦戦」となることは認めざるを得ないだろう。Facebook争奪戦はもとより、そもそも自社社員がスタートさせたOrkutは、後発のMySpace、Facebookの後塵を拝している状態だ。同社は10月にモバイルのソーシャルサービス「Jaiku」買収を発表するなど、SNSで足場を固めようと必死だ。
米IDCのアナリストは「(OpenSocialで示した)Google連合のモデルは魅力的ではある。だが、Facebookのシェアを奪うか、となると疑問だ」とeWeekに語っている。ともあれ広告収益を大きな柱とするGoogleにとって、OpenSocialによりWeb上で動くアプリケーションが増えることは、大きなメリットがあり、自然な方向である。
SNSはプラットフォームとなりつつある。Wired.comのブログには、FacebookとMySpaceは「プロプライエタリなWebプラットフォームを構築しつつある」というPlaxoのマーケティング副社長のコメントが引用されているが、MicrosoftとGoogleの動きはこれを確認するものだろう。MicrosoftはクローズドなFacebookと組み、Googleはオープンな連合を作る。
そのFacebookだが、11月初めに広告イニシアティブ「SocialAds」を発表するとうわさされている。
■ URL
Facebook
http://www.facebook.com/
OpenSocial
http://code.google.com/apis/opensocial/
Microsoftのプレスリリース
http://www.microsoft.com/Presspass/press/2007/oct07/10-24FacebookPR.mspx
MySpaceとGoogleのプレスリリース
http://www.google.com/intl/en/press/pressrel/myspace_opensocial.html
San Francisco Chronicleの記事
http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/c/a/2007/10/31/ED5LT2VBN.DTL
eWeekの記事
http://www.eweek.com/article2/0,1895,2210557,00.asp
Gartnerのニュース分析
http://www.gartner.com/DisplayDocument?id=536919&ref=g_sitelink
Wired.comのブログ
http://blog.wired.com/monkeybites/2007/10/john-mccrea-of-.html
( 岡田陽子=Infostand )
2007/11/05 09:06
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