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エフルート佐藤社長が語る、2008年のモバイル業界の行方
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Eビジネス研究所が開催する「Eビジネス研究会」では、IT業界の次世代を担うキーパーソンを「Eビジネスマイスター」として講師に招き、業界の動向や将来のビジョンについて、参加者とのインタラクティブな質疑応答を交えたセミナーを行っています。この連載では、講演を行う前のEビジネスマイスターに、Eビジネス研究所 代表理事の木村誠氏がさまざまな話を伺います。
今回は、3月7日にEビジネス研究会の講師として登場していただくエフルートの佐藤社長に話を伺いました。
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Eビジネスマイスター:佐藤 崇
エフルート株式会社
代表取締役社長
1975年生まれ、愛知県出身。慶応義塾大学大学院社会学研究科修士課程卒業。2000年フォンドットコムジャパン(現オープンウェーブ)に入社。携帯電話向けコンテンツディベロッパーマーケティングに従事。2001年オープンサイト運営者として独立。2003年ビットレイティングス(現エフルート)を設立。モバイル検索サイト(froute.jp/エフルート)を中心にモバイルメディア事業を展開する。著書に「ケータイ・ビジネス成功の新常識」。
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―佐藤さんの会社がビットレイティングスと言ってた頃から、僕は佐藤さんと付き合いがあったわけですけど、社名を変えられた理由って聞いてませんでしたね。
佐藤氏
前から社名とサービス名が一致してたほうが都合がいいと思ってたんですが、もっと突き抜けてからにしようということで温めてたんです。ところが昨年の4月に、日経の一面に掲載されたのに、サービス名が載らずに社名が載っちゃった。その後、社名変更したのが昨年の6月。社名変えてから、サービス名も有名になったので、良かったかなと。
―有名と言えば、佐藤さんのブログ、話題になってるじゃないですか。「2008年を勝手に大予測」でしたっけ?
佐藤氏
すみません大げさなタイトルで(笑)。会社の見解じゃなく、僕が勝手に考えたことなんで、そのつもりで。
※佐藤氏のブログ「九段ではたらく社長のここだけの話」(http://takashisato.cocolog-nifty.com/)の記事。
―ケータイ向けサービスがなくなっちゃうとか。
佐藤氏
ああ、それはネガティブに考えなくてもいいです。いまも着々と利用者が増えていて、ページビューも上向きですし。ただ最近、猫もしゃくしもケータイ業界に参入しちゃってるじゃないですか。中には若い世代を扇動するかのような。サービスに興味のない会社が増えちゃった。そういう意味では今年から、業界の整理が始まると思いますよ。きちんとサービスをしてる会社だけが残って、あとは買収されるみたいなことになっていくのかなと。
―あとは、今年はドコモが売れる年だとか。
佐藤氏
ええ、905iが出ましたからね。全機種速いし、世界で使えるようになった。過去の動向で言うと、カメラつきケータイが出たときが一番売れて、ワンセグが2番目だったんです。ドコモの場合、昨年はまだワンセグが搭載されていなかった。今年初めて、ドコモが売れる条件が整ったんです。
―フィルタリングの影響については?
佐藤氏
良くも悪くもどっちにもならないのでは。若いユーザーもバカではないので、むしろフィルタリングを解除してでも使うんじゃないかと思います。彼らが使うケータイサイトってリアルと連動してるんですよ。友達10人がいたら10人だけのコミュニティができる。10人とも使えないと、そのサイトを見る意味がないんです。10人のうち3人が使えなくなったら他のサービスに移るだけのこと。
―もしかすると、メールが脚光を浴びるかも!?
佐藤氏
それはありえますね。デコメがまたはやりだすとかね。
―モバイル検索の動向はどうですか?
佐藤氏
Yahoo!さんがダントツで、次にGoogleさん、3位グループはうちと、ライブドアさんとgooさん。gooさんは、うちがとてもできないようなプロモーションをやってます。昨年くらいから、ケータイだけでやるという覚悟を決めないといけない状況になっています。PCからケータイへの参入、それに海外からの参入が同時に起こり始めた。今年はさらに大きな競争、再編が起こってくるんだろうなと。
―froute.jpのユーザー数って、今どれくらいなんですか?
佐藤氏
ポータルのユーザーが、月間ユニークで400万人くらいですね。
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froute.jpのユーザーが検索したキーワードがほぼリアルタイムに表示される
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―じゃあ例の、「検索生中継」には400万人分のデータが反映されるってこと?
佐藤氏
ええ。ここでお見せしましょうか。ユーザーがどういうキーワードを検索しているのか、新しいものから順に出てくるんです。
―この、目玉おやじみたいな絵はいったい?
佐藤氏
一応、エフルートのロゴと虫めがねを組み合わせたアイコンなんですけど(笑)。このアイコンが、横に流れたり前後に行ったりするように動きをつけてみたら面白くて、今のようなインターフェイスになりました。
―出てきてるキーワードって、リアルタイムなんですか?
佐藤氏
ほぼリアルタイムですね。この時間帯(PM8:00)から12時くらいまでが面白い。
―じゃあ、テレビで放映されてる内容と、ここで流れるキーワードが一致してたりとか。
佐藤氏
そうそう。年末だとやっぱり、紅白歌合戦とかレコード大賞に関連するキーワードに集中してました。「コブクロ」とかね。アイデアにつまった時、この画面、じーっと見てると世の中で流行ってることが手にとるようにわかる。セミナーなんかでお見せすると、たいてい「なんだコレ」って興味を持ってもらえますね。
―今度のEビジネス研究会でも見たい方はたくさんいると思いますよ。
佐藤氏
そうですか、じゃ、楽しみにしていてください(笑)。
―ところで、モバイルサーチの事業比率は、エフルートさんの場合はどれくらい?
佐藤氏
サーチの売上はまだ全社においては15%くらいですね。事業投資コストと比べるとものすごく収益回収率は低いです(笑)。収益はコンテンツで上げているのが実態ですね。
―コンテンツって具体的に?
佐藤氏
公式コンテンツですね。ポータルサイトに集まってきた人を、広告のクリック1回でチャージするより、公式サイトに登録してもらって数カ月チャージしたほうが収益がいいんです。検索エンジンで集客できると、公式コンテンツの売上が伸びるという関係です。
検索のほうには、相当投資をしていますよ。導線の大もとのところを握れると、その先のサービスがやりやすくなりますから。うちはWebレイヤーにいるわけですが、検索エンジンのシェアをとって、関連するサービスを次々に開発していくという方針でやれば、どんどん事業を拡大できるかなと。
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限られた画面サイズの中で、ユーザーがより少ないアクションで目的の情報に到達可能な独自の表示方式『Expand Search』を採用
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―検索とコンテンツって、そういうふうにつながってるんですね。
佐藤氏
それともう一つ、つながりがあるのは、コンテンツプロバイダーとしてユーザーインターフェイスの開発に取り組んできた、ノウハウが生かせるってことですね。
ケータイのブラウザは、Internet Explorerのように80%、90%のシェアを握っているものがありません。キャリアによって画面も違えば、機種によって通信速度も違う。それにユーザーによって、文字の大きさの設定も違ったりする。海外の検索エンジンをローカライズしただけでは、そこまできめ細かく対応できるかどうか。世界標準で語りきれないTPOが必要だと思うんです。
例えば、iPod touchでインターネットにアクセスすると、画面がポワーンと出てきたりするところが何とも使い心地がいいといって、他にもたくさんWebにアクセスできる道具があるにも関わらずiPod touchのファンって多いじゃないですか。画一的な技術で語れないような、ユーザーのこだわりにどれだけ迫れるかが勝負のポイントだと思っています。「スモールスクリーンを制する者がインターネットを制する」と言いますかね。
―なるほど。やっぱりエフルートさんの検索エンジンは国内最強っていわれるだけありますね。
佐藤氏
いやいや(笑)。ただ、他社さんの場合、モバイル検索がPCの延長でしかなくて、どうもモバイルの検索に社運をかけているイメージがないですね。
―それは感じますね(笑)。そんな佐藤さんが、モバイル業界に入ろうと思った理由を改めてお聞きしたいんですが。
佐藤氏
僕は2000年に、ケータイのブラウザを作るオープンウェーブという会社に入りました。モバイルのほうが面白いと思ったのは、まだ関わっている人が少なかったので、いろんな人に会うことができたから。ネットバブルが来て、パソコンのインターネットは大きくなってたんですが、ケータイのほうは人が少なくて。とにかく出会った人がスゴイ人ばかり。ホントに目がギラギラした人がたくさんいた。サイバードさんは、まだ10人か20人の社員でやっていたし、インデックスの小川さんが、まだ営業本部長だった頃です。ビットバレーで成功する人が出てきた頃で、そういう人の下で働ける機会がほしいと思っていたので、直接一緒に仕事ができたことが良かったんです。
―起業したきっかけは?
佐藤氏
アイシーピーというインキュベータに声をかけていただいたんです。
―それはいつ頃?
佐藤氏
実は2000年の時で、自分でモバイルの検索エンジンを作ってた。オープンウェーブにいた頃、自由な会社だったので個人でリリースを打ったんです。そしたら小さなWebのニュースサイトに掲載されて。石部社長から突然メールが来て、これを事業化しないか、事業計画を一緒にやっていこうと言われました。
※株式会社アイシーピー:インターネット分野において、成長性の高いベンチャー企業への投資育成を行う独立系ベンチャーキャピタル。社外取締役に就任し経営課題の解決につとめるなど、ハンズオン(育成型)投資を特色とする。代表取締役社長の石部将生氏は、カカクコムの株式上場などの実績を持つ。
―それで独立されたと。
佐藤氏
いや実は、一度お断りしたんです。片手間で作ったモバイル検索がビジネスになるとは思えなくて。広告モデルで事業計画を立てると言っても、モバイルの広告自体がなかったですし。まだ自分にも器がなかったので、時期を見たいと思いました。
それに僕は、大学院を休学してオープンウェーブに入社していたんですよね。公式コンテンツのバブルが来て、夢中で働いてましたけど、業界の勝ち組・負け組が定着したら、大学に戻って卒業しようと思っていました。オープンウェーブでは、HDMLを使用してWAP向けコンテンツを開発する事業者向けのデベロッパーマーケティングを担当していました。昼間は会社員、夜は検索エンジンの開発という生活も体力的に限界があって。会社の仕事が落ち着いたタイミングで一度大学に戻って、1年間学生をしました。
※WAP:「Wireless Application Protocol」の略。携帯電話やPDAといった携帯小型端末上でのインターネット利用を実現するための通信プロコトルの総称。WAPは世界共通の仕様で、日本では例えばau(KDDI)によってEZwebという名前でサービスが提供されている。
2003年の終わりに、ケータイに定額制が導入されて、もう一度、ビジネスチャンスが来ると思って会社を作りました。
―うまく、タイミングをつかんだわけですね。
佐藤氏
まあ、そういうことですね(笑)。
―僕も、起業された人に何人も会ってきましたが、成功した人には運が味方していると思いますよ。
佐藤氏
そうですね。それに、ここまで来られたのは、創業から関わってくれたメンターのおかげです。会社を作ったときにはアイシーピーに間借りさせてもらって、いつも近くに相談できる人がいてくれました。
―今はたしか、50人くらい?
佐藤氏
アルバイトまで入れると、それくらいですね。
―佐藤さんの、今の役割は?
佐藤氏
マーケッターとプロデューサーですかね。プログラムは、スパゲッティコード書いちゃうから、周りからは書いちゃいけないって言われてます(笑)。戦略を見るのは僕で、財務―お金のところは役割分担をしています。
―COOの尾下さんですか?
佐藤氏
ええ。彼は入社する前に一度うちを訪ねてきていましてね。最初は、別の会社の人間としてうちを買収する交渉に来たんです。ところが、うちの経営方針に共感してくれたんですね。ベンチャーっていっても請負型が多くを占める中、独自の技術力とサービス力を持っているって、興味を持ってくれたんです。
―買いに来た男が一転、味方になったわけだ(笑)。
佐藤氏
今では、カオスの状態だったうちの経営を整理してくれて、全面的にサポートしてくれていますよ。
―社長として、気をつけてることは?
佐藤氏
サービスが大きくなっても、うちの強みを生かして成長が続くようにすること。シェアを高め、競争相手と戦っていけるように方向付けをすることですね。僕は、ひらめいて発明するというより、休まず改良するのが好きなタイプ。僕自身、今のインターフェイスに手を入れることがあります。この間も、経理の社員が「ココが使いにくい」と言っていたのを聞いて、ピンときてインターフェイスを自分で変えちゃいました。
―社長じゃないみたいですね(笑)。
佐藤氏
僕は、サービスとかユーザーを責任を持って見ていくのが役目ですから。モバイル検索は、PCの延長や、技術の組み合わせだけでは成功できません。PCの検索ではできないこと、あるいは映像などをからめた多様な検索にも取り組んでいきたいと思います。
今回のキーワード:モバイル検索
モバイル検索においてもシェア優位を走るのはYahoo!とGoogle。Googleのエンジンは海外で開発、Yahoo!も海外版をローカライズしたエンジンである。シェア3番手に位置し、国内最強とも言われるのがfroute.jpだ。froute.jpが業界に先駆けて開発したのが、同社が「Expand search」と名付けた機能。音楽ダウンロード/画像・待受/ニュース/動画/口コミ掲示板など、複数のデータソースを一度に検索するフェデレート型検索(横串検索)を特徴としている。携帯電話の限られたスクリーンの中でも、目的別に情報が整理されて使いやすく、現在のモバイル検索画面の主流となっている。
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3月7日に開催される第96回「Eビジネス研究会」のEビジネスマイスターとしてエフルート・佐藤氏が登場します。詳しくは、こちら。
■ URL
Eビジネス研究所
http://www.e-labo.net/
エフルート株式会社
http://froute.co.jp/
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木村 誠 1968年長野県生まれ。2000年6月より『Eビジネス研究所』としてITおよびネットビジネスに関する研究、業界支援活動をスタート。2003年4月『株式会社ユニバーサルステージ』設立。代表取締役として、ITコンサルティング、ネットビジネスの企画・立案、プロデュース全般を行う。2006年ネットビジネスのイベントとしては国内最大級1000人規模『JANES-Way』実施。2007年4月よりIT業界に特化した職業紹介『ITプレミアJOB通信』をスタートさせ好評を得る。ASPICアワード選考委員。デジタルハリウッド、トランスコスモス、マイクロソフトなど講演多数。 |
2008/02/29 13:05
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