Enterprise Watch
バックナンバー

Yahoo!は買収を回避できない? 迫る包囲網


 Microsoftの買収提案から半月。総額446億ドルの大型買収は、Yahoo!側が提案を拒否したことで、膠着状態となっている。同社は並行して、さまざまな相手と提携の可能性を探っているようだが、その行方はなお不透明だ。業界ではYahoo!は買収を回避できないとの見方が強い。


 Yahoo!は2月11日、同社株を1株31ドルで買い取るというMicrosoftの提案を公式に拒否した。「Yahoo!の価値を大幅に過小評価している」と主張している。Jerry Yang CEOは、従業員への電子メールや株主への書簡などで、繰り返し、このことを強調している。根拠は、今後のオンライン広告市場の拡大と、ブランドや膨大な会員などの経営資源が業績を押し上げるという期待だ。

 MicrosoftとYahoo!は、2006年ごろからも提携交渉を行ったが、立ち消えになっていた。これは“MS嫌い”のYang氏の反発が一因だったと言われている。両社が提携交渉のテーブルについていたのは、Terry Semel前CEO(2007年6月に辞任)時代の話だ。それが復活した背景は、Yahoo!の最近の業績低迷だ。1月29日に発表した決算は8四半期連続の減益で、1000人規模のリストラも行っている。

 Yahoo!は2月8日、今回の提案を受けて緊急に電話会議の取締役会を開いて検討したという。だが、取締役会は一枚岩ではない模様だ。NEW YORK POST紙は、会長のRoy Bostock氏や億万長者として知られるRon Burkle氏らの取締役が別グループをつくっていると伝えている。Yang氏と彼に近い取締役たちがMicrosoftに対して感情的に対応することを危惧してのことという。


 一方外部では、“白馬の騎士”として何社かの名が出ているが、なお行方は不透明だ。

 Microsoftに敵として挙げられたGoogleのEric Schmidt CEOは、提案の即日、Yang氏に電話して提携の可能性を協議したという。3日には法務担当上級副社長のDavid Drummond氏が、“Microsoftの独占体質”を非難するコメントを発表したものの、その後は、静かになっている。検索市場で圧倒的なシェアを持つGoogleが独禁法を盾にするのはやぶ蛇だ。この分野では、MicrosoftとYahoo!が一緒になってもなおGoogleには及ばない。

 このほか、11日付の英Times紙は、Yahoo!がTime WarnerのAOL部門との合併交渉を再開したと報じた。またeBayやAT&Tなどの名も取りざたされたが、いずれも具体化はしていない。

 現在、最も有力なのは、Rupert Murdoch氏のNews Corp.との交渉だ。The Wall Street Journalなどによると、同紙の親会社であるNews Corp.が、傘下のMySpaceとYahoo!を事業統合する方向で話し合いを進めているという。Yahoo!がMySpaceを買収するという形で昨年6月に報じられた話の復活となる。


 だが、Yahoo!株主は、Microsoftの買収以上に株主価値を高める策が示されない限り、買収を受け入れてしまいそうだ。たとえば、第2位株主のLegg Mason Asset Managementは、Microsoftに買収額の引き上げを要求。額さえ折り合えば、売却する姿勢を示している。

 Microsoftの提示した1株あたり31ドルは31日の終値19.18ドルに62%のプレミアを上乗せしたものだ。好条件のオファーのように見えるが、Yahoo!株は3カ月前には30ドル台に乗せており、19.18ドルは過去4年間の最低水準だった。買収の提案は、株主が決算発表で失望した絶好のタイミングをとらえたものだ。

 Yahoo!はこのあと、欧州の通信事業者大手T-Mibileとの提携など携帯関連、またオンライン動画プラットフォームのMaven Networksの買収など一連の発表を行ったが、通常なら株価上昇につながったはずの意欲的な発表もMicrosoftとの攻防でのなかでかき消された格好だ。Yahoo!にとっては最悪のタイミングだったといえる。

 現在、Microsoftの出方が注目されるが、提示額の引き上げの可能性が高いという。その場合、35ドル程度は払うというのが大方の見方だ。Legg Mason Asset Managementが要求した1株40ドルまで出すとみるアナリストもいる。

【買収提案からの経過】
2月1日MicrosoftがYahoo!買収提案を発表
Yahoo!、取締役会での迅速な検討を表明
従業員あて電子メール(その1)
3日Google、買収提案を批判
Googleとの提携報道
6日従業員あて電子メール(その2)
8日Yahoo!、取締役で買収提案を協議
11日買収提案拒否を発表、Microsoftは継続表明
12日Legg Mason Asset Managementの買収額引き上げ要求の書簡公表
13日株主あて書簡
NewsCorp.との提携協議が報じられる



URL
  Yang氏の従業員へのメール(その2)
  http://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1011006/000095013408002135/f37927exv99w1.htm
  Yang氏の株主への書簡
  http://www.businessweek.com/technology/content/feb2008/tc20080214_236641.htm?campaign_id=rss_topStories
  NEW YORK POSTの記事
  http://www.nypost.com/seven/02152008/business/board_bucks_yang_97797.htm
  David Drummond氏のコメント
  http://googleblog.blogspot.com/2008/02/Yahoo-and-future-of-internet.html
  Timesの記事
  http://business.timesonline.co.uk/tol/business/industry_sectors/technology/article3346356.ece


( 行宮翔太=Infostand )
2008/02/18 09:16

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.