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ファインアーク服部社長に聞く、ミニブログで広がるビジネスチャンス
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「Eビジネスマイスターに聞く!」では、IT業界の次世代を担うキーパーソンを「Eビジネスマイスター」と称し、Eビジネス研究所 代表理事の木村誠氏がさまざまな話を伺います。今回は、ファインアーク株式会社 代表取締役社長の服部達也氏に話を伺いました。
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Eビジネスマイスター:服部 達也
ファインアーク株式会社 代表取締役社長
1972年2月4日生まれ、静岡県出身。日本工学院専門学校美術科卒業。
1992~1998年 株式会社ホソノデザイン、デザインスタジオT&Aにてグラフィックおよびパッケージデザインに携わる。
1998年 デザインスタジオクロスメディア設立。Webデザインへ転向。
2000~2002年 株式会社アクトクリエイション入社。同社取締役事業開発部長に就任。商品比較サイトを運営。2002年に事業を楽天株式会社に譲渡、会社清算のため取締役を辞任。
2002年 株式会社サンロフト入社。
2006年 サンロフト子会社のファインアーク株式会社設立。同社代表取締役社長に就任、現在に至る。
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木村氏
服部社長はフリーSNSサービスの「nanoty(ナノティー)」立ち上げをはじめ、数々のオンラインコミュニティに携わっていらっしゃるわけですけど、今日はまず、nanotyを作ったときの話からお聞きしてもいいですか?
服部氏
SNS大手のmixiが開始されたのは2004年のこと。僕は5月くらいに最初、GREEを知って、IT業界で疎遠になってた人と連絡が取れるのが面白いな、と思ったんですよね。
それで、ソーシャル系のサービスをいろいろ調べて、今思えば「flickr(フリッカー)」(オンライン写真アルバム)に似たサービスなど、いろんな企画書を作って、割といろんなところに持って行ってました。
木村氏
どういうサービスを提案したんですか?
服部氏
単にSNSを運営するんじゃなくて、写真の共有からプリントのサービスまで手がけて、友達からプリントの注文が取れればアフィリエイト的に手数料が利用者にも入るようなものをやったらどうですか、と提案していました。こんなサービス、こんなビジネスモデルは面白いね、と評価はされるのですが、いつも「自前でやらないの?」と言われてしまった。当時のサンロフトでは、最初に多額の費用をかけて、一から自前で作ることは難しかったんです。
結局、まず社内SNSの構築から始めまして、やっていくうちにいろんな問題点を改善することができました。そろそろ、一般向けサービスもやりましょうよ、ということになってnanotyを2006年に作り始めました。
木村氏
nanoty発案にあたって、いろんなご経験を生かされたんだと思いますが。
服部氏
もともとは、自分で作ったバイクのコミュニティでの経験です。話が1996年ごろまでさかのぼるんですけどね。僕は、バイクの中でも大型バイクやアメリカンバイクが趣味なんですけど、マイナーだったから世の中に情報がなかったりしたんですよ。ちょうど、仕事でもWebデザインを手がけ始めていたところでしたから、自分でホームページを出したら問い合わせが来るようになって。パーツを交換したり、一緒に走りに行ったり。実は、バイクが縁で嫁さんとも知り合っちゃって(笑)。それで、ほかの車種に乗ってる人も同じように思ってるだろうと思って「JAB-NET(ジャブネット)」というサイトを立ち上げたんです。このサイトは今でも、国産アメリカンバイクのジャンルでアクセス上位を誇ってるんですよ。
だから、コミュニティにはすごいパワーがあって、たくさんの人に同じようなものを感じてもらいたいという思いが常にあったんです。自分に作るスキルがなくても手軽にできる、家族でも趣味でも使えるもの…、自然な流れでnanotyのアイデアに行き着きましたね。
木村氏
nanotyを作ったときは、まだ前の会社の社員だった?
服部氏
ええ。2005年末に会社にnanotyを作る部署を作ってもらって、プログラマーさんを1人つけてもらって開発を始めました。そうしたら、東京ガスさんの家族SNSのサービスが決まって、nanotyを専業にする会社を作ろうという話になりました。
木村氏
どのあたりから、会社を作ろうという気持ちになったんですか?
服部氏
自分の企画を通して、分離独立させてもらったという流れですから、一から起業される方とは思いも苦労も違うのかもしれませんが。nanotyを通して自分がやってるサービスを一つの会社にしたいという思いが強くなったのは確かです。会社側の、サンロフトにしても、分離独立させて1つに特化してる事業にしたほうが外から投資してもらいやすいという読みがあったようです。ですから、割とすんなりといえばすんなり独立できましたね。
木村氏
「Timelog(タイムログ)」(http://timelog.jp)を始めたのは?
服部氏
2006年末に田口元さんのブログ「百式」で初めてTwitterの紹介記事を見ましたけど、その時は、正直よく分かりませんでしたね。アメリカでは2006年にTwitterのサービスが始まって、日本ではやるまでに1年くらいかかってるわけなんですが、あまりにもシンプルなサービスで、何でみんな夢中になるんだろうって不思議だったんです。
これはやってみないと分からない、自分で作ってみたら分かるかな、と思ったのがきっかけですね。
木村氏
Timelogの原型は、なんと3日で作ったって言ってましたよね(笑)。
服部氏
それ以前に1カ所、Twitterクローン的なサイトがありまして、世の中で流行するとそういうものも出てくるんだな、と思って。本当に思いついたら即実行で、開発は3日、リリースまでもわずか1週間だったんですよ(笑)。
木村氏
Timelogという名前の由来は?
服部氏
「時間のログ」を表していて、開発当初から考えたコンセプトなんです。膨大な書き込みが行き交って、たまるログを二次活用できないかって。そこで、過去の書き込みに属性を付けて引き出しやすくする機能を付けました。そこが、もともとのTwitterとの差別化部分でもありますね。
木村氏
今はnanotyではなくTwitterが主要事業?
服部氏
当初はナノティ株式会社でTimelogをやってたんですが、今はnanotyはサンロフトへ事業譲渡し、社名も変更しました。
Timelogは、ソーシャルメディアとしてメディア価値が出てくれば広告媒体にもなるし、ログ自体を使ってマーケティング事業もできる。個人管理ツールとしても、社内Q&Aシステムとしても応用できる。ひょっとしたら、化ける可能性があるなと思って、2007年9月末に事業化したんです。
木村氏
そうはいっても、Twitterの日本版もできたし、類似のサービスも多いのでは?
服部氏
Twitter日本版は、今年の1月にできました。正確ではありませんが、全体で100万~200万人くらいで、そのうち2割が日本人といわれていました。これは半年前くらいのデータですから、今は日本国内に数十万人のユーザーがいるんじゃないかと思います。
TimelogはYahoo! IDと連携していますが、ほかのポータルサイトにも類似したサービスがあります。ライブドアのコミュニティが一番大きいと思いますね。
木村氏
Timelogのユーザーは何人くらい?
服部氏
会員数は非公開ですが、ユニークユーザー数でだいたい6万か7万くらいです。初速は勢いがあったんですけど、1万人くらいでピタッと止まる(笑)。新しもの好きの、ネットに詳しい人が入って終わっちゃうんですよね。昔はサービスが良ければ底辺拡大ができましたが、今は種類が多すぎて、一般の人には追いきれないんです。
Timelogのユーザーを見てると、面白いですよ。例えば誰かが、ほかのサービスの偵察に行き始めると、それに習ってみんなが行き始めるんです。自分も含めて、とりあえず、新しいものができたらさわって帰ってくる。でも出会うのは同じ人、みたいな(笑)。
木村氏
じゃあ、いかに次の層に落とし込むかが課題ですね。
服部氏
ええ。Timelogではテーマを与えて「ひとこと日記」を書いてもらうという方法で、新しいユーザーの取り込みを狙っています。春は桜をテーマにしたり、サッカーのサポーターにひとこと応援メッセージを書いてもらったりですとか。
木村氏
こちらの壁にも、サッカーのサポーターのメッセージがたくさん飾ってありますね。何かのイベントで使ったもの?
服部氏
これは、中田英寿選手が横浜スタジアムで「テイクアクション」というイベントをした時に、フェイスペイントのキャンペーンブースを開設させてもらった時のものです。
「ハガレックス」という、肌に直接塗っても安心な絵の具の会社さんとの共同提案で実現しました。会場でフェイスペイントをしてもらい、写真付きでTimelogに送ってもらいましょう、って。
当日は、1000人くらいフェイスペイントを体験された方がいて、集まった写真は200~300枚。1枚の写真に何人も写っていますから、だいたい被写体としては500名くらいの人が参加してくれたことになりますね。
木村氏
ほかにも、イベントでTimelogを使った事例は何か?
服部氏
プロ野球のソフトバンクホークスの応援イベントで、ハンカチを2枚配って応援メッセージを書いてもらい、1枚は福岡ヤフードームに貼り、もう1枚は写真に撮ってTimelogに投稿してもらう企画がありました。
それから、とあるイベントで、「ツッコミ」の書き込みをしてもらい、会場とリアルタイムでやりとりをする企画、なんてのもありましたよ(笑)。
木村氏
ビジネスモデルは確立できそう?
服部氏
Timelogには法人向けの「グループ」を作る機能があります。ASP型で、初期費用が25万円。単発の企画であれば費用はこれだけですが、継続して使われる場合は月額5万円の維持費をいただいています。mixiさんの「オフィシャルコミュ」のように、自社商品やブランドに特化したオリジナルのコミュニティを作りたいという需要を掘り起こしていきたいと思っているんです。
木村氏
ターゲットはどういった業界になるんでしょう?
服部氏
今、導入を進めているのはスポーツのファン向けコミュニティですね。プロ野球やJリーグ系の企業と商談を進めています。
長期にわたってサイトを開設していただくことで、維持費の安定した収入が入ってくることにもなりますし、何より、ITにあまり詳しくない人をユーザーとして獲得できるので、Timelog本体の拡大も期待できます。ポータルサイト、メディアとしての価値にプラスになると見ています。
木村氏
ところで、ファインアークさんは静岡が本社なんですよね。
服部氏
社員は3人で、僕1人が東京で仕事をしています。
僕は静岡出身で、父がやっていたデザイン会社を手伝うために静岡に戻ったんですけど、そこで個人事業主になったり、知り合いのサービス立ち上げをサポートしたり、前の会社のサンロフトで「いっしょにやりましょう」と声をかけてもらったり。本当にいろいろな出会いがありました。
前回のインタビューでは、ベンチャーリパブリックの柴田さんや大石さんの話も出てらっしゃったようですが、前身のサービス「ネットde通販」は最初、静岡で開発をされていたので古い付き合いなんですよ。
静岡の1ベンチャーが、大手ポータルサイトと提携して全国に名前が出る。それで地元が元気になってくれたらうれしいですね。これからも静岡と東京を行き来しながら事業をやっていきたいと思っています。
今回のキーワード:ミニブログ
日々の行動や出来事、ちょっとした思いつきなどを、気楽にメモとしてWeb上に書き込むことができるサービス。従来のブログやSNSよりも書き込みが短くてよく、ユーザー同士の共有も簡単にできることが受け、2007年から急激に普及した。
ミニブログの大きな特徴はリアルタイム性。シンプルなサービスながら、チャットのように使う、To Doリストのように使うなど、さまざまな使い方のアイデアが生まれている。
ビジネス利用としては、例えばスポーツチームのファンコミュニティの場合、試合会場の中から、またはテレビ放映を見ながらファン同士が実況中継や選手への声援などを書き込むことが可能となるなど、従来のブログ・SNSにはない親和性をもったサービスが実現できている。
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■ URL
Eビジネス研究所
http://www.e-labo.net/
ファインアーク株式会社
http://www.finearc.jp/
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聞き手:木村 誠 1968年長野県生まれ。2000年6月より『Eビジネス研究所』としてITおよびネットビジネスに関する研究、業界支援活動をスタート。2003年4月『株式会社ユニバーサルステージ』設立。代表取締役として、ITコンサルティング、ネットビジネスの企画・立案、プロデュース全般を行う。2006年ネットビジネスのイベントとしては国内最大級1000人規模『JANES-Way』実施。2007年4月よりIT業界に特化した職業紹介『ITプレミアJOB通信』をスタートさせ好評を得る。ASPICアワード選考委員。デジタルハリウッド、トランスコスモス、マイクロソフトなど講演多数。
ライター:加藤 京子 |
2008/10/16 08:50
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