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Webサービスのフロントエンドへ進化するPDFとFlash


 Adobe PDFとMacromedia Flashは、ともに90%以上、約5億台のPCで閲覧可能なフォーマットだ。

 Adobe Systemsでは2002年に加Accelioを、Macromediaは2001年にAllaireを買収することでXML関連の技術を手に入れ、その後双方のフォーマットをXMLに対応させる製品を発売することでベースとなる環境を整えていた。そして2004年には、それぞれに独自の方向性を持ちながら、エンタープライズ市場を強く意識した「Adobe LiveCycle」と「Macromedia Flex」という製品を発表している。


B2Cからデータ分析系のUIとして-Flash

Flex Serverのフレームワーク
 Macromedia Flexは、Flash独自のオブジェクト指向スクリプト言語である“ActiveScript”によりXMLデータを処理し、Flashデータを生成するサーバーソフトウェア。これによりXMLを開発するだけで、Flashを生成できる環境を提供する。

 これまでFlashといえば「クリエイター向けのツール」とのイメージが強かった。その「Flash MX」は、これまで通りタイムシフトという概念にもとづいてFlashを作成できるWebデザイナー向けのツールとして存在し続ける。一方のFlexについてMacromediaでは、XMLに親しいプログラマブルな開発者向けのツールとして位置づけており、開発環境「Macromedia Flex Builder」も製品に同梱している。

 通常のWebアプリケーションでは、データをやり取りするたびにインターフェイスが書き換わるが、Flashでは入出力データのみをXMLでやり取りし、インターフェイスの書き換えなどはクライアント側で処理される。このためトラフィックを削減できるとともに、サーバー側の負荷も軽減できる点がメリットだ。


Flashを用いた金融サービスの一例
 デメリットといえるのは、ロジック部分までをクライアント側にダウンロードしてからでないと処理が開始できないこと。このため大きなアプリケーションになるほど、最初に待ち時間が必要となるほか、環境によっては操作時の処理遅延も起きやすい。これらの点については、米Macromedia エグゼクティブバイスプレジデント兼チーフソフトウェアアーキテクトであるケビン・リンチ氏はインタビューの中で、次期バージョンでの改良も示唆していた。

 マクロメディア株式会社 CTO 田中章雄氏は、Flashフォーマットの強みでもある豊かな表現力を生かして、ユーザー体験を提供できるEコマースなどのB2C市場から、「表示データ量が多い基幹システムのデータ分析ソリューション、入力フォームが多い業務ソリューション、多数の画面を自動生成する基幹システム」などに販売を拡大するとしている。


紙ベースの帳票や申請ワークフローを電子化-PDF

各種ドキュメントサービスの機能を提供するAdobe LiveCycle
 一方のPDFは、Webインターフェイスの延長となるFlashとは違い、これを直接置き換えるものではない。むしろこれまでは紙ベースで行われていた、申請をはじめとしたワークフローを電子化する点に強みを持っている。

 Adobe LiveCycleは、PDFとXMLを中心とした「Adobe Intelligent Document Platform(IDP)により、一元的なドキュメント管理、セキュリティ管理、コラボーレーションといった機能を提供するサーバーソフトウェア製品群。2004年末の時点では未発売だが、2005年1月の発売がアナウンスされている「Adobe Reader 7.0」で、連携した動作が実現する。


PDFのセキュリティ権限を細かく制御できるAdobe Policy Server
 Adobe LiveCycleの1製品となる「Adobe Policy Server」では、PDF文書の印刷や閲覧を含む各種権限を、文書の作成者やIT管理者がダイナミックにコントロールできる。文書配布後にも権限の変更が可能だ。クライアント側では、12月22日より米Adobeが配布を開始した「Adobe Reader 7.0」により、こうした機能に対応できる。

 またAdobeではIBMやSAPともワールドワイドで提携し、PDFを用いた帳票出力管理ソリューションなども提供している。

 さらに米Adobe Systems インテリジェントドキュメントビジネスユニット プロダクトマーケティング担当バイスプレジデント ユージーン・リー氏は「PDFをユーザーインターフェイスに用いた場合、項目やレイアウトが変更された際にもフロントエンド側で容易にマッピングでき、開発を効率化できる」点もメリットに上げ、PDFコンポーネントがSAP NetWeaverにも多数採用されていると述べている。


用途に応じた多彩なリッチクライアント製品

 このほかMicrosoftでも、XML Webサービスにアクセスできる「Infopath 2003」をリリースしている。独SAPとも、稼働プラットフォームとしてのWindowsでの協業にとどまらない提携を結び、日常業務で使い慣れたOfficeアプリケーションの延長として利用できる点を強みとして市場への食い込みを図っている。さらにMicrosoftでは、サーバー側とXMLを解して通信可能な.NETアプリケーションをVisual Studioなどで開発、クライアント側に展開する“スマートクライアント”という手法もあわせて提唱している。

 また既存のWebブラウザをインターフェイスに利用しながら、「枯れた技術であるAWT/Swingコンポーネントを利用して」、オフコンからのリプレース用途に応えるキーボード主体の操作性を実現した製品として、東芝ソリューション株式会社の「FlyingServ J-Frame Server」などもある。

 “リッチクライアント”という点では、アクシスソフト株式会社の「Biz/Browser」も挙げられるだろう。アクシスソフトでは、業務システム専用に開発されたクライアント/サーバーシステム同様の使いやすいインターフェイスを実現しながら、Webベースのシステムのメリットである、容易な管理を提供できるとしている。

 また「Biz/Browser for PDA」では、帯域幅が64KbpsとなるPHSでは、データ通信量の少ないことが、またPCと開発環境が共通する点もメリットになるという。


Microsoftの提唱するスマートクライアントの開発例 オフコンからのリプレース用途に応える操作性を実現したFlyingServ J-Frame Server PDAでもPC環境と遜色ない操作性を実現するBiz/Browser for PDA

携帯電話端末にも広がるPDFとFlash

 PDFとFlashには、すでに大きなインストールベースを持ち、クライアント環境も無償で提供している強みがある。上記3製品は開発の柔軟性や特定用途での強みを持つものの、広く市場の中心を占めるには難しいとの見方もできる。

 2004年にはAdobe、Macromediaの両社ともに、携帯電話向けのアプリケーション提供に力を入れた。全世界におけるPCの普及率が100%に達することは、現実的にはありえないだろう。ただし携帯電話は発展途上国を含め広く普及する可能性を秘めている。Adobe PDFが強みを持つ行政機関における申請手続きなどは、一般の人々が広くアクセスできるインフラが前提となる。この点を考えれば、携帯電話向けにPDF環境を提供する戦略には大きな意味がある。

 またコストの問題などから携帯電話端末のOS・ソフトウェアでは標準化が進んでおり、Flashを標準メニューのユーザーインターフェイスとして採用した端末もauから発売されている。各機種ごとに異なる液晶解像度に対するUI開発の問題も解決できるため、今後はさらに注目が集まることも予想される。



URL
  マクロメディア株式会社
  http://www.macromedia.com/jp/
  アドビシステムズ株式会社
  http://www.adobe.co.jp/
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/
  東芝ソリューション株式会社
  http://www.toshiba-sol.co.jp/
  アクシスソフト株式会社
  http://www.axissoft.co.jp/


( 岩崎 宰守 )
2004/12/27 14:38

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