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VISAカード、ベリサインの仕掛け人が目をつけた新ビジネス
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これまで「Eビジネスマイスターに聞く!」では、Eビジネス研究所が開催する「Eビジネス研究会」のセミナーに講師として登壇される「Eビジネスマイスター」に対してインタビューを行ってきました。
今回からは、講師として登壇される方以外にも、IT業界の次世代を担うキーパーソンを「Eビジネスマイスター」と称し、Eビジネス研究所 代表理事の木村誠氏がさまざまな話を伺っていきます。
今回は、株式会社レペリオCOOの富和伝 松陰(ファデン・ショーイン)氏に話を伺います。
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Eビジネスマイスター:富和伝 松陰(ファデン・ショーイン)
株式会社レペリオ 取締役COO
株式会社レペリオ共同創業者兼取締役COO。上智大学卒業。日本語検定1級保持。日本滞在歴13年。オンラインマーケティングやインターネット技術全般に関する事業分野にて豊富な経験を持つ。米国の某オンラインマーケティングベンチャーの創業チームメンバーとして参加し、同社をオンラインリードジェネレーションビジネスのトップ企業に育てることに貢献する。セキュリティ、インターネット技術、ペイメントシステム、ダイレクトマーケティング・セリング等の分野において15年以上の経験を有す。
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―僕は人材エージェントとしてレペリオさんの採用活動もお手伝いしていますが、面接の時とは雰囲気が違いますね。もっと、気難しい人かと思いました。
富和伝氏
そうですね(笑)。面接の時は、話し方を変えています。面接では目的がありますから。今日は、堅苦しい話は、なしにしましょう。
―こうやっておしゃべりしていると、本当に日本語お上手ですよね。ショーインさんは日本語検定1級をお持ちだとか。
富和伝氏
ええ、上智大学に編入して、日本語をだいぶん勉強したんです。
―大学では、何を専攻してたんですか?
富和伝氏
最初にアクチュアリアル・サイエンス(保険数理)といわれるものです。保険会社のための統計学なんですが、あまり人気がありません(笑)。実は、もともと属していたアメリカの大学で途中でこの専門科目がなくなってしまって、そのまま大学に残って専攻を変えるか同じ専攻を違う大学に勉強しに行くか海外に勉強しに行くか、選択しなければならなくなって。それなら外国で勉強しましょう、日本にしましょう、と。上智大学でビジネスと経済の専攻にしました。
―そこで、日本を選んだのはどうして? もともと日本に興味があったのですか?
富和伝氏
私は出身がオハイオ州でアメリカの内陸部ですから、日本に興味のある人は少ないですね。西海岸だと日本との接触はもっと多いんですが。当時は、日米の貿易摩擦があって、ビジネスチャンスが広がるだろうと思ったことが大きかった。将来のキャリアと、文化の魅力の両方を考えて日本にしました。
―日本語が上達した秘訣は何かある?
富和伝氏
日本人のルームメイトのおかげです。卒業まで2年間、一緒に住んでいました。
―上智を卒業した後の就職先は?
富和伝氏
ビザインターナショナルアジアパシフィックといいまして、VISAカードを統括している会社です。当時は全然有名ではなかったので領収書を書いてくださいと言うと、VISAの代わりにPIZZAと書かれちゃったこともあって(笑)。
―配属は日本だった?
富和伝氏
アジアパシフィックの本社は、日本の帝国タワーにあったんです。入社した時は、日本にはエグゼクティブと秘書をあわせて12人しかいなかった。私は最初のヒラ社員(笑)。私は技術者にも向いていると言われて、データセンターに配属されました。その後、信用照会システムとかサポートシステムに携わりまして、その中でクレジットカードの端末を維持し、詐欺を防止するためのインフラとしてJASというプロジェクトの管理システムを、開発者を率いて作りました。この事業は今では、独立した会社になっています。今は日本中どこに行ってもクレジットカードが使えますけど、その発展に影響を与えることができたプロジェクトなので、かなり自慢できるものだと思っています。
―そうですね。それで、VISAには何年くらいいたのですか?
富和伝氏
6年半いました。大学院に行こうと思って手続きをしていましたが、JASの開発が終わるまで1年間延期したんです。そうしたらその頃インターネットが盛んになって、ここでスタートアップに加わればかなり大きくなるだろうと思ってベリサインに入社したんです。
※ベリサイン:インターネット上で最初に電子証明書サービスの提供を始めた米国のベンダー。本社はカリフォルニア州マウンテンビュー。Webサーバー、暗号メール・ユーザーなどに対する電子証明書をCA(認証局)として発行している。日本法人である日本ベリサインは1996年2月の設立で、97年3月に国内で最初の認証局を立ち上げた。
―大学院は、どうなっちゃったんですか?
富和伝氏
大学院に入るのはやめました。ベリサインのほうが面白いし自分に向いていると思ったから。給料が下がってもやる価値があると思ったんです。
―入社は何年ごろ?
富和伝氏
96年です。2000年まで、だいたい4年間くらいいました。最初は、アメリカから日本法人を育てる仕事をして、その後日本ベリサインに移りました。
―入った途端、会社が急成長したのでは?
富和伝氏
ベリサイン自体は伸びていたので、日本もこれから成長するというところだったんです。サービスのベーシックなところはアメリカで立ち上げ、転勤してからは技術やカスタマーサービスの部門を作りました。あとはそれらを新しい人に移して、マーケティングに専念したんです。インターネットセキュリティというのは、説明が難しいサービスです。VISAカードで「クレジットカードがほしい」というマーケットを作ってきたのと同じで、ニーズを喚起させることが面白いと感じました。
―ベリサインをやめた後は、何を?
富和伝氏
オンラインマーケティングのベンチャー企業に入りました。入社した当時は26人の会社でしたが、今は400人、売上も140億円以上に成長しています。この会社は上場していないので、静かに成長しているという感じですね。ここでの経験を通して、オンラインマーケティングを日本でやりたいと思うようになりました。
―それで、原さんと一緒にレペリオを創業されたんですか? 原さんとの出会いのきっかけは?
富和伝氏
実は、太平洋の上で出会ったんです! 飛行機の中で、たまたま隣に座ったのが原さんだったんですよ。
―ええ!? スゴイ偶然ですね。
富和伝氏
はい。そこでお互いの連絡先を交換して10年くらい付き合いがあったんです。当時、原さんがいらっしゃったシリコングラフィックス(SGI)はかなり伸びていました。ベリサインは、まだ知られてなかったんですけどね。
※原 邦雄氏:株式会社レペリオ 代表取締役。シリコンバレーで起業し、日米間のIT企業の戦略的提携業務においてはシリコンバレーでも屈指の存在となる。1995年、グラフィックス ワークステーションメーカーであるシリコングラフィックス(SGI)に入社。96年SGI米国に転籍し、グローバルの組織を統率。2000年にはコンサルティング会社、グローバル・アライアンス・パートナーズを創業した。Eビジネス研究会では2007年の「シリコンバレー特集」で講演している。http://www.e-labo.net/seminar84.html
―そんなお2人が目をつけたのが、「オンラインリードジェネレーション」というビジネスだったわけですね。どういう点に、魅力を感じたんですか?
富和伝氏
1つは、アメリカで成功したビジネスは2、3年後に日本に入ってくるという法則が今まであったからです。アメリカでこんなに成功しているのだから、自分たちでやりたいと思ったんです。もう1つは、広告業界を日本でよく見ると、ものすごいスピードでビジネスが生まれているようでいて、互いに衝突があるんですね。それで市場が停滞している。CPM、CPCと来て、広告モデル自体を広げていくような試みをしたいと。
※CPM、CPC:CPM (Cost Per Mille)とは、1,000インプレッション当たりの広告コスト。CPM課金の場合は表示もしくは配信されることによってコストが発生する。CPCとは、Cost per Clickの略で広告1クリックにかかるコストのことを指す。
―リードジェネレーションという言葉を初めて聞く人もいると思うので、簡単に説明してもらえますか?
富和伝氏
リードジェネレーション(Lead Generation)というのは、新規の見込客を獲得するためのマーケティング手法のことです。generationは「世代」という意味のジェネレーションではなくて、generate(生み出す、もたらす)という動詞から来ています。見込客をジェネレートする、つまりまったくニーズのなかった人に需要を喚起するということです。僕たちのような、オンラインでリードジェネレーションを専門に行う機関はオンラインジェネレーターと呼ばれ、クライアント企業に代わって見込客を収集し、集まった見込客(Lead)のデータを成功報酬で提供しています。
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2004年頃から本格的なサービスが始まったオンラインリードジェネレーションは、2006年度に対前年比80%という驚異的な市場拡大を遂げ、成長率では検索エンジン広告など既存の広告モデルを上回る有望なビジネスとなった。
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アメリカでは、2007年度実績においてもインターネット広告全体の売上増加率を上回るペースで、順調な成長を続けている。
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―個人情報保護法によって、顧客情報の収集には適正な安全保護処置が必要になりました。多くのクライアント企業が手順の確立やリスク管理に迷っているところですよね。ベリサイン出身のショーインさんの経験が、まさに生かせるんじゃないですか?
富和伝氏
ええ、今は名簿の目的外利用や転売が禁止されていますから、多くの会社が困ってしまっています。それぞれの商品ごとに、見込客を正しい方法で集めなければならないんです。個人情報を暗号化して受信するのはもちろん、不正登録の防止・排除も必要です。単にプラットフォームを用意するだけでなく、コントロールする技術やノウハウが求められるということです。
また一方で、迷惑メールに代表されるように、興味のない広告は迷惑であるという批判が増しています。本当にその商品に興味がある、優良な見込客を集めることが、結局は顧客、クライアント企業、オンラインジェネレーター3者にとってwin-win-winの関係を築くことができるモデルになると思うんです。
何のために個人情報を集めるのかを明確にすることは当然ですが、入力項目を適正にすることも、良質な見込客獲得につながります。例えば、興味のあるカテゴリをチェックさせるだけの登録フォームもよく見かけますが、フォームが簡単すぎるのはかえって問題です。お客さまの興味の度合いを測るため、商品・サービスに関する具体的な質問をフォームの中に入れるようお勧めしています。
―顧客を獲得して成功報酬を受け取るというと、アフィリエイトに似ているようにも思います。日本のアフィリエイト事業は、最近落ち込んでいるようなのですが。
富和伝氏
アフィリエイトは主に、アマゾンのようなショッピングサイトによって発展しました。これは、コモディティ商品を売っているサイトです。コモディティ商品を買おうとする顧客は、購入を決めるのが早いことが特徴です。多くの人が、この本、このDVDと決めて、広告を見ているからです。そのため、広告を載せるとすぐ顧客が獲得でき、コミッションが入ります。
それに対して、リードジェネレーションで扱う商品は付加価値型で、形が見えないサービスだったり、説明が必要なサービスです。一定数の見込客が集まるまでに、3カ月とか半年ほどかかることがありますし、その後、リアルの営業フェーズを経て購入や成約に至るのが一般的です。リードジェネレーションのオファーは、商品をその場で購入させるよりも資料やサンプルの請求、無料のDVD、セミナー、電話相談などをお勧めしています。
※コモディティ:大衆商品・一般商品を意味し、どの店舗で購入しても品質に差がないという特性をもつ。
―なるほど。そうすると資料請求ポータルに似ているのかな。それとは、どう性質が違うんですか?
富和伝氏
資料請求ポータルを訪れる顧客は、既にその商品・サービスを知っている人や探している人達です。商品名を知っているから検索して、そのサイトを訪問してくれる。オンラインジェネレーションの場合は、そういった人達とは別の経由で資料請求を集めることを目的として、今まで興味がなかったのに何かのきっかけで商品を知れば見込客になるだろうという人達の属性を分析し、ターゲットとしてプロモーションを行っていきます。
例えば、社会人向けの学校の見込客を集めるのであれば、転職や求人情報のサイトから誘導することを計画し、それに合ったランディングページを用意します。メディアプロパティは、提携サイトの中から探すこともあれば、新規に作ることもあります。
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オンラインリードジェネレーションのサービスには主に3つの特長がある。1つは、見込客の優良なリストを収集できるマーケティングノウハウ、2つ目に、不正登録の排除・システムのセキュリティー・個人情報の適正な収集・管理といった情報インフラの信頼性、そして3つ目が、リアルの営業フェーズと連動した成約顧客情報の分析から、その結果を見込客リストの収集条件に反映することが可能なシステムの構築・運用能力である。
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―そういえば、ビジネススクールのグロービスさんのプロモーションをされてるんですよね? 教育業界が主要顧客なんですか?
富和伝氏
もちろん、教育業界はリードジェネレーションと相性がいいですね。他にも、保険や不動産系のサービスに対してもリードジェネレーションが有効です。
―では最後に、VISAカードやベリサインを相次いでヒットさせてきたショーインさんから見て、今の仕事と共通すると思うことは何かありますか?
富和伝氏
モメンタム(勢い・方向性)が生まれれば、みんなが付いてくるということ。先入観を打破してマーケットを切り開く楽しさですね。VISAカードの時も、日本人はキャッシュの文化だから海外旅行では使われるかもしれないけど日本国内にはそれほど普及しないだろうと言われたんです。それでも、今はみんなクレジットカード使ってるでしょ?
それともう1つ。信用を築くことの大切さですね。顧客登録フォームには必ずレペリオの社名を表示しています。小さい会社だから、知られていない会社だからといって隠すのはよくありません。オンラインで安全に個人情報を扱うというサービスを行う以上、顧客や社会との信頼をキープすることを何よりも大切に考えています。
今回のキーワード:リードジェネレーション
リードジェネレーションとは、商品やサービスに対して興味を持ってはいるが、まだ購買に至っていない顧客に対して何らかのオファー(資料送付、無料サンプル・トライアル、セミナーやイベントへの招待、電話相談など)を与えることで対象商品やサービスにまず接触をしてもらうための広告・販促活動のこと。集まった顧客はリード(Lead=見込客)と呼ばれる。
見込客獲得の手法はリアルの営業フェーズにおいては既に研究が進んでいるが、インターネット上で行うオンラインリードジェネレーション(OLG =Online Lead Generation)が開発され始めたのは2000年頃からであるといわれている。ビジネスとして盛んに展開されるようになったのは2004年以降である。
アメリカでリードジェネレーター(リードジェネレーションを行う企業)として成功した例には、B to BではTech Target社、B to CではLendingTree社などがある。検索エンジン広告などから直接購買を促すことが難しい付加価値型商品のプロモーションに成果を上げているのが特徴。対象分野は教育、不動産、金融、ホームサービスなど、従来のインターネット広告領域の枠を超え、多岐にわたっている。
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■ URL
Eビジネス研究所
http://www.e-labo.net/
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木村 誠 1968年長野県生まれ。2000年6月より『Eビジネス研究所』としてITおよびネットビジネスに関する研究、業界支援活動をスタート。2003年4月『株式会社ユニバーサルステージ』設立。代表取締役として、ITコンサルティング、ネットビジネスの企画・立案、プロデュース全般を行う。2006年ネットビジネスのイベントとしては国内最大級1000人規模『JANES-Way』実施。2007年4月よりIT業界に特化した職業紹介『ITプレミアJOB通信』をスタートさせ好評を得る。ASPICアワード選考委員。デジタルハリウッド、トランスコスモス、マイクロソフトなど講演多数。 |
2008/06/20 17:39
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